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流出雑記 

小麦

2012年05月28日 | Weblog

ここ最近うちの近所に迷い込んできた三毛がいた。人慣れしていてご飯をあげるとごろんごろん甘えてくる。
かわいいのだがうちには小梅がいるし、以前小豆という猫が同居していたときも、ケンカこそしないが最後まで相入れず、並んで昼寝したりする姿を見ることはなかった。

情が移ったら最後だとあまり構いすぎないようにしていたが、そんなことはやはり無駄な抵抗だった。
町内を縄張りにしている黒猫に常に追いまわされているので、黒の鈴の音が聞こえるとすぐに逃げ出す。外でご飯をあげていると、一口食べては器から離れて逃げの態勢で飲み込み、また一口食べては離れ、と鈴の音に怯えながら食べる姿を見ているといたたまれなくなった。ああもうこれは巡り合わせだとうちに入れる決心をしてしまった。

簡単に抱き上げることができる子なのでサッとケージに入れて家に連れ帰った。
一晩二階の部屋に隔離。さすがにびっくりしたらしくどこから出るのか不思議になるほど大音量でニャー!と叫んだ。しばらくしてそれが落ち着き、慣れてくるとご飯を食べてころころ甘えるようになった。
翌日シャンプーした。おそらくはじめてのシャンプーだったが、夫に爪を立てたり噛んだりせず洗わせてくれた。野良のあいだの垢を落とすとお腹の毛がきれいに白くなった。三毛。ザ和猫という感じ。
それから病院でみてもらう。幸いエイズも白血病も陰性だった。手術の跡はもう確認できないけれど、左耳がカットされているので、避妊済みと見て間違いないということだった。年齢は年寄りでもないし、若くもなし。少し擦りむいていた鼻に軟膏を塗られていた。

名前は迷わず小麦に決まる。次にもしも猫が来るとしたら名前候補のひとつで、小麦がぴったりだった。
2匹には徐々に慣れていってもらうしかない。攻撃はしないが、近付くとフーとかシャーと言って怒る。
家に新入り猫を入れるとき、特に先住猫に愛情を示さないと嫉妬するそうで、夫は一階の居間で小梅を猫可愛がりしながら寝る。好きな缶詰、またたび、ネズなどをご機嫌うかがいに差し上げ、小梅が見ていないところで小麦を撫でる。
二階で小麦が鳴くので私は寝室で小麦と寝る。しかし小麦は寂しい以外の要求があるのか、夜中突然鳴き出す。お腹が空いているのかとごはんをあげると平らげては鳴くを数回繰り返し、さすがにこれ以上あげるのはと思うところでやめた。
しーっと言ったり寝よう寝ようとなだめたりして3時頃までねばった末に小麦も私も疲れて寝た。翌日お隣さんにお詫びしたが、気にならないですと言ってくださった。
猫は本来夜行性なので野良の頃は昼間ひと気のないところで眠り、夜な夜な行動していたのだろう。ごはんをあげていたのもいつも夕方以降で昼は姿を見なかった。この夜鳴きは初日以降は徐々に落ち着いてきている。猫にしてみればいきなり捕まってわけがわからないし不安だったに違いない。

小麦はなぜどこから迷い込んできたのか。猫砂をトイレと認識していないので半野良状態で誰かが餌付けをしていて、その人が高齢で亡くなったとか引っ越したとかでごはんをもらえなくなり、この近辺にやってきた、とか。考えても聞いても答えはわからない。
とにかくうちのメンバーは一名増えた。

うちに来てまだ一週間経たないが、2匹はもう一緒の部屋にいれるようになっている。

 

 


2012/5/23

2012年05月24日 | Weblog

昨日、金環日食を見逃したことを間違って金冠日食と書いて気付いていないところにも、日食ムーブメントについて行けてなかったことが露になっている。

最近また食パンをよく焼くようになった。先月福井に旅行に行ったとき、喫茶店でトーストを食べたらおいしかったのが引き金で。しかし焼くと書いていいのか、私がするのは計量だけで捏ねるのも焼くのもホームベーカリーが勝手にやってくれている。粉の種類、水を牛乳に変えてみるなど、配合のさじ加減をしているだけである。今日は練乳を加えてみたが、劇的な変化は感じられず、普通においしい食パンになった。

午後から母校で彫刻頭像の仕事、夕方から彫刻のアトリエでまた頭像。後の方は今日がポーズ最終回だった。このアトリエの周囲には植物がたくさんあり、草花のにおいが濃い。すぐ傍に小川が流れているので蚊も多い。今日今年初めての蚊があらわれた。さっそく去年の残りの蚊取り線香が焚かれた。モデル台の下に隙間がありそこに置いてくださり、数時間燻された。夜は長袖でないと肌寒いが蚊取り線香を嗅ぎ続けて煙が体に充満すると気分は強制的に夏にシフトする。頭のなかがそうめんと祇園祭と浴衣だった。そうめんはきゅうりとミョウガを刻んで漬けた汁で食べるのが我が家の定番。去年は宵山に行かなかったので、今年は浴衣で焼きもろこししたいと思う。

最後のポーズを終え餞別に伏見の三源庵というところのカステラをいただいた。文明堂のなんてスカスカだと思うくらいおいしいらしい。

帰りに豆大福を買った。頭像の仕事は椅子に座っているので体の疲労は少ないが、目の奥、頭の芯が疲れる感じがある。お腹が空いていたのと疲労と固定ポーズの仕事を終えたひとり打上げ気分で食べたヤマザキの豆大福80円が出町ふたばを超えることだってある。

帰宅。

最近うちの近所にあらわれるようになった三毛に夫は毎晩ごはんをあげに行く。そのうちねんごろな関係になったらしい。その子のにおいのついた服で家に入ると小梅は怒る。小梅は花瓶にさしていたつんつんした麦を食んで喉に刺さってしまったようで、けほけほ苦しそうに泡を吐き出している。しばらく苦しそうで心配しながら見ていた。ゼリー状になっているフードで流れないかとあげてみるとよく食べた。朝まだ様子がおかしかったら病院に行く。

 

 

 


2012/5/22

2012年05月22日 | Weblog

身の回りの細々したこと書かなくてもいいようなこと。

学生の頃、恩師にどんな女になりたいのと聞かれ、困った末に虫と答えたが、戸川純と言えばよかったかも知れないと今思う。

少し前、およばれにあずかりご馳走になったお家で、フムスというひよこ豆をペーストにしてオリーブ油と練りごま、スパイスなどをまぜたイスラエルの料理を食べて以来、真似して作るようになった。パンやクラッカーにつけて食べる。ひよこ豆は輸入食品店で買うと安いが、買い置き忘れるとその辺のスーパーにあまりないので、どこにでもある大豆の水煮で試しに作ったらむしろこっちの方がおいしいと感じた。馴染みのある豆の味がしっくりくるのか。ミキサーにかけるとき水分が少なすぎると回らないので水を足すが、足しすぎると今度は水っぽくなる。そうなったときにはきなこを足すと調整が利く。フムスのレシピではレモン汁を入れるようだが、大豆の場合はいらないように思う。そのかわり醤油を少し垂らす。こうして我が家でフムスと呼ばれるものは原型からやや離れたものになり定着した。頻繁に作るので、大豆も豆から茹でた方が安いかもしれないと思って、300g圧力鍋で一気に茹でて冷凍した。

暑くなると熟れたバナナをつぶして凍らせておく。バナナジュースの為。

昨夜はビーフンを炒めた。ニラともやしとエビ。ウェイパーとナンプラーで味をつけた。ビーフンが予想より増えすぎて具が少なくみえる。これは食べきれないといいながらも完食した。

人参をすりおろしてシナモンをしっかりきかせたパウンドケーキを焼いた。たぶん人参が多すぎた。しっとりを通り越して羊羹に近いがそれなりにおいしい。

今夜は仕事で出るので、牛すじとこんにゃくを炊いておく。玉ねぎを入れるのがポイント。

金冠日食を思いっきり見逃す。いつなのかよく知らないでいつかなと思っていたら、ある朝起きて携帯の中で賑わう日食ツイートで既に終わったことを知る。もっと関心を持ちそうなものなのにあまりそうならなかった。写真をみてああこんなだったのかと満足してしまう。月食のときも人に言われるまでぼんやりしていた。でもカシオペアを見るのは好き。ふと見て見つかるのがいい。

買ってきた時からうどん粉病と黒星病を発症していたディオレサンスというばらの苗。こんな状態でも売るのかと思いながらディオレサンスの二鉢あったうち、丈夫そうなほうを選んだ。何度も園芸店に通ってそのどちらかを買うと決めていた。慎重なのは一鉢5000円近い買い物だからである。うちの近辺の他のところでは探したけどなかなかディオレサンスを置いていない。買ってきてとにかく病葉を除き薬を噴射。最初3日ほど1日置きにそうしてあとは様子を見ていた。その後しばらく苗は沈黙。他の植物の動きが盛んなぶん沈黙が重く感じる。いろんな家の軒先で咲きはじめているばらとすれ違う度に、我が家のはじめてのばらはちゃんと育ち花を咲かせることができるのか心配になったが、ようやく芽が動き始め、新しい健康な葉が開いた。ばらに病気はつきものらしく完治するのは難しいらしい。強い品種弱い品種あるようだが、定期的に薬を使って予防しないといけない。買わなかった方ディオレサンスがまだあるか園芸店を見に行ったら、悪化したうどん粉にまみれてちゃんと咲かないだろうにつぼみをつけている姿が痛々しかった。

期間限定羽衣ジャスミン香り付き表札。

トケイソウもつぼみをつけた。冬を越せなかったかなと思っていたベルベーヌは生き延びて小さくてもちゃんとレモンのにおいのする葉を育て、数年前に適当に挿し木して一度消えた段菊が突然あらわれたり、か細い伊豆スミレがたくさん種をもっていたり、玄関先でおもしろいことがたくさん起こっている。日食は見逃したが、花が咲くのは見逃さない。

 


2012年05月17日 | Weblog

少し前の話になるが、ゴールデンウィーク中、家族総出で実家を片付けた。

私や妹の使っていた学習机やら二段ベッド、もう使わなくなったけれど取り急ぎ処分する必要のない家具及び押入れの中のその他諸々はそれぞれが実家を出たあと取り残されたままになっていた。片付けるとなると大仕事になるので、家を売るとか建て替えるとか必然的にやらねばならない日が来るまで保留となっていたのだが、その日は案外はやく訪れた。

このほど真ん中の妹が結婚することになり、実家に住むと言い出したのだ。

嫁の父と同居でも構わないのかと彼に聞くと、早くに父親を亡くしている彼は父がいる生活をしてみたいと言ってくれた。父も気ままなひとり暮らしをしつつも時々一緒に食事をしたときは、久々にちゃんとした飯食うた感じするわ、などと言ったりしていた。妹が一緒に暮らすようになることで一番ほっとしているのは母。母が実家にいた頃は家事を一切しない父であった。母が長く専業主婦だったのでする必要がなかったとも言える。諸事情あって自力でやるしかなくなってからはどうにか衣食住を整える能力を身につけていた。野菜の値段も知らない人だったのに先日一緒に食事をしたとき、私が台所でブロッコリーを切っていると、茎のところは食べられるんかと聞くので、下の方の硬そうなとこはよけて短冊みたいに切ったら食べられるよと言ったら、こないだ捨ててしもたと悔しがっていた。ブロッコリーの原型すら知らないまま生きていく可能性のあった父が自ら料理しようと挑戦していたなど娘としては感動に値する出来事であった。

家はきちんと住んで手入れしないと痛み荒んでいく。祖母が毎朝掃除していた家、手入れされた庭を知っていれば尚更、荒廃していく家を思うとずっと気がかりではあった。それは母も同じくそう思っていたが、今はそれぞれ自分の家と生活があり、そこまでは手が回らないままに月日は流れていた。だからきちんと住まれ、また家に風が通ることはうれしいことで、妹が帰ってくるということを快諾した父にとってもそのようだった。普段掃除にまめでない父も率先して片付け、自らフローリングにワックス掛けまでしている。仕事柄妹の彼は手際が良い。ちゃんとカッターナイフを携帯して、特に段ボールをかさ張らないよう片付ける畳み方が秀逸。妹はしばらく姿が見えないと思ったら、庭の池にボーフラがいっぱいわいていたのを柄杓ですくってやっつけていたそうで、要するにサボっていた。母はカーテンを洗って干したり、皆の気がつかないようなところの面倒な片付けをしていた。

小学校から大学生の途中まで使っていた学習机の引き出しに残され手紙、写真、プリクラがひしめく手帳、思ったことを書き留めていた直視に耐えないノート類。目をそらしつつ目を通す。デミアンの読書感想文、鬱々としながら描いた大学受験前のどうしようもない絵と絵コンテ、創作ノート。大学の頃使っていた携帯が出てきた。充電してみるとまだ生きていて、メールもそのまま残っていたのには驚いた。 やりとりを見ているとそのとき何を思ったかこれも意外な程鮮明に思い出される。どうしても置いておきたいものだけ最小限にまとめて、あとはすべて処分。これで不慮の事故の際にも心置きなく旅立てよう。1tトラック2台分、京都市のゴミ袋数十袋の山。どうしてもこんなにものを溜め込んだのかと思う。でも過去には宝物だったものも、お気に入りの洋服もあった。これからはできるだけ身軽に生きたい。ものが無くなった部屋にはからからと声がよく反響していた。

いちばん下の妹は今回の片付けに参加できなかったが、晩に帰ってきて皆におごると寿司をとってくれた。10人前とったという。妹に寿司をおごるまえにおごられてしまうことになる。妹は立派な大人だった。夫も仕事終わりでやってきて10人前の寿司を7人で平らげた。

祖母の桐箪笥を整理していたとき、ハギレに練習で刺した日本刺繍が出てきた。なんとなく捨て辛くて持ち帰ったが、妹が結納で振り袖を着ると聞き、ふと日本刺繍を髪飾りにすることを思いついた。

最近布で出来た髪飾りをよく見るので、それを店で観察し材料を推測。手芸店で接着芯とフェルトとパッチン留め、手芸用ボンドなどを買ってきた。刺繍部分を切り取り裏に接着芯を貼り、フェルトに穴をあけパッチン留めを差し込み貼り合わせるとそれらしくできた。写真をとって妹に送ると気に入ってくれたので結納に間に合うよう手渡した。


奇しき体あいうえお

2012年05月11日 | Weblog

 

大学生の頃のノートに書いてあった。

 

『奇しき体あいうえお』

安楽な握中 
いかがわしい胃袋 
倦んだ魚の目 
鋭利なえくぼ 
思い上がる親指 

勝ち誇る角膜 
軋む胸筋 
くずおれる踝 
敬虔な頸動脈 
穀潰しの睾丸 

差し戻された左脳 
忍び笑う心臓 
素っ破抜かれた膵臓 
せせら笑う背骨 
添え物の双眼 

たらい回しの胆汁 
長物の腸 
美人局の爪先 
手つかずの手 
どやされる胴 

中弛む軟骨 
賑々しい尿道 
抜け駆けする抜け毛 
猫舌の寝言 
後添いの喉仏 

履き違えた肺 
引き返してきた皮膚 
不自然な富士額 
別注の臍 
ほころびた頬 

眉唾物の眉 
見習いの耳 
蒸し返す向こう脛 
瞑想する迷走神経 
物臭な蒙古斑

やさぐれた柔肌 
ゆき暮れた輸卵管 
余罪ある腰椎 
楽観的な卵巣 
臨機応変な臨月 

流人の涙腺 
例外の霊魂 
路頭に迷う肋骨 
和綴じの脇腹