山と道・野の花のこと

揺れずに咲く花がどこにあるだろうか
この世のどんなに美しい花も揺れながら咲くのだ
<ト・ジョンファン>

五里霧中・坂の上の高原牧場@美ヶ原 日本百名山№28

2013-10-22 | 28美ヶ原(秋)
上信越自動車道
上田菅平インターから
天気予報どおり
雨は降っていないのですが
空は低い雲にさえぎられ
どの山も山頂を
仰ぎ見ることはできません。
カーナビの示す方向も
雲が山頂を覆い隠していました。
井出牧場を左折すると
九十九折の上り坂になり
次第にガスに包まれ
距離にして10kmくらい上り続けます。

美ヶ原高原美術館が見える辺りで
ようやく
ガスの中にも明るさが出て
気持ちも前向きに変わりました。
今日は
車が上りのほとんどを
肩代わりしてくれました。
登山口というより

出発点は
山本小屋ふるさと館

標高1924m
行く先は
王ケ頭
標高2034m
標高差110mは
今までの日本百名山の中で
最も少ないものです。

ガイドブックでは
南西の三城牧場からのルートで
標高差650mになっていましたが
このガスたっぷりの天気では
あまり違いはないでしょう。
牧場の道を
向こうから6人ぐらいのグループが
やってきました。

地名が引き寄せる魅力で
若い人や観光客のような人たちが
多く訪れる観光地ですが
この日は雲のせいか
落ち着いた雰囲気の牧場でした。
ここに来られる皆さんは
きちんとあいさつをして
すれ違います。
話し声がないと、すれ違う直前まで
人の気配がわかりません。

まっすぐ進むと最初の目的地
美しの塔が霧の中に見え始めます。


塔の裏には
尾崎喜八さんの詩があります。
登りついて不意にひらけた眼前の風景に
しばらくは世界の天井が抜けたかと思う
やがて一歩を踏みこんで岩にまたがりながら
この高さにおけるこの広がりの把握になおもくるしむ
無制限な、おおどかな、荒っぽくて、新鮮な
この風景の情緒はただ身にしみるように本原的で
尋常の尺度にはまるで桁が外れている
今日
雲の間から不意をついて
見えるものは
快晴のとき見えると言う
日本百名山41座よりも
心に残る風景でした。
進むとともに
正面には
西洋の城に付き物の尖塔のような
電波塔を従え
牧場の丘の上に立つ城
王ケ塔ホテルが姿を現しました。


自然のものとは思えないほど
雲の演出がみごとです。

右には
遠く
上下の雲にはさまれて
北アルプスの山々が見えて

左手に
雲海を従えた八ヶ岳と蓼科山です。
 
頭上にも雲があるので
この色を失った海は
本当の海との違和感がありません。
日光がないので
山は青く
切り絵のように
その形を印象づけていました。
つづく


コメントを投稿