連日稽古。火曜だけ稽古場がないので休みになるけれど仕事。
稽古のあと家に帰って夕食を済ませたら、もうコタツから出るのが億劫で、どうしても入りたい風呂にだけは入るけれどその他のことをする余力がない。それで日記も滞っている。
昨日は稽古後ケットちゃんのウィークリーの近くにある吉田神社の節分祭に行った。日本の祭り、夜店体験は楽しいんじゃないかと思った。しかしものすごい人混みで、出店で焼きそばなど少し食べたけれどどっちかというと疲れたかも知れない。もち入りの大判焼きは不発だった様子。ケットちゃんは携帯で射的や金魚すくいの写真を撮ったり、ピカチュウの飴細工を見ていた。ピカチュウ4hundredと言ったら買わなかった。
吉田神社の節分祭、今年は3日の火炉祭では火を焚かないそうで、その理由が燃やした後の灰の処理方法で市ともめたことによるらしい。例年トラックの荷台に灰を積んでゴミ処理場まで運んでいたのを灰が舞うという理由で市が灰をゴミ袋に詰めて出すように要請した。けれど、神社のほうではそのための人手と予算を確保できないということで今年は辞めになったらしい。どちらかの努力でどうにかなりそうなのにどうにもならなかったんだろうか。そのニュースは先月、ちょうどタイから帰国した日の早朝にツイッターで知った。同じタイムライン上にほんやら堂が火事で全焼したというニュースを目にした。燃えるべきところに火は届かず、燃えてはならないところが燃えてしまっていると思った。
普段ガスコンロで使う火をこれが家を丸ごと焼き尽くす力のあるものとして見ていない。炒めたり煮たりするための道具のように扱っている。自力で火種は起こせないのに。制御できない火を見ること、改めて火のことを思うのに裸火を見るのは重要なのではないかと思う。でもそれは火事でないほうがいい。だから。
今日の仕事は大阪八尾。去年から通っている絵描きのアトリエ。広い庭には大きなザクロの木が植わっていて、秋には行く度にザクロをもらった。最初は物珍しさでうれしかったけれど、ザクロは剥くのが大変なことがわかってきて後半は遠慮したい気持ちになるくらいだった。他にも柚やレモンや小さいみかん。実っているものをいつも、持って帰るか?と聞いてくれる。ありがたく頂戴しては持ち帰って砂糖や塩に漬け瓶に詰めて並べている。画家の奥さんもずっと絵を描いてきた人。東京藝大だったからうまい。たぶん画家よりうまい。クロッキー帳を見せてもらったら、裸婦クロッキーとこのうちにいる小さい白犬のクロッキーがとてもよい線で残されていた。画家の家とアトリエの真横の建物が解体中で、窓際に肘をかけてポーズをしているあいだ、外の解体作業を眺めている。掘削機の働きぶり、太い鉄の芯が入ったコンクリート片を少しずつ崩して鉄だけまとめて集めている。埃がたたないように時々散水する人がいる。3時前に工事の音がぴたっと止む。休憩なのだろう。
去年韓国の女性アーティストの油圧ヴァイブレーターという作品を見た。掘削機に恋をしたという話しから展開するパフォーマンス。その時はなんでそんなことが作品のモチベーションになるに至ったのか不可思議と思っていたけれど、2時間ばかり掘削機を眺めて、鉄筋を砕く力を持ちながらどこか不器用そうに動き、人の操作の手つきが垣間見えながら時に動物のようで時にただただ機械的。こいつはなかなか魅力的であることに気付いた。
八尾、河内山本のあたりは造園業が多いようで、歩いていると民家の間にきちんと剪定された立派な松が、異様な密度で植わっていたりする。なるほど、庭の注文があってから松を育てていたのでは間に合わないからこうしてストックしているのだ。でもその仮植えの状態が風景になってしまっているのがおもしろい。木の一本は格好よく剪定されデザインされているのに、植え方は並べているだけだから密度は過剰で、意図と都合の奇妙なバランスの風景が出来上がっている。
今日は2月3日、帰りに寄ったスーパーは店頭で鰯を焼き、太巻きを山積みにしているけれど、5日後に家を一週間ばかりあける我が家には使うべき食材が待っているので全部スルー。節分とはまったく関わりのないトムカーガイというスープ、ひき肉とくずし豆腐のキムチ煮の夕食。
トムカーガイはレモンの酸味が効いた鶏とココナッツミルクのスープ。水にレモングラスやショウガ、とうがらしで出汁を引くように香りと辛味を引く。ほんとはショウガじゃなくてカーというショウガに似たものと、パイマクルーの葉を使うけれどないので代用省略。そこに玉ねぎと鶏肉ときのこを入れて煮えたらナンプラー、ココナッツミルクを入れてレモンを搾る。最後にバランスをみて砂糖、塩。タイでは食べないスパイスもスープのなかにそのまま浮いている。誤ってトムヤムクンに浮いている激辛のとうがらしを食べてしまったことがある。そんな罠にかからないためと食べるとき避けるのがめんどうなので、うちで作る時は香りを取るための材料は出汁パックに入れて別個に取り出せるようにしている。
その後豚肉の塊を煮る。明後日ケットちゃんたちをうちに招待する。ケットちゃんは日本に来たことのある友達から角煮を勧められたらしい。しっかりした味のおかずと米を食べるのが好きそうだから角煮は好みの味覚だろう。卵も一緒に煮る。角煮は2日くらい置いた方がおいしい。あとは粕汁、かぼちゃとブロッコリーの味噌マヨチーズ焼き、トマトと玉ねぎのポン酢マリネ、という和風とも言い難い日本のご家庭の味献立で。