ケイの読書日記

個人が書く書評

屋敷康蔵 「住宅営業マン ペコペコ日記」 三五館シンシャ

2022-10-23 16:20:13 | その他
 先回の「出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記」がとても面白かったので、同じシリーズの「住宅営業マン ペコペコ日記」を読んでみる。
 昔から、私は思っていた。不動産業でも、賃貸アパートの部屋を案内するぐらいの仕事だったら、私でもできるかもしれないが、何千万何億という土地や建物を売る人って、どういう人だろう? どういうタイプの人が、そんなスゴイ事をやれるんだろうって。

 この本の筆者の屋敷さんは、大手消費者金融に就職し、すごく羽振りの良かった時期もあったらしいが、グレーゾーン金利撤廃後の業界縮小をうけて退職。35歳の時、ローコスト住宅メーカーでブラック企業として有名なタマゴホームに就職。(木村拓哉のCMで話題になったタ〇ホームのことだろう)10年間勤務する。その時、経験した悲喜劇を本書に綴っている。私としては、大手消費者金融勤務時代の体験も読んでみたいが。

 いやいや、このタ〇ホームに10年間在籍していたってことは、それなりの能力があったってことだろう。同僚は次々に辞めていくらしい。最短で止めた人は、朝、店長から「今日から一緒に働くことになった〇〇さんです」と挨拶があり、本人も「〇〇です。よろしくお願いします」と挨拶したのに、よっぽど合わないと思ったのか「お昼ご飯に行ってきます」と出て行ったまま帰らず、そのまま退職した人がいたらしい。つまり在籍半日。
 それに店長になっても、辞める人は結構いるみたい。そうだよね。店長個人の営業ノルマと営業所の営業ノルマが両方あり、しかも営業所員が仕事のキツさに逃げ出すと、その尻ぬぐいは店長に行く。
 お客さんから「前の担当者は、食器棚も食洗器もサービスでつけるって約束しましたよ。ちゃんと約束守ってください」なんてゴネられること、しょっちゅうなんだろうね。
 クレームの電話は会社にかかってくるんじゃなくて、担当の社員のスマホにかかってくるわけだから、気の休まる時間がない。相手はお客様だから、非常識な時間帯にかかって来ても、電話に出ないという選択肢はない。あああ、本当に大変。

 結局、屋敷さんは10年勤務した時点でギブアップ、会社を退職する。その結果、自身のマイホームローンを払えなくなり、家を手放すことになる。家族はバラバラになり、屋敷さんにとって大変つらい時期だったが、新天地に引っ越し、住宅関係の仕事で再起し、家族を呼び寄せた。めでたしめでたし。
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宮崎伸治「出版翻訳家なんて なるんじゃなかった日記」三五館シンシャ 

2022-10-11 15:54:00 | その他
 三五館シンシャのこの日記シリーズ、人気があるみたいで、新聞によく広告が載っている。出版翻訳家のディープな世界をのぞいてみたいと、この本を読んだが…なかなか大変ですね。まあ、津村記久子の小説にあるように「この世にたやすい仕事はない」んだから、どこもかしこも大変だろうけど、出版不況でなおさら大変なんだろう。

 私のように英語が出来ない人間は、英語が出来たら、日常会話以上の翻訳家や通訳ができるレベルの英語が出来たら、すごく高給が約束された人生が待っていると思いがちだが、そう上手くはいかないみたい。
 以前、国際電話がKDDIの時代、仕事で数回、電話通訳を頼んだことがあった。その時、通訳してくれた女性に対し「どのくらいお給料もらってるんだろう?高いよね」と勝手に憧れていたものだが、その後TVのルポで、彼女たちの労働条件があまり良くない、かなりキツイという事を知った。
 欧米とは時差があるので、ほとんど夜中の勤務で、しかも時間給。もちろん普通のアルバイトよりは高いけど、専門性が高い人に支払うにしては少ないと思った。ほとんど女性。男性は海外留学から戻ってきたら、こういうアルバイトではなく、商社に正社員として入社するんだろうか?

 この本の著者の宮崎さんも、大学卒業後、大学事務員や英会話講師や企業の産業翻訳スタッフとして働き、お金をため、29歳でイギリスの大学院に入学し、一生錆びない英語力を身に着けようとする。苦労人なのだ。親の金で留学させてもらっている訳じゃないんだ。だから、2年間の留学時代、生活費と学費ですごくお金がかかったと思う。
 そんなにお金をかけて出版翻訳家になったのに、収入はさほど多くない。失礼ながら、一番年収が多い時が1100万円。その年だけ。あとは下がる一方。なんといっても収入が不安定なのが困る。
 もっと困るのが、出版社から依頼され翻訳したのに、出版社側の都合で出版中止になる事。出版業界では、契約書を取り交わさないのが慣例らしい。びっくり!! 中止になっても、それなりの金銭保証があればいいけど、翻訳を頼んでいないなんて言われたら、どうしようもない。裁判するしかないけど、お金と時間がかかるもんね。
 ただ、中小の出版社も経営は厳しいだろう。無い袖は振れない、かも。
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