ケイの読書日記

個人が書く書評

信田さよ子「アダルト・チルドレンという物語」

2010-01-29 16:57:58 | Weblog
 アダルト・チルドレン(AC)というのは狭義では、アルコール依存症の親を持つ家族に生まれて成長し大人になった人を意味するらしい。
 それを拡大して、アルコールだけでなくギャンブル依存や仕事依存の親もそこに含める、つまり機能不全家族の中で大きくなり生きづらさを感じている人、をACと呼ぶようになった。

 臨床心理士で原宿カウンセリングセンター所長の信田さんは、ACは主観でかまわないという。つまり自分はACだと思えばACなんだそうだ。

 しかし、そうなると全世界の人がすべてACになってしまわないか?
 だいたい、元が人間は不完全なもの。その不完全な人間が不完全な子どもを育てるんだから、不完全に育って当然。
 そうなると世界中の人が皆ACという事になり、ACは人間である証し。つまりカウンセリングの対象外…という事になると思う。


 『共依存』という言葉は『ドラえもん・のび太関係』と置き換えてもいいと思う。つまり、依存されたい人と依存したい人が強固に結びつきそこから抜け出せない。
 アルコール依存症の夫婦などに共依存という言葉はよく使われるが、一昔前は美談だった。様変わりしたものだ。
 しかし、そもそも不完全な人間が確立した個などを形成できるんだろうか?
 恋愛関係、友人関係、親子関係…まったく共依存的要素がない人間関係なんてありえないよ。
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山本貴代「晩嬢(バンジョー)という生き方」

2010-01-24 22:02:54 | Weblog
 これも新聞の書評欄で紹介されていたので読んでみた。
 晩嬢というのは、晩婚・晩産の30代以上の女性の事。もちろん筆者の造語。その晩嬢たちの生態を理解し、経済を活性化させようというのがこの本の趣旨。

 読み始めてきわめて強い違和感を感じた。景気よすぎるのだ。もちろん首都圏のハイクラスな30代以上独身女性をアンケートの対象としているから、可処分所得が多いのは当然としても、あまりにも現実とかけ離れているのではないかと。
 
 そしてハッと気付き出版年月日を見ると…2008年7月20日初版発行。つまりリーマンショックの前なのだ。どうしてそんな古い本が最近の新聞書評欄に取り上げられていたのか不思議だが。

 だから派遣切りも、失業率5.5%も、就職内定率最低更新も、まだ起こってない時のお話なのだ。

 どれだけ景気がいい話が載っているか書き写してみると「私の豪華出費」という章で、証券会社勤務・37歳女性がこんな事を書いている。
 「ボーナスのうち100万円を自分を変えるためにつぎ込んだ」とある。
 え?! なに? つまり1回のボーナスが100万円以上あったってこと?夏冬あわせてじゃなくて? うっそー!! シンジラレナイ!!

 こういった腹立たしい、そして羨ましい記述があちこちにある。

 もともと筆者の山本貴代さんは、博報堂生活総合研究所上席研究員。つまり裕福な人たちにもっとお金を使わせようと調査するのが仕事。
 貧乏人は眼中にない、というカンジですねぇ。




















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橋本治「巡礼」

2010-01-19 15:09:10 | Weblog
 この本を読もうと思ったのは、新聞の書評で評判が良かった事もあるが、なんといっても「ゴミ屋敷」を取り上げていたから。
 そう、TVのワイドショーでよくやっているアレ。だからゴミを溜め込む人間の心理が考察してあるのかと期待したのだ。

 我が家も住居部分はともかく、会社部分(とくに工場)がゴミ屋敷とならないように必死。ダンナが「買うの大好き・捨てるの大嫌い」という人なので、物がたまる一方なのだ。
 ところが、我が家以上にダンナのお姉さんの家がすごい。(ちなみにダンナのお兄さんの家はキチンと暮らしている)

 庭の部分は人目があるせいか、比較的キレイなのだが家の中がすごいらしい。何しろ私は現在17歳の三男が生まれて見せに行った時以来、家の中に入っていない。(車で10分位の所なのに)弟であるダンナも同様。

 6年ほど前、娘(私にとっては義理の姪)が里帰り出産をしようとしたが、家の中が片付いていないからと断られた。この2~3年は、娘が孫を連れ正月や盆に実家に帰ろうとしても家の中に入れてくれず、別の親戚のところで過ごしている。

 もうこうなると自力で片付けるのは無理だと思う。モノで溢れている室内を見て気分が落ち込む→さらに片付ける気が失せる→さらにモノが溜まる。という悪循環で「落ち込みスパイラル」に陥っている。

 だからお金はかかるけど業者さんに頼んでスッキリさせて、サッパリとした気分になって新生活を送ったら?と勧めるんだが、嫌がられる。家の中に家族以外の人を入れたくないんだろう。


 この小説では、最後に実の弟がやってきて、兄を説得してゴミ屋敷に収集車を呼び1週間がかりでゴミを撤去する。(その費用400万円!!)
 しかし、兄弟が説教するぐらいでゴミは片付けないよ! 作者は甘い!
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京極夏彦「塗仏の宴・宴の支度」

2010-01-14 13:59:08 | Weblog
 昭和28年春、小説家・関口のもとに奇妙な取材依頼が来た。伊豆山中の集落が住人ごと忽然と消え失せたのだという。

 こういった魅惑的な謎から始まったこの小説は、なんとこの「宴の支度」編は前編で「宴の始末」という完結編があるのだそうだ。なぁんだ、早く言ってよ。

 お正月用にと、分厚い長編を図書館で借りたが、お休みが短かったし忙しかった事もあり全然読めず、暑さ35mmを恨んだ。一体どうしてこんな長くする必要があるのだ、と。

 内容は面白いが、私にとって作者の知識のひけらかしとしか思えない部分も多い。
 例えば「しょうけら」という章では、刑事の木場に京極堂が「庚申」という徹夜をすると長生きするという奇妙な習慣の説明をする。それがメチャクチャ長い。
 中国の仏教や道教や神様まではいいとして、インドの神様までが出てきたのには驚いた。それらが日本の土着信仰と結びついて、もうゴチャゴチャ。
 日本という国には、人間より神様の方が多いんじゃないかと思う。

 興味がある人なら喜んで読むだろうけど、私ではね。読み終えるのにかなり苦労した。

 とにかく、今度は「宴の始末」を読まねばなりますまい。でも、それまでにドッサリ出てきた固有名詞を忘れそう。
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唯川恵「彼女の嫌いな彼女」

2010-01-09 13:28:35 | Weblog
 これは確か(私は見なかったけど)テレビドラマになったと記憶している。新人OLと古参OLの男を巡るバトルがユーモラスに書かれている。

 唯川恵って読みやすいのよね。花井愛子のように、あきれちゃうほどクダラナイ訳ではなく、それなりの深みを持っている。
 唯川さんは、自分の小説の端々に人生の箴言をちりばめている。

 例えば…「若さというものにどれほどの価値があるというのだろう。肌の張りとかサラサラな髪とか、そんなものは誰もが持っていて、誰もが無くしていくものだ」

 しかし、こんな名言を書ける人がどうして主人公の相手を、いわゆる三高男(懐かしい言葉!)にばかり設定するんだろうか?

 そりゃ、誰でも条件の良い相手がいいに決まっているが、男も相手を選ぶ訳じゃない? 私だったら勝てない勝負はしないなぁ。
 結婚後のことを考えれば、あまりモテる相手というのも考えものです。
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