本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

教育勅語と武士道講話

2017-04-21 08:56:49 | Weblog
 森友学園系列の塚本幼稚園の園児たちは教育勅語を唱和する。その様子をテレビで観て鼻白んだものだ。
 
 「教育勅語」をキーワードに話を転ずる。
 五味康祐に『一刀斎は背番号6』という小説がある。
 一刀流の開祖伊藤景久の第17世である青年がホームランを打ちまくるという他愛のない話だ。その中にこんな記述がある。

 「一刀斎が稀有のペースで本塁打を打ちつづけた頃、巨人選手の間に、「一刀斎は毎朝、教育勅語を奉読する」という噂が立った。小学児童に「修身」を必修科目とするか否かで、兎角の議論が識者の間に交わされていた折だから(中略)大きな社会問題をなげた」
 
 この小説は昭和33年の作のようだが、この頃は戦争の反省がまだ色濃く、児童に復古調の「修身」を教えるべき否か論争があって、教育勅語を唱えるなんぞ問題だった。
 こんにちではその反省が雲散霧消して、首相や防衛大臣が喜ぶ復古調に迎合するウヨク的教育の兆しが出てきたということか。

 さて、小説の続きだが、一刀斎は教育勅語を奉読しているわけではなかった。一刀流相伝の者として山岡鉄舟の『武士道講話』を読んでいたのだが、それが教育勅語の文案に似ていたとある。それで巨人選手は教育勅語と勘違いしたということ。それにしても、当時の選手の面々は、教育勅語をしっかり叩き込まれた世代ですか。

 教育勅語を起草した井上毅はその『武士道講話』を聴講していたそうだから確かな話なのでしょう。とはいえ、小生は『武士道講話』を読んでいません。