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『週刊ダイヤモンド』1月28日号-「米中は75%の確率で覇権戦争に至る」、〝トゥキュディデスの罠〟か

2017-01-27 | 『週刊ダイヤモンド』より
今週の『週刊ダイヤモンド』の地政学特集はかなり良かった。
今後、メディアが「地政学特集」を組む際のデファクトスタンダードになろう。
(勿論、あくまでも国内でのデファクトであるのだが)

ジオポリティクスは日本国内で生まれた学問ではないので、
海外の理論としてまず正確に理解し(だから半可通の日本人は避けるべき)、
各理論や概念の生まれた世界背景を押さえるとともに
具体的な事例で検証するという知的作業が必要不可欠である。

このダイヤモンドの特集は、古典的な地政学理論を紹介するとともに
現代世界における各国の視点を対比し、リスク要因を浮かび上がらせている。

「トゥキュディデスの罠」からは米中の衝突が
(特集では「戦争」だが、「衝突」が正しいと思う)
75%の確率で起きるという結論が導き出されている。

但し、第二次世界大戦後は覇権争いが起きても戦争の「回避」が増えている。
各国間の経済的関係が深まった(つまりグローバル化)が原因と思われるが、
トゥキュディデスの罠も決して未来を予言するものではないことには留意したい。
実際、今の中国は低成長化による諸問題への対処に悪戦苦闘しており、
対外的に事を構える余裕があるようにはとても見えない。

この特集でシミュレーションしているような日中間の軍事衝突がもし起きたら、
人民解放軍の飽和攻撃で初戦は甚大な打撃を受けるのは間違いない。
小規模の限定衝突なら兵器と人員の質に優る日本の優位、短期の大規模衝突なら人民解放軍の優位、
時間が経って米軍が本格的に動き出したら日米の勝利であるのは確実であるので、
簡単に日本の優位と決めつけるのは間違った結論であろう。

『週刊ダイヤモンド』2017年 1/28号 (劇変世界を解く 新地政学)


メイン特集はエネルギー分野だけは凡庸だが他はかなり良い。
特に、「中東三国志」の捉え方は的確と思う。

ロシア国家・国民性の歴史的分析はかなり良いが、
ロシアは軍事面以外ではもはや大国ではないので
実力を過大評価しているような印象である。

また、当ウェブログが注目しているトッドの主張については
54頁で近著の内容を元に綺麗に整理しているのが良い。

但し、トッドはユーロについて今のところ予言を外しているので
「ドイツ帝国」は明らかな過大評価と考えた方が正しく、
ユーロが失われフランとマルクに戻ったら大幅通貨変動と経済混乱は必至だから
ユーロを維持するためだけに欧州各国は協力し合う可能性が極めて高い。
(ユーロのもたらした為替の安定性は死活的な威力を持っており、ユーロ圏はもう引き返せない)

    ◇     ◇     ◇     ◇

『週刊エコノミスト』の「徴税強化」特集は想定内の内容だが良かった。

資産逃避が続いているそうだが、別に日本にとっては出て行って貰った方が望ましい。
25頁を見れば分かるように、質の悪い富裕層は相変わらず経済成長できないとか
財政再建できないとか散々に陳腐な捨て台詞を繰り返しているが、
その大義名分の裏には利己的な守銭奴の本性が透けて見えている。

OECDは寧ろ、格差が経済成長を阻害するととのレポートを公表しているし、
ロシアやメキシコの大金持ちが母国の経済成長に本当に貢献しているか、
よくよく考えてみれば良かろう。
アメリカにしろ、今は重税のスウェーデンに成長率で敗北している始末だ。

他罰的な貧困層と税制批判ばかりの富裕層は精神的によく似ており、
(日本で稼ぎカネを受け取っていながら文句を言う点で酷似している)
シンガポールでも香港でもどこへでも出て行って貰って構わない。
税負担が軽くなる分、日本で消費して貰えばいいだけの話である。

日本の低成長と財政悪化は人口要因と高齢層バラ撒きのためであり、税制など関係ない。
(事実、高齢者三経費が激増するとともに生産性がガクンと下がって上昇しなくなった)
被害妄想の強い富裕層のメンタリティは、僻み根性で凝り固まった中流層の利己主義とも
鏡に映したようにそっくりであり何ら変わるところはないのだ。

『週刊エコノミスト』2017年01月31日号


「「シズム論」は所詮、リフレ派の最後のあがきでしかない」と先週書いたが、
想定内の内容だった。アメリカでは成長率が低下し金融政策の限界が見える中で
財政出動との合わせ技が考えられているようだが、これは既に日本で失敗している。

安倍政権が行っている程度の低い「アベノミクス」こそシムズ論の「走り」である。
見事に失敗して吃驚するような低成長・実質賃金低迷に陥っている日本経済を見れば、
シムズ論がただの思い付きに過ぎないのは明らかである。

同時に、スウェーデン経済にパフォーマンスで完全に劣ってきた
アメリカ経済の斜陽と識者の無力が明確になってきたと言えよう。

    ◇     ◇     ◇     ◇

『週刊東洋経済』の「マイホームが「負」動産になる」は良い特集だった。
「市区町村別 空き家率ランキング」は保存版だろうし、
首都圏でも空き家の実態がかなり深刻であることが分かる。

「マンション建て替え」の大変さもこの特集で理解できるだろう。
当ウェブログは前々からタワマンのリスクの高さを指摘してきたが、
この特集の「超高層マンションは廃墟化する」はまさに予想通りだった。

建て替えできるかどうかすら分からないタワマンは、そもそも歴史が浅過ぎる。
想定外の事態が起こる可能性も考慮しておかなければならない。

『週刊東洋経済』2017年1/28号 (マイホームが「負」動産になる 持ち家が危ない)


記事「「働き方」どころじゃない 繰り返される組合潰し」は良かった。
ただ、組合を潰す企業に社会的制裁が加えられない限り事態は変わらない。
ブラック企業アワードだけでなく、例えば悪質事例の調査報道を行う、
不買運動を展開して悪質な企業や経営層に打撃を与えるなど「行動」が必要である。

    ◇     ◇     ◇     ◇

次回も東洋経済に注目、原発とともに轟沈しかかっている東芝特集である。

▽ まさにOBの証言通り、「原子力部門が優遇されすぎた」のが元凶であろう

『週刊東洋経済』2017年1/28号 (東芝解体 沈没する19万人企業)


▽ ダイヤモンドは先週の東洋経済特集より価格に拘ってきめ細かくしたような感じ?

『週刊ダイヤモンド』2017年 2/4号 (上げ下げマンション大調査)


▽ 「廃炉は8兆円で済まない」と皆が思っていることを代弁したエコノミスト特集

『週刊エコノミスト』2017年02月07日号

河野太郎+泉田裕彦という絶妙な人選によるインタビューも見逃せない。
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