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ノーベル賞受賞者が政治介入に利用されるリスク - 激しい「行政仕分け」批判を歓迎する人々

2010-10-13 | いとすぎから見るこの社会-全般
かつて日本海海戦に完全勝利し世界から賞賛された東郷平八郎元帥は、
条約派と艦隊派の争いに介入して影響力を及ぼし、
「晩節を汚した」との批判を浴びています。

今回、日本人のノーベル賞ダブル受賞の喜ばしい報道を聞くにつけ、
ノーベル賞受賞者の「Togonization(東郷平八郎化)」のリスクを
感じずにはいられません。

ノーベル賞の輝かしい栄光と、急膨張する受賞者の発言力。
政府の予算配分に不満を持つ国内の自然科学研究者にとって、
垂涎の的となる強力な武器です。

あらゆるコネクションを用いて予算を増やすために
ノーベル賞受賞者を利用しようと試みるでしょう。


▽ 東郷元帥の政治介入についてはこちらを。名著です。





『海軍と日本』(池田清,中央公論新社)


▽ こちらにも同様の話が出ています。





『井上成美』(阿川弘之,新潮社)


「2位じゃだめなのか」蓮舫氏発言を痛烈批判 ノーベル化学賞の鈴木氏(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/science/science/101008/scn1010082354006-n1.htm

”ノーベル化学賞に輝いた鈴木章・北海道大名誉教授(80)は8日、産経新聞の取材
 に応じ、「日本の科学技術力は非常にレベルが高く、今後も維持していかねばならな
 い」と強調した。昨年11月に政府の事業仕分けで注目された蓮舫行政刷新担当相の
 「2位じゃだめなんでしょうか」との発言については、「科学や技術を全く知らない
 人の言葉だ」
とばっさり切り捨てた。
 受賞理由となった「パラジウム触媒でのクロスカップリング技術」は医薬や液晶など
 幅広い分野で実用化されている。それだけに鈴木さんは「日本が生き残るためには付
 加価値の高いものを作り、世界に使ってもらうしかない」
と、科学技術の重要性を指
 摘した。
 昨年の事業仕分けで理化学研究所の次世代スーパーコンピューターの予算が削られた
 ことについては「科学や技術の研究はお金がかかる。研究者自身の努力や知識も大切
 だが、必要なお金は政府がアレンジしなければならない。(スーパー)コンピュータ
 ーなどの分野では絶対に必要だ」と政府の積極的な投資に対する理解を求めた。
 特に、蓮舫発言については「研究は1番でないといけない。“2位ではどうか”など
 というのは愚問。このようなことを言う人は科学や技術を全く知らない人だ」と厳し
 く批判。「科学や技術を阻害するような要因を政治家が作るのは絶対にだめで、日本
 の首を絞めることになる。1番になろうとしてもなかなかなれないということを、政
 治家の人たちも理解してほしい」と話した。
 一方、年間の自然科学系論文数が日本の約1.5倍に達するなど科学技術面でも躍進
 する中国については「人口が日本の約10倍なら研究者も多い。国の総生産もそうだ
 が、絶対的な量で抜かれるのは当然で、問題は質だ。中国人にも能力の高い人はいる
 が、そのような研究者が日本の10倍もいるわけではない」と指摘。「もっと心配す
 べきは日本の質を高めること。それなのに2番目で良いなどというのは論外だ」と重
 ねて強調した。”

 → 私も日本の科学技術力は高いと思いますが、
   政府が言うなりに資金を出すべきとは思えません。

   尊敬すべき研究実績をお持ちであることと、
   見識が正しいかどうかは全く別の問題です。

   日本の自然科学研究界もさまざまな問題を抱えています。
   中でもこれから問題になりそうなのは、
   「政府が資金を出して当然」という意識の強さと
   自力で資金調達しようとする意識の弱さです。


▽ 尚、この本が現在売れています。技術力だけでは足りないのです。





『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由』(妹尾堅一郎)



根岸・鈴木氏、特許取得せず…栄誉の道開く一因(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101007-OYT1T00571.htm

”今年のノーベル化学賞に決まった根岸英一・米パデュー大学特別教授(75)と鈴木
 章・北海道大学名誉教授(80)は、パデュー大の故ハーバート・ブラウン博士の下
 で学んだ同窓生だが、2人とも、受賞対象となった技術について特許を取得しなかっ
 たという点でも共通している。
 経済的なメリットは逃したかもしれないが、特許を取らなかったことで技術は世界へ
 広く普及し、研究者最高の栄誉へと道を開く一因にもなった。
 根岸氏は6日、受賞者発表会場のストックホルムからの電話インタビューで、クロス
 カップリングについては特許を取得しなかったと明かした。根岸氏は「特許を取得し
 なければ、我々の成果を誰でも気軽に使えるからと考え、半ば意識的にした」と述べ
 た。”

 → 現在の日本のひどい財政を見てみれば、
   政府がふんだんな予算を提供できないのは明らかです。

   かつては特許を取得しないのは美談だったでしょうが、
   厖大な累積債務を抱える現下の日本においては寧ろ、
   進んで特許取得して研究予算に資すべきではないでしょうか。

   僅か20年ほどで巨額の基金を確保するに至った
   アメリカの大学の努力と手法も学ぶべきです。


ノーベル化学賞2氏 鈴木章氏、根岸英一氏 次世代へ激励(産経新聞)
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20101007127.html

”日本人として2年ぶりのノーベル化学賞受賞が決まった北海道大名誉教授の鈴木章氏
 (80)と米パデュー大特別教授の根岸英一氏(75)は7日、改めて受賞の喜びを
 語った。「(祝福の)メールを読んでいて眠れなかった」「じわじわと現実味が染み
 込んできている」。2人は技術立国・日本を支える次世代の若者たちへの激励も忘れ
 なかった。
 〔中略〕
 「頭脳流出組」の先駆けとして、米国に活躍の場を求めた根岸氏。喜びにまじって、
 祖国日本への思いがところどころに顔をのぞかせた。
 会見の冒頭、「私は日本の(悪名高い)受験地獄の支持者だ」。理由は、高度な研究
 になればなるほど、「基本が大事になるから」。それをたたきこんでくれたのが日本
 の教育だったというのだ。
 だが、厳しい視線も向けている。日本を飛び出すことになったきっかけは、フルブラ
 イト留学制度を利用した米ペンシルベニア大への留学だったが、「いざ博士号を取得
 して日本に帰ってみると、日本には私を受け入れる余地はまったくなかった」と、日
 本の高等教育の閉鎖性を批判した

 「日本はもっとノーベル賞をとっていい」
 そう考えているという根岸氏は、日本の若者の「科学離れ」にも強い危機感を抱いて
 いる。最近、日本からの優秀な留学生をパデュー大でみかけることがめっきり少なく
 なったという。
 「日本はすごく居心地がいい社会なんでしょうけれど、若者よ、海外に出よ、と言い
 たい。たとえ海外で成功しなくとも、一定期間、日本を外側からみるという体験は何
 にもまして重要なはず」と、奮起を促した。〔以下略〕”

日本の自然科学研究界のもうひとつの問題です。
最近は改善されているかもしれませんが閉鎖性は屢々指摘されます。

また、本当に「優秀な留学生が少なくなった」かどうか
検証しなければならないでしょう。

調べてみると往々にして意外な理由が見つかるものです。
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