ケイの読書日記

個人が書く書評

小栗虫太郎「黒死館殺人事件」

2006-01-30 15:44:12 | Weblog
大好きな本・読んだ本


 このブログにトラックバックしてくれた、たかさんという方が教えてくれた本。

 昭和10年の作品。
 私がいつも行く図書館には無かったので、他の図書館から取り寄せてもらいました。
 1977年のハヤカワポケットミステリなのに、なんと旧漢字、旧仮名遣い。信じられない!!
 出版社としては、雰囲気を壊さないように出版当時の文体そのままにしたかもしれないが、大迷惑!!
 本当に読むのに苦戦しました。

 読めない旧漢字は前後関係で類推し、どうしても読めないものは漢和辞典を引き、それもめんどくさくなったので、意味がわかればいいと読み飛ばし、1週間で読書完了。


 内容は「グリーン家殺人事件」を下敷きに[Yの悲劇」「僧正殺人事件」のエッセンスを加味し、ディクスン・カーの味付けをしたという感じ。


 とにかく舞台設定がスゴイ!!
 日本が江戸時代、鎖国する前に、キリシタン大名たちがヨーロッパに使節団を送った。その中の一人と、メディチ家の女性との間に不義の子が生まれ、その子が日本に渡り、脈々と血が受け継がれる。 
 明治になると、その子孫が壮麗な城館を建設。そこは通称『黒死館』と呼ばれ、そのなかで怪奇な動機不明の変死事件が次々起こり……。


 作者の趣味なんでしょうか。中世・近世のキリスト教史、美術、音楽、絵画、文学の知識が、いたるところに織り込まれています。
 これって、みんな本当のこと?それとも作者の創作でしょうか?

 もし、史実だとすると、作者小栗虫太郎は、すんごい読書家ということになります。


 オカルティックな雰囲気が大好き、という方にはおススメの1冊。
 もちろん、現代仮名遣い、現行の漢字になおした本もあるそうです。
コメント (15)
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クリスティ「死者のあやまち」

2006-01-25 14:54:30 | Weblog
大好きな本・読んだ本


 田舎のお屋敷の園遊会で、余興に犯人探しゲームが催される。そこで死体役をつとめる少女が、本当に絞殺されて……。


 ああ、クリスティに戻ってきたなあ、と感じさせる作品。


 クリスティのミステリを読んでいていつも疑問に思うのは、「こんなに簡単に別人になりすますことが、本当にできるんだろうか?」ということ。
 一庶民として生活しているならともかく、ある程度社会的地位のある人の場合、そんなこと可能なんでしょうか?


 でも日本でも『節約生活のススメ』の山崎えり子さんが、他人の戸籍をお金で買って、別人になりすましていた事件が発覚しました。


 ああ、私もこの『節約生活のススメ』を買って読みました。たいした事書いてなかったけど「仕事の関係でドイツで生活し、節約生活に目覚め…」とか「夫が交通事故で生涯車椅子の身になったので節約しなければならなくなり…」とかいう意味の事が書かれてあったので、なんてケナゲな良い人なんだろう、と感心していたら、それがすべて嘘だったとは……。

 出版社って経歴調べないんだね。
コメント (2)
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北村薫「六の宮の姫君」

2006-01-19 23:20:41 | Weblog
大好きな本・読んだ本


 芥川龍之介の「六の宮の姫君」の創作背景を、国文科の女子大生が推理しています。
 最初の1/3ぐらいまでは(北村先生には申し訳ないが)つまらなくてリタイアしようと思っていたのですが、それ以降、ぐんぐん面白くなって最後の方の1/3は一気に読めました。


 やはり芥川だけだと退屈しますが、芥川ー菊池寛を軸にした交友関係が描かれると、私のように文学史に疎いものでも、十分読み応えあります。


志賀直哉、佐藤春夫 有島武郎 萩原朔太郎 谷崎潤一郎 正宗白鳥 久米正雄…


 そうそうたるビックネームがどんどん登場し、共に語り議論し反駁し仲直りしている様子がいきいきと描写されています。


 特に、芥川と菊池の関係は切ない。文学的情熱に燃え、共に手を取り合い前進し、一時は兄弟以上に親しくしていたのに、めざす方向の違いから次第に疎遠になり、芥川は自死します。


 でも、誰が悪いのでもない。そうなる運命だったんだ。


 主人公の女子大生はもうじき就職だというのに、いまだに男っけなし。 
 いまどきこんな素直な子いないよ、と思いながらも、ラテン化している日本の女の中で、柴犬のようにキリリとしているこの女子大生に、好感を持つようになりました。
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江國香織「いくつもの週末」

2006-01-14 11:15:38 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 ziziさんイチオシの作品。これは江國香織さんの、もうじき結婚2年目という秋からもうじき3年目という秋までの1年間のエッセイだそうです。


 いやぁ、日本の女はラテン化しています。というかフランス女化している。

「会いたかった?!」なんて、妻が会社から帰った夫に訊くだろうか?(いくら結婚1年目だからといって)……うーん、訊く人もあるかも……。

 私は「愛してる?!」なんて言いたくもないし、言われたくも無い。結婚にそういった情熱を持ち込みたくない。疲れるから。

 私という人間は、恋愛には不向きですが、結婚には向いていますね。


 またまた、文句ばかり書いてしまいましたが、こういったカップルを、まぶしく眺め、あこがれる気持ちも十分あります。
 江國さんもそろそろ結婚10年目でしょうが、結婚生活を取り扱った最新エッセイってあるのかしら?
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北村薫「空飛ぶ馬」

2006-01-09 16:10:43 | Weblog
大好きな本・読んだ本


 私の敬愛する岸本葉子さんが、北村薫氏の、それもこの落語家円紫と女子大生のシリーズのファンなので、ぜひとも読んでみなければ、とずーっと思っていたのです。

 何の犯罪もおこらない、日常のちょっとした不思議な出来事を、論理的に解き明かすというミステリ連作で、新鮮でした。
 でも、通常の殺人事件がでてくると思って読み始めた人は、がっかりするかもしれない。


 もうすぐ20歳というこの女子大生は、あまりにもいい娘さん。いまどきこんな娘いないって。
 父親が、こういった娘に育って欲しいなあ、と望む理想の女の子像そのもの。
 今現在、女子大生をやっている人は、こそばゆくって読めないかも。


 優美さんが、北村薫の文体が読みにくいと書いていらしたけど、私には文体というより、北村薫の教養がありすぎて、いろんな引用があり、それが引っかかり読みにくい。

 そこら辺は『僧正殺人事件』のヴァン・ダインと通じるものがあります。でも、ヴァン・ダインのは西洋の美術や芸術だから、単なる雰囲気を出す飾りと考えて、読み飛ばしていけますが、北村薫はなまじっか日本の作家だから、引っかかっちゃうのよね。


 時々「ね、北村センセ、センセの教養があるのはよーく分かったから、次に進んで下さいよ」と言いたくなります。
コメント (3)
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