ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ 「寄る年波には平泳ぎ」

2016-12-09 15:04:19 | Weblog
 2013年出版の比較的最近のエッセイ。
 群ようこのエッセイや小説が昔から好きだった。無印シリーズなど、読んではケタケタ笑っていたが、エッセイの方が断然面白かったな。エッセイには、群さんのお母さんや弟さんがよく登場し、私はまるで親戚みたいに、家庭の内情を把握していた。
 お母さんのキャラが強烈で、群さんが売れっ子小説家になって、ドンと印税が入るようになると、パッパと買い物して、その請求書をすべて群さんにまわした。このエッセイの中に「必需品ではなく、贅沢のために、彼女が家を含めて2億円近い金を遣ったのは間違いない」と書いてある。
 ちなみに、その豪邸には、お母さんと弟さんが暮らし、群さんは家の合鍵ももらってないそうだ。

 なんて親だ!! いくら今、売れっ子作家だったとしても、この先、何の保証もない仕事。結婚してないので、夫や子供に頼る訳にはいかない。だからせめて、お金だけは貯めておきなさいね、と娘に諭すのが母親だろうに。憤慨する。

 でもね、昔のエッセイの中では、収入の不安定な画家の夫と離婚し、群さんと弟さんの二人の子どもを育て、仕事は定年まで勤めあげた。洋裁や編み物が大好きで、器用に子供たちの服を作って着せ、動物も大好きで、小鳥や猫を何匹も飼い、植物の世話をするのも好きだった。立派な日本の母だったのだ。
 それがどうして、買い物依存症みたいになるのかなあ?
 お母さんは脳梗塞で倒れ、認知症の症状も出てきたので、お金は弟さんが管理し、お母さんは施設でお世話になっているそうだが「私がいない間に、私のお金を探し出して使い込んでいるに違いない」と疑っているそうだ。
 ああ、いやだいやだ。

 弟さんも弟さんなんだよなぁ。子供の頃は群さんとすごく仲が良く「おねえちゃん、おねえちゃん」と群さんの後をついてきた。一流大学を出て一流企業に勤め、収入は多いはずなのに、お姉さんの稼ぎをあてにする。弟さんも独身なので、給料まるっと自分で使えるのにね。

 結局、家族の中に一人、突出して収入が多い人がいると、そうなっちゃうのかなぁ。お母さんはデパートで、30分間に500万円つかったことがあるそうだ。
 デパートの店員さんに「まあ、奥様、お似合いです」「もちろん、一生モノでございますよ」「やはり、このぐらいの物をお召しにならないと」なんてセールストークに乗せられ、湯水のように娘のお金を遣っちゃうんだろうね。楽しいと思う。消費するって本当に楽しい。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 香山リカ 「世の中の意見が... | トップ | 伊坂幸太郎 「死神の精度」 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (コウイチ)
2016-12-11 21:17:08
そうそう物盗られ妄想ありますよね。それで真に受けた身内が騒いで泥沼の争いに発展するというのを見ました……。
でも、地域包括ケアで在宅介護が推進されるこれからの時代、妄想ではなく、本当に盗られる被害が多くなるのでしょうね
返信する
コウイチさんへ (kei)
2016-12-12 10:24:22
 実家の母は、「泥棒が夜中に入って来て、煮物を食べていく」と騒ぎました。
 近所の人とか、交番にまで行って、被害を訴えました。どう考えても、自分が食べて忘れてしまってるのにね。
 ほとほと困りましたよ。

 今は、睡眠薬を弱いのにして、症状はおさまってます。
返信する

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事