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流出雑記 

2015/9/3

2015年09月03日 | Weblog

裏切りの筋を横切って見切られた瀕死の無花果を横目に、すれ違いざまにかすめ取った野良猫の錆柄をまとって迷彩に、さらに路地裏に入り込めば、無造作に干された洗濯物、安洗剤の残り香と水を吸わないタオルやくたびれた下着が室外機のぬるい風になびいていた。隙間のあいた玄関先に腰掛ける老人と一瞬目が合う。マンホールの隙間から油気のある汚水のにおいがあがってくる。吐かれたガムの跡が模様をつくるひび割れたコンクリートの上、決壊真近の曇り空の下。残りわずかな蝉の鳴き声。未練という名のスナック。急にししゃもの焼けるにおい。唇に雨粒が当たる。こぬか雨と名付ければどこかしら情緒を帯びる。駅で拾ったビニール傘の骨が折れていたことは開いてからわかった。同時に自分の指のマニキュアの中指の先端が剥がれているのことにも気付いた。この頃は迷子になるのも難しい。誰にも告げず写真にも納めず二度と来ることのない路地。用のない路地。