きすのべっこう寿司である。
父の郷里が三重県伊勢市である。
長くなります。
今回、瀬戸内に行って
先に着いていた長男がシロギスがよく釣れると言う。
家の前が小さな湾になっていて
秋のなんかの加減でキスが入って来ているようだ。
前からキスはよく釣れるが
では今度こそと「きすのべっこう寿司」に挑戦してみた次第。
子供の頃、夏休みの家族で父の郷里に帰るわけだが
人が集まる時に、振る舞う料理のなかに
このべっこう寿司があって、当地では寿司は付けず
「べっこう、べっこう」と言っていた。
まず、キスを2枚に開いて甘めに味付けした醤油につける
いわゆる「漬け」にする。
ちょうどよく漬けになると、きすの白身が半透明のべっ甲色になって美しい。
それを父の家ではホーローのバットに酢飯を敷いて
その上にべっ甲色になったキスを並べてゆく。
記憶ではその後、若干押しをして押し寿司のようになっていた気もする。
それをお肉やホットケーキを切るステーキナイフで
自分の適量切り分けて食べる。
親戚中の子供が集まってこれをするのだが
適量どころか取りたい放題なのであって
それでも無くなることが無いぐらい作ってもらった。
きすの他に穴子をフレークにしたような同様の押し寿司
きす同様にシャコが敷いてあって切り分けた後に
甘ダレをハケで塗って食べる押し寿司、もあった。
全てホーローバットで出てくるのだが
それはどこの家でもそうなのかは分からない。
今回、それを作るにあたって
参考になる資料は無いかと長男が検索したところ
まさにピンポイントで伊勢市村松町の郷土料理であるとの文献が。
父は村松町出身である。本当にそうなのか?
素朴なものだから取り上げられらないだけで
違う地方でもあるものかも知れない。
ただネット上にはそれ以外に資料もないようで
もし、伊勢地方のきすのべっこう寿司について調べる人がいたら
このブログにあたってしまうかも知れない。
役には立たないと思います。すみません。
さて、それだけの物を作るためのシロギスの数を
揃えなければいけないが、釣りには潮位の加減もあり
小さな入江の中の魚が釣れる時間で丸一日と半日かけて
60匹のシロギスを釣り上げた。
これを私と息子と妻と義母との共同作業によって開きにし
皮も剥ぎ、ネタが出来上がった。
漬け用のタレは妻が作った。
味のイメージは口で伝えるしか無かったが
なんと100%記憶通りのものを作ってくれた。
「みりんと酒を温めてアルコール飛ばして、醤油と合わせただけよ」と。
ホーローのバットは無く、アルミのバットで作ったが
味に変わりは無い。
伊勢の半農半漁の漁村の味は
瀬戸内の父母にも好評で
長男は「今まで食ったものの中で一番美味いかも」
との感想であった。
かくして、
瀬戸内でも「きすのべっこう寿司」やってみよう作戦は
大成功に終わったのです。