英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2020王座戦 挑戦者決定トーナメント 羽生九段-飯島七段 その2

2020-05-27 13:39:52 | 将棋


 第2図でソフトが示した有力手は①▲3三角成と②▲7六飛。(他には▲6六歩も考えられる)
 ①の▲3三角成は、後手からいつでも△7七歩があって一瞬ではあるが▲7七同桂の悪形を強いられる嫌味があるので、その前に角をさばいてしまおうという手で(もちろん、角を手持ちにして攻め筋を増やす意味もある)、第一感の手と言える。ただし、手順に2一の桂を跳ねさせるマイナスもある。
 これに対し、②の▲7六飛は非常に指しづらい手だ。直前に打った2四の歩を△2四飛と払われてしまう手が生じるからだ(しかも、飛車成りを見ての先手)。実際にソフトの読み筋は▲7六飛に△2四飛▲2八歩(変化図0・▲2七歩は△5四角が生じる)△7七歩▲同桂△同桂成▲同金(△2四飛の前に△7七歩を入れる変化もある)……

 この変化もそうだが、例えば△2五歩と打たれて、先手の飛車が2筋から他の筋に動くと、△2四飛と歩が払われてしまう手がちらつく。また、第2図では△2四飛とぶつける手もあり、その際、1歩得ることができる……手得したことによって打った2四の歩がマイナスとなっている。一手パスしたのは、飯島七段の深謀遠慮だったのかもしれない。

 ①は人間の手、②はPCの手と言えよう。
 羽生九段の指し手は①▲3三角成。 
 △3三同桂に▲5六角。桂取りと▲2三歩成を見た角打ちだ。飯島七段も飛車香両取りの△4四角と打ち返す。



 第3図、▲2八飛と引くのは△2七歩~△2六歩で飛車利きを止められてしまう。また▲4六飛と逃げて△9九角成▲6五角と桂香交換に持ち込むのは、馬と角の働きの差が大きいので、羽生九段は2三歩成と切り込む。
 対する飯島七段の△2三同金が精密な取り方。△2三同銀▲同角成△2六角▲3二馬と△2三同金▲同角成△2六角▲2二馬とでは駒のやり取りは同じだが、馬の位置が1路違う。それでも、▲同角成と踏み込む手もあったが、以下△2六角▲2二馬△4四角▲6六銀△2五飛(馬桂取り)▲1一角成△2九飛成の順は、気が進まない。手順中の▲6六銀のところで▲7四歩△同飛を入れて▲6六銀と打つ工夫もあるかもしれない。▲6五銀と桂をとる手が飛車当たりになるという仕組みだが、△7四同飛と応じる一手ではなく、△9九角成▲7五金△2五飛の変化もある。さらに▲7四歩に△2五飛(2四飛)も心配……嗚呼。
 なので、2三金の悪形になったことを一応の成果とみて、▲4六飛と緩める。

 ここで飯島七段は単に△9九角成とせず、△5七桂成▲同銀を入れて△9九角成と香を取った。先手に桂を取る手(▲6五角)を省かせる代わりに、先手玉を弱体化させると同時に1歩を補充した。他には《先手の角の位置…5六と6五では5六が勝る》《先手の5筋の歩が切れたことで▲5四歩などの攻め筋ができた》などの要素があるが、飯島七段は桂成りを利かせた方が得と判断したのだろう。

 ここ数手、複雑でしかも大捌きの変化が多い割には、飯島七段の指し手は早い(2図の直前の△7五歩を決行するのに26分の考慮で(昼食休憩中も考えていた)、ある程度の目算を立てていたとも考えられるが、研究範囲だったような気がする。羽生九段は▲7五同歩に24分、▲3三角成に32分の考慮だった。
 △5七桂成▲同銀を入れて△9九角成に▲7七桂と進み、激しい振り替わりはやや一段落。
 先手からの攻め筋は▲3五桂でかなり厳しい。後手の攻め筋は△7六歩や4筋、5筋の香打ちもかなり嫌。手番は後手なので、後手が微差ではあるが良いように思う。攻勢を取り主導権を握られている先手は、形勢以上に勝つのが大変なような気がする。ここが勝負処とみて、飯島七段も考慮に沈む。……約40分の思慮で指した一着は?
 

 ……と、その前に、第3図の直前の▲5六角では▲5五角もあるらしいので、それについて少し。
 羽生九段は▲5六角に40秒しか使っていない(▲3三角成の考慮中に決めた)ので、ABEMAの評価値は当てにならないが、巷の動画配信の最善手が▲5五角だった。


 変化図1の▲5五角は後手の狙いの△4四角を消しつつ9一の香取りを見ている。それほど厳しい手ではないが、香取りを防ぐとなると悩ましい。△6四歩は飛車の横利きが消え、玉のコビンも空く。△7三歩は△7七歩の叩きがなくなる。
 激しく指すなら△5四飛。先手も勢い▲9一角成と成り込むことになるが、△5七桂成▲同銀△3五角▲4六飛△8八歩(利くなら利かせたい)▲同銀△4五桂や△5七桂成▲同銀△4四角▲6六飛△5七桂成▲同銀△4五桂▲5五歩など苛烈な順が考えられるが、当然、私の棋力ではよくわからない。
 ▲5六角は先の▲2四歩の意を継いでおり、▲5五角より自然な流れなのかもしれない。

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