英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

相棒 season17 第4話「バクハン」

2018-11-11 17:33:24 | ドラマ・映画
「あなたは……味方だと思ったのに」(百田刑事)
「この人は、正義の味方なんです」(冠城)

今話はこの台詞に集約される……と思ったが、それを吹き飛ばすほどの強烈なシーンが(笑)…

 刑事ドラマ、特に『相棒』では時々“正義”がテーマになる。
 この正義について常々不満に思っていることがある。
 最近では『絶対零度 Season3』最終話において長嶋(北大路欣也)が桜木泉(上戸彩)に
「正義に正しいも間違いもない。
 立場が違えば、その正義も変わる。
 おまえの信じる正義を貫けばいい」

と、桜木の行動を後押ししていたが、この“それぞれの正義”論だと何をしても肯定できてしまう。

副総監・衣笠(杉本哲太)の言葉はそれを象徴している
「怖れるならなるな。なるなら怖れるな。警察官とはそういうモノだよ」
「警察官は、みんな覚悟しているんだ。そのうえでそれぞれの正義を貫いている。
 私もこのまま終わらせるつもりはない」



右京の危惧もそこにある
「おまえは、“人材の死神”だな。
 源馬がいなくなれば、組織暴力に対する捜査力は大きく減退する。あいつが押さえている連中が暴れることになるぞ」
(角田課長)
「代わりに“違法捜査”はなくなります」(右京)
「“違法”なんて簡単に言うなよっ!
 俺たち組対が、どういう連中を相手に戦っていると思っている?
 源馬がどういう思いでっ………
 俺たちの捜査はきれいごとでは済まないんだ。
 ネタ元との関係は“必要悪”なんだよ」
「“必要悪”ですか?本当にその悪が必要だというならば、僕が潰したところで、必ず残るでしょう」
「源馬は必要じゃなかったというのか?
 俺にもネタ元はいる。叩けば埃が出るかもしれないぞ。俺のことも挙げるのか?
 俺のことも挙げてみろっ!杉下ぁっ!」
「あなたが罪を犯し、その証拠があれば、その時には」

杉下の胸ぐらを掴む角田課長だが、部下たちに抑えられ、
「じゃあな、警部殿」と言って、去る。


  ………源馬(中野英雄)や角田課長(山西惇)がネタ元などを“必要悪”として、それらを利用して巨悪を取り締まる捜査手法。

 “きれいごとでは済まない捜査”(違法捜査)をしたり、“必要悪”を容認して、巨悪を取り締まる。
 しかし、小さい悪(必要悪)を容認することによって、犯罪や不幸が生じてしまう……歪んだ捜査は歪み(犯罪・悪・不幸)を生む

 なので、右京は「法を守る(守らせる)」「法を犯したものを律する」を絶対とし、「法を守らせる警察は法を犯してはならない」(違法捜査は許さない)を大原則とした。(「右京、おまえが言うな!」という突っ込みはしないでね)
 法律という基準を設け、徹底的に私情・酌量や大義名分を理由とした身勝手さを排除している。

 

≪違法捜査は許さない≫は生活安全部の刑事・百田(長谷川公彦)にも及ぶ
「私と柏崎の関係があったから、源馬を倒すことができた。ネタ元との関係は“必要悪”じゃないですか?」
「“必要悪”ですか、皆さんそうおっしゃいますね。
 しかし僕には、必要な悪があるとは思えません」

(苦い顔をで右京の言葉を聞く角田課長)


 で、冒頭の“正義の見方”に至る。
 右京にとって正義は法であり、法を守るのが絶対。法(正義)を守る……まさに正義の味方である



当然、源馬に対しても容赦はなかったが、彼の最後の“挨拶”に対しても厳しかった
「親が子を復讐に巻き込むことが正義ですか?
 和氣はあなたとの秘密を守るために、自ら命を断とうとした」
「おまえが余計な真似をしたせいでな!」
「和氣をそこまで追い詰めたのはあなたです。
 あなたのために命を捨てようとした……それがあなたが犯した一番の罪です」

思いつめた顔で言葉に詰まり……冠城の方を向き
「参ったぜ冠城ぃ、俺一発かましに来たのによぉ、説教されちまったよ。
 どうもこいつと話していると、自分が悪かったような気がしてくる」


源馬も一矢報いる
「でもよぅ杉下、俺にはこの道しか選べなかったんだよ。
 あと少し、もう一歩だったんだよ。おまえのせいで、武輝会壊滅作戦をふいにしちまった。
 落とし前つけねえとな」
杉下に殴りかかる源馬、制止しようとする冠城と角田だが間に合いそうもない。
杉下は現場の拳を甘受しようと動かない。寸前で拳を止める源馬。
「なぜ、止めたのですか?」
「俺も警察官なんだよ」と言い、特命係に和氣への伝言『二度とお前には会わない。しあわせにな』を頼む



ラストシーン近くの右京と冠城の会話は、源馬の言葉を受けている
「どんなに法律で取り締まっても、組織暴力はなくならない」
「皆殺しにでもしますか?」
「それができないから、警察官なんですね」



ツンデレの角田課長
部屋に入ってきて、コーヒーを入れる角田。
「あれ?直っている?」
「俺が(コーヒーメーカーの)修理を頼んだ。ここが俺の休憩室だからな」
源馬の暴走を止めたことを杉下に礼を言い、
「おまえは最後まで、俺につき合えよ」
「わかりました」


角田課長との衝突が今回の大見所
 今話の最初の方で、コーヒーメーカーが壊れていたのを挿入し、自らがそれを修理したことで、自分も特命係に所在する意思を示した。……うまい脚本、感心。
 桃田刑事が右京に必要悪について説教?されているのを、バツが悪そうに苦い顔をして聞いていた。そしてこのラストシーン。
 角田課長が右京の信念を認めたと私は考える。


大活躍の冠城
 右京の行動を予測し、右京と別行動をとることで、孤立した右京に手を差し伸べた(右京も冠城の真意を察知していた)
ただし……
「俺は人に踊らされるのが嫌なんです。自分で思うように踊りたい」
「思うままに僕が走り、キミが踊るわけですね」

 粋なセリフだが、今回とズレているような気がする。


右京の正義、角田課長との衝突、冠城の活躍、警視総監の暗躍などが絡み、(多少、突っ込み所はあったが、それは全く気にならないほど)非常に面白かった
脚本の真野勝成氏だが、“要注意脚本家”と評価していたが、いったいどうしたことか?(ごめんなさい)
(ただ、相棒 season16 第16話「さっちゃん」で少しだけ評価を訂正してはいます)

でも………
「シャブ山シャブ子です。17歳でふっ」
“非日常な存在”が徐々に近づいてくる……ホラーそのものの惨殺シーン。
………これに、すべてを吹き飛ばされてしまった……

 それにしても、殺害される直前に百田刑事がスマホで話していた相手は誰だったのだろう?→ゲームセンター経営者の背後にいた情報提供者で、実は武輝会の人間
 正体がキャリアの久我(崎本大海)だったら凄いのになあ。
 しかし、百田殺害にビビって副総監に異動を懇願する様子はそうとは思えない。部屋から下がるとき、逆光でわかりにくかったが、表情は怯えたままだったように見えた。

【補足・些細な突っ込み】
①和氣がかなりの利益を上げていたが、「その利益の分だが苦しむ者がいる」という旨の指摘を右京にして欲しかった
②組対4課は和氣の資金をばらまき過ぎ。(「その資金が悪事に使われる」という指摘も欲しかった)
③シャブ山シャブ子を登場させるために、百田と謎の人物との決別を描いたのだとしたら、残念

 
第1話「ボディ」第2話「ボディ ~二重の罠」第3話「辞書の神様」

【ストーリー】番組サイトより
賭博捜査をめぐって右京と角田が一触即発!
正義の暴走が取り返しのつかない悲劇を招く


 組織犯罪対策四課の賭博担当、通称バクハンの課長・源馬(中野英雄)の指揮の下、過去最大規模の裏カジノ一斉摘発が行われ、広域指定暴力団・武輝会の資金源に大ダメージを与えた。
 右京(水谷豊)と亘(反町隆史)も摘発に駆り出されたのだが、右京はその際、摘発を逃れた店があったことに気づき、源馬が裏で手引きしているのではないかと疑う。組対五課の角田(山西惇)は、戦友のような源馬をかばい、手を引くよう釘を刺すが、右京は捜査を続ける。
 そんな中、賭博業者との癒着で源馬をマークしているという生活安全部の刑事・百田(長谷川公彦)と久我(崎本大海)が、特命係に協力を要請してくる。
 右京は、二人への協力を約束するが、亘は「角田課長を裏切れない」と言って、源馬の内定捜査から降りる。さらに、裏では特命係の廃止を目論む副総監の衣笠(杉本哲太)も暗躍していて…!?


亘や角田とも不協和音が生じ孤立を深める右京
それでも信念に従い賭博をめぐる不正の真相を追究
信頼できる仲間を失った右京が行き着く先は…!?


ゲスト:中野英雄 長谷川公彦 崎本大海

脚本:真野勝成
監督:橋本一

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6 コメント

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面白かったです。 (marumori)
2018-11-11 21:09:34
英さん、こんばんは。

 今回は面白かったです。文句なしに今Seasonで一番ですね。昨Season以降の真野氏の作品は悪くないです。

 実は、別のブログでも相棒の感想コメントを違うHNで書いているのですが、そちらでも今回のエピソードをほめるコメントを書いていたので、もし英さんが厳しい評価をしていたらどうしようとドキドキしていました。

 英さんが書いてくれたこと以外で私が好きだったのは、右京さんを馬鹿にする発言をした久我に対し、青木がムッとして「甘く見ないほうがいいと思いますけどね!」と突っかかったシーンです。青木の屈折した心理がうまく表現されていたと思います。

 伊丹と芹沢の裏カジノへの潜入も面白かったです。ハードな展開の中で息抜きとなるシーンでした。

 組対四課の源馬課長ですが、今回限りで退場させるには惜しいキャラですね。中野英雄さんはこういう役が似合います。

 それにしても「シャブ山シャブ子」が視聴者に与えた衝撃はかなりのものだったようですね。Twitterのトレンドで1位になったみたいですから。真野さんも、唐突にえらいものを放り込んだな、と(笑)
返信する
難儀しました ()
2018-11-11 22:05:01
marumoriさん、こんばんは。

 先週今週と、仕事とスポーツ観戦(テレビ)が忙しかったのと、ドラマ内容が濃かったので、レビューも難産でした。

>右京さんを馬鹿にする発言をした久我に対し、青木がムッとして「甘く見ないほうがいいと思いますけどね!」と突っかかったシーンです。青木の屈折した心理がうまく表現されていたと思います。

 青木は特命係の手強さを身に染みて経験していますからね。

>伊丹と芹沢の裏カジノへの潜入も面白かったです。

 思わず「こいつらかぁ」と呟いてしまいました。

>「シャブ山シャブ子」が視聴者に与えた衝撃はかなりのものだったようですね。Twitterのトレンドで1位になったみたいですから。真野さんも、唐突にえらいものを放り込んだな、と(笑)

 強烈でした。
 ただ、このエピソードは今回の話に必要だったのか疑問です。百田の電話の相手が今後も特命係に絡んでくるような人物だったら納得できるのですが……
 他の話に回してくれた方が、今話はまとまりが良かったように感じました。
 少しだけ、追記を書きました。
返信する
その他の突っ込みどころ (marumori)
2018-11-11 23:21:59
英さんこんばんは。返信ありがとうございます。

>ただ、このエピソードは今回の話に必要だったのか疑問です。

確かに、なくてもストーリーは成立したと思います。インパクトを与えることが狙いなら、大成功ですが。

他の突っ込みどころとしては、もし関係を隠したいのなら、服装を真似たり、同じ焼肉屋で何度も会ったりしないほうがいいのではないか、という点ですね。

ちなみに、【ストーリー】の「残忍な刺殺事件の背景には~」のくだりは第3話の内容ではないでしょうか?
返信する
ご指摘、ありがとうございました ()
2018-11-12 00:25:58
marumoriさん、再びのコメント、ありがとうございます。

>他の突っ込みどころとしては、もし関係を隠したいのなら、服装を真似たり、同じ焼肉屋で何度も会ったりしないほうがいいのではないか、という点ですね。

 ええ、そうですね。
 不用心でしたね。これは、脚本の都合かもしれませんね。いろいろ詰め込んだので、分かりやすくして捜査をスピーディーにしないと、尺が足りなかったとか。

>ちなみに、【ストーリー】の「残忍な刺殺事件の背景には~」のくだりは第3話の内容ではないでしょうか?

 うっかりしました。
 先週の記事を土台にしているので、この部分は先週のモノと今週のモノを差し替えるのを忘れてしまいました。
 早速訂正しました。ご指摘、ありがとうございました。
返信する
久しぶりに (koumama)
2018-11-12 21:08:21
この相棒はおもしろくて
最後まで楽しめました。
冠城さんが杉下警部に着いて行かなかったのには理由があったとか いつも(ひまか?)っていう穏やかなやりとりの角田課長と敵対しちゃうところとか
見どころ満載で久しぶりおもしろかったかなと。
だから英さんのレビュー楽しみでした(笑)
英さんも今回は突っ込みどころはあるにせよ面白かったと思ったんだなと少し安心しました(笑)
こういう相棒ならではの面白さがあると
見ていてよかったなと思います。
返信する
辛口だと思われて ()
2018-11-12 22:06:40
koumamaさん、こんばんは。

>英さんも今回は突っ込みどころはあるにせよ面白かったと思ったんだなと少し安心しました(笑)

 marumoriさんと同様な心配をされていたようですね(笑)
 どうやら、相当辛口だと思われているようです。その評価は正しいのですが、今回は面白かったです。
 koumamaさんが仰る冠城くんや角田課長の行動や言葉もそうですが、大河内、副総監、青木などの台詞も練られていました。
 “正義の味方”は絶妙でしたし、個人的には、伊丹の「無駄に運を使っちまったぜ」も面白かったです。
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