ケイの読書日記

個人が書く書評

倉橋由美子 「大人のための残酷童話」

2016-01-26 13:45:24 | Weblog
 誰もが知っている童話やおとぎ話を、大人向けに少し残酷にちょっとエロチックにアレンジして、最後は教訓でしめている。
 ただ、私が不勉強なせいか、元々の童話や民話を知らないことがあって(26編中6編)そういう時は、面白さが半減しているような気がする。
 
 例えば「故郷」という話は、この「大人のための残酷童話」では、貧しさのため故郷を捨て、都会に出て一生懸命働き成功した男が、捨てた親・兄弟・妹はどうなったろうと気になって家に帰るが、彼らによって殺され金品を奪われそうになる話。
 驚くべきことに、家を出て行った息子であり兄弟だと分かりながら殺害しようとした。別に、家を出て行った事を怨んでいるわけではない。持っている金品を奪おうとして。
 これなんか、本当に救いのない話だが、元の話はどうなってるんだろう読んでみたいな、と思う。


 「魔法の豆の木」は、「ジャックと豆の木」が元話で、家を出て行ったジャックの母親が、人喰い鬼の女房になっており、母恋しさでジャックが母親のもとに行くと、彼女はジャックを絞め殺して人喰い鬼に食べさせる。
 これも、暗澹たる気持ちになるね。

 そうかといえば「一寸法師の恋」は、鬼を退治した一寸法師が、打ち出の小槌を使って大きくなり、立派な若者になってお姫様と結婚するが、背は大きくなるも肝心の所が一寸法師のままなので夫婦仲は悪くなり、お互い罵り合うという笑えるエロ話。


 全体的に、人肉喰いの話が多いように思う。西洋でも東洋でも日本でも、昔は飢饉というものが日常的にあった。
 牛や羊のような家畜を食べ、それから犬や猫などを食べ、それから死んだ人間を食べる。それでも足りなければ、殺して人間を食べる。
 この「大人のための残酷童話」の最後に載っている短編「人は何によって生きるのか」では、天使まで食べてしまう。何と罰当たりな!! 天使を鍋に入れ煮ても、天使の身体は崩れない。誰かが思いついて十字架を一緒に入れて煮ると、天使はようやく煮崩れて、おいしいスープになったそうだ。


 こう考えると『拒食症』という病気は、なんと人間離れした病気な事か! 食べ物がなければ、人を殺してまで食べるのが本能なのに、自分で食べるのを拒否するなんて。
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岸恵美子「ルポ ゴミ屋敷に棲む人々」

2016-01-21 11:29:52 | Weblog
 読んでいて本当に身につまされる。10年後の自分の姿が、このゴミ屋敷の住人とかぶっちゃうね。
 筆者の岸恵美子氏は、地域看護学・公衆衛生看護学の専門家。「ネグレクト」とは、一般的には、児童虐待の一種で、子供の養育放棄の事をいうけど、「セルフ・ネグレクト」は、自分で自分を放置することらしい。

 たとえば…部屋の中が散らかっている。掃除をしなくてはならないが、やる気がおきない。あるいは、身体の調子が悪くて出来ない。やがて部屋の中が物でいっぱいになり、次の部屋も物で埋め尽くされると、誰かに片づけを頼める状況でなくなる。近所の人や民生委員、親せき、子供や孫が訪ねてきても、家の中に入れない。
 もちろん、台所も物がいっぱいで、調理ができない。ゴミの山を登るように移動して、ペットボトルに水を汲み、缶詰やお菓子を食べている。トイレへの通路も物でふさがってしまったので、洗面器に用を足し、窓の外に捨てている。
 あまりの悪臭と害虫の多さに、近所でも問題になり、役所の福祉課や警察がやってきて、扉を開けると…。
 食べ物の腐った臭いやカビの臭いの中、いくつものゴミの山をかき分けると、その奥に、かすかに動く黒い人影が…。あわてて救急車を呼ぶが、ゴミ屋敷の住人は「嫌だ」と乗ることを拒否し、大モメにモメる。

 実際、救急車に乗ることを拒否するセルフ・ネグレクトの人たちは多いらしい。他人に助けを求めるのが苦手だからこそ、ここまでになってしまったんだろう。

 専門家である筆者が、様々な事例をあげて、それへの対策を書いているが…そんなに上手くいくのかなぁ。主に高齢者を対象にしているから、介護保険をつかったりして、良い方向に進ませるんだろう。


 ただね、ゴミ屋敷を片付ける時、住人にキチンと確認してから物を捨てること!!と書いてあるが、捨てる決断ができないからゴミ屋敷になるのであって、いちいち確認していたら、片付けなど出来ないよ。
 こういう時こそ、身内の出番! 子どもや配偶者が、ぽいぽい捨てていきましょう。ケンカになっても聞き流し捨てる! 私はダンナのゴミ部屋をそうしているし、今後もそうするつもり。
 
 しかし物を捨てていると「商品の値段が安いのは、本当に良い事か?」と疑問に思うね。値段が高かったら、買う物も少なく済み、大切に使う。だいたい、江戸時代にゴミ屋敷なんてあったんだろうか? ないよね?
コメント (4)
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水島広子「整理整頓 女子の人間関係」

2016-01-16 17:32:25 | Weblog
 この本、以前、新聞の書評欄に載っていたので、読みたいと思っていたのだ。偶然、図書館の書架で見つけ、借りる。とっても面白い!

 この本では、女性の嫌な部分を「女」として表記。その特徴を箇条書きにしている。

○自分より恵まれた女性に嫉妬し、その足を引っ張ろうとしたり、幸せを奪い取ろうとする。
○裏表がある。(中略)「それ、かわいいね」などと本人には言いつつ、裏では「ださいよね」などと言ったりする。
○男性の前で「かわいい女」「頼りない女」を演じる。
○他の女性を差し置いて、自分だけが好かれようとする。
○恋人ができると変身する。すべてが恋人優先になり、他の女友達には無礼としか思えない態度をとるようになる。
○すぐに群れたがる。「群れ」の中では均質を求め、異質なものを排除しようとする。
○自分は自分、他人は他人、という見方をすることが苦手。自分とは違う意見やライフスタイルを持つ相手を尊重できず「自分が否定された」とみなし、そういう人を敵ととらえる。 
○感情的に「敵」「味方」を決め、自分をちやほやしてくれる人には限りなく尽くす一方、自分の敵に対しては、とことん感情的に攻撃する。その感情的攻撃は(中略)主語は「私は」ではなく「普通は」「常識的には」など。
○陰口やうわさ話、つまり他人についてのネガティブな話が好き。
○ストレートに話さず、間接的であいまいな話し方をして「ねぇ、わかるでしょう」というような態度をとる。そして、分かってもらえないと機嫌を損ねる。
○「お母さんぶり」「お姉さんぶり」をする。(中略)悪気はなくても、意見の押し付けをしたり、決めつけをしたりする。


 アハハ、笑った、笑った。あまりにも自分に当てはまることが多くて、大笑いした。
 この本は、そういった女性の嫌な部分をどうやってスルーするか、自分から無くしていくか、の具体的な方法を書いてある指南書。
 でも、読み進めていくうちに、だんだん飽きてきた。そんな嫌な部分を多く持つ「女」から、心が美しい素敵な「女性」になったとして、そんなに素晴らしいことだろうか? 確かに、三面記事に載るような事件は減るだろうが、そんな素敵な「女性」ばかりになったら、文学も音楽も絵画も、なにもかもつまらなくなってしまうだろうね。
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碇卯人 「杉下右京の密室」

2016-01-12 17:24:55 | Weblog
 あの!!TV大人気シリーズ『相棒』のオリジナル小説。しかし相棒は全く登場せず、杉下右京だけがさっそうと現れ、超特急で事件を解決していく。
 相棒との掛け合いを期待して読むと、少しがっかりするかも。でも、鑑識課の米沢や、刑事部捜査一課の伊丹や芹沢も出てきます。

 第1話「大富豪の挑戦状」 第2話「壁」の2編を収録。
 「大富豪の挑戦状」のほうは、IT長者が引退し、沖縄の離島に立派な邸宅を建てる。そこの海中展望室でおこった密室殺人を、その邸宅に招待されていた右京が、速やかに解決。
 「壁」の方は、ビルの屋上に建てられた塔のようなクライミングジムの中で、腐乱死体が発見された。鍵がかかっていて密室だったので、最初は事故死として処理されかけたが、そこに右京が首を突っ込み…。

 2作品とも、ちゃんとした本格密室モノだけど、どうも物足りない。ドラマでも、そう思うが、こんなにストーリーもトリックもちゃんとしているのなら、もう少し細かい所をふくらませ、読み応えのある作品にしてもらいたい。
 ドラマでは、時間の制約があるから仕方がないにしても、オリジナル小説ならできるでしょう?

 うーん、どうしてこんなに物足りなく感じるんだろう。やはり、ワトスン役が登場しないから? それとも、杉下右京の私生活が、ほとんど書かれていないから?

 ただ、全くお話にならないようなトリックでも、妙に読者を納得させ、最後まで読者をひっぱって面白く読ませる作家さんもいるが、トリックもプロットも優れているのに、どうも感情移入できず、引き込まれて読めない作家さんもいる。これは後者か…。
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Keiの心の俳句

2016-01-09 09:54:31 | Weblog
みぃ太郎 お前は猫か 猫なのか?
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