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春の新刊 -『決断のとき』『新・生産性立国論』『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

2018-03-21 | こんな本を読んでいます
休日なので恒例の新刊紹介です。
今回は雇用とエネルギー関連の本が目立ちます。

虚飾に塗れ出任せばかりの安倍が今まさに「自爆」して
小泉元首相との「器」の差が一層はっきりしてきたわけですが
それが象徴的に示されているのはエネルギー政策です。

小泉元首相が「トモダチ作戦」で日本のために尽くしてくれた米兵を見舞い、
涙したエピソードは今やすっかり有名になりましたが、
そこまで実際に行動した日本の政治家(「元」を含め)は他に誰もいなかったとか。
すっかりヒラメになって選挙ばかり気にしている自民党議員は猛省すべきであろう。

『決断のとき――トモダチ作戦と涙の基金』(小泉純一郎/常井健一,集英社)


 → 福島原発事故では既に何人も亡くなっている、
   原子力利権勢力の欺瞞と反倫理は明白である。
   もうそこまで断言しても良いであろう。


『デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論』(東洋経済新報社)


 → 日本の低生産性は質の低い経営者と就労抑制する女性が原因と喝破。
   しかし高齢化による高齢者三経費の累増は中世のペスト禍とは比較にならず、
   もっと経済的負担が大きいという点を完全に見落としており、
   政策提言としても北欧より劣っているのが残念。


『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子,東洋経済新報社)


 → 当ウェブログが書籍化を推奨した一冊、
   AIのパターン認識能力は既に過半の中高生を超えており
   シンギュラリティは起きないが「AIで格差拡大」はもはや不可避。

   但し、マニュアル的業務の多い低賃金職種と読解力の関連性は実際かなり薄く、
   著者は労働市場の現状をよく理解していないものと思われる。
   (アンダークラス支援に効果的なのは負の所得税のような再分配であり、教育ではない)


『ルポ 地域再生 なぜヨーロッパのまちは元気なのか?』(志子田徹,イースト・プレス)


 → 地道な取材に基づいた好著でお薦めしたい。
   特にスウェーデンのバイオマス利用(熱利用かコージェネ)は合理的、
   大量の熱を捨てしかも輸入燃料という二重に愚かな日本のバイオマス発電は最悪。


『アマゾンが描く2022年の世界 すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』(田中道昭,PHP研究所)


 → やや冗長だが最新情勢をよく整理している、
   「アマゾン一強」の弊害も婉曲に書いており予見的でもある。


『メルケルと右傾化するドイツ』(三好範英,光文社)


 → 無思慮に大量の難民を受け入れたためドイツ社会に災厄を背負わせたメルケル、
   当書の著者の見方に同意する必要はないが、最新報告として価値がある。


『人口減少と鉄道』(石井幸孝,朝日新聞出版)


 → 鉄道事業の収益は人口密度に完全に比例、
   内需企業は少子高齢化の直撃を受けることが分かる。
   (駅立地を利用した不動産事業も恐らく同じである筈)


『日本百名宿』(柏井壽,光文社)


 → 最後にこちらも。国内の旅好きには必携の一冊と言えるが、
   収録数は2倍に増やして価格帯で分けることと、
   人によって判断の振幅がある「尖った」宿の収録があると良かった。

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