NHKドラマ『おとなりに銀河』が完結した(視聴も完了)。
面白かったんだけど、途中からパワーダウン。結末も未消化気味。
ヒロインのしおりは、上京当初、黒を基調……と言うより、ほぼ黒一色の服装。それがドラマ後半からは、淡いピンクなどの優しい色のモノに変わっていった。
それは、彼女が島や母親から離れ、自分の色を持つようになったからだろう。ただ、開始当初の、純粋培養の純潔さ鋭利感も薄れたことを示していた。いや、人間的には成長、成熟したのだけれど、視聴者的には彼女の面白さが薄れてしまったという残念さもある。
いや、彼女の成長、そして、彼女の伴侶となる久我一郎の成長がこのドラマのテーマなので、それはそれで納得。
しかし、残念と言うか、モヤモヤしたモノが残ったというのが一番の視聴後の感触。
1.五色しおりの自立について
島を離れた当初は、《自分の好きな漫画を描いている久我一郎のアシスタントになりたい。そして、自分も漫画を描きたい》という気持ちが前面に押し出されていた。
しかし、その根底には、《石の力によって、島の民から愛されている“重圧”や、姫として生きなければならない”孤独さ”、そして、呪縛にも似た”母の束縛”から逃れたい》という気持ちがあったようだ。
さらに、婚姻の契約を結んだ相手を支配してしまう(相手が自分の意思に背いた行動を取ってしまった時、自分の悲しみや苦しみに苛まれた時などに、相手にその報いを与えてしまう)……という関係も嫌であった
最終話、心の声(テレパシー)で島の民に自分の気持ちを伝え、島を出ていくことを告げる
「共に生きたいと願う人に出会った。当初は、石の力がなくて相手が何を考えているか察することができず、うまくいかないことばかりだった。でも、大切な人を思って、悩んだり喜んだりすることはとても幸せなことだと知り、人が心を通わすことの素晴らしさを感じた。」
石の力によって、島の民は《しおりの久我兄弟やその周囲の人と営む情景が伝わったのかもしれない。
【私的には…】
一郎の”人となり”やアクシデントで婚姻の契約を交わしたが、そんなこととは関係なく、彼に惹かれていった。婚姻契約を解消しても、ふたりの気持ちは変わらなかった。
さらに、石の力がなくても幸せである………
………《島の民にも、婚姻の契約や石の力がなくても幸せになれる》ということを、語り掛けて欲しかった。
そして、島を出ることを告げ、”島を出てもみんなを大切に思う気持ちは持ち続ける”と言ったものの、島の民は嘆き悲しむ。
その声を聞いてしおりは、「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝り続ける。
その悲しみを、都が遮断した!(後述)
しおりの決断は、都の後押しで一応の決着がついたが。そこで、「帰りましょう」と久我兄弟に話す⇒いきなり、久我兄弟たちとの楽しい営みのシーン。
シーンの流れだけだと、島民の置き去り感が半端ない。ドラマ的には島民の混乱→納得(沈静)の気持ちを入れるのは間延びする気がするが、少し可哀そう。ラストシーンで、フォローしてほしかった。
しおりの描いた漫画を見て、ほっこりするシーンがあっても良かった。
2.五色都、五色健(しおりの両親)の生き方
都は《石の力と共に生きることが幸せである》と信じて、しおりにもその生き方を望んだ。
しかし、しおりと一郎を見て、その気持ちが揺らぎ始めたが、これまでの生き方を否定することにもなり、固執しようとしていた。
婚姻契約による支配力により、その葛藤などの心の不安定さが、夫・健に反映され、肉体的苦痛が襲った。
そういう不条理さや、しおりの決意と一郎の愛の強さに、しおりの選択を容認。島民の嘆きの声に、謝り続けるしおりに、“なぜ、謝罪する?誤った選択をしたのか?”、”しおりの幸せを、島の民に示すのではないのですか?”とテレパシーで遮断した……“なぜ、謝罪するのか?”とか素直じゃないなあ。
健は、「石の力で、性格を変えられたわけではない。君の気の強さも、人の話を聞かないところも、僕の好みだ。それは、石の力は関係なくね」。……スマートだ。格好いいなあ。
そんな健が、都の心を融解させた。
3.石の力、その力による幸せに浸る島の民の不可思議さ
石の力は何だったのか?
………石が島に落ちた時、少女(しおりの祖母)と出会い、心が通った。
石は少女にしあわせになって欲しいと思った。その思いが島に浸透し、島の民が少女やその子孫を大切に思うようマインドコントロールした。
婚姻の契約も、契約者(夫)が娘の為になる行動を強いるためのモノ………というのが私の推測
と、書いてしまと、島民にとってはひどい話である。(客観的にもひどい話だ)
まあ、姫としても、普通の性格だったら、島の民と心が通い合う……“心が通い合う”と表現するといい話だが、大勢から心の声を送ってこられるのは、鬱陶しいし、負担になりそうだ。
マインドコントロールを受けて、幸せでないかもしれない状況を幸せと思い込まされている島民が、そのコントロールが解けたら、どうなってしまうのか?
記憶は残ると思われるので、姫たちが島の民の事を大切に思っていたと理解されるのであれば、良いのだが……
島民も善良そうだし…いや、それが石の力だったら……
「しおりの自立」の項で書いた『石の力がなくても幸せである…………《島の民にも、婚姻の契約や石の力がなくても幸せになれる》ということを、語り掛けて欲しかった』云々どころの、気楽な話ではないかもしれない。
しおりの告白、都の容認のテレパシーから、さっさと東京に帰ってしまったのも、身の危険を感じたからかもしれない(笑)
全体のストーリーとしては、婚姻の契約解除の辺りが大きなピーク。契約解除によってふたりの愛は消えてしまう(石の力によるものだった)のか?…が焦点。
《婚姻契約解除しても、ふたりの愛は変わらなかった》ということを、母・都にも島の民にもアピールしても良かったのでは?
契約解除後は、普通の恋愛ドラマが続き、少し冗長感があった。
【その他の疑問】
・しおりの漫画を読んだ都だが、《島を捨てるほどの出来だとは思えない》と辛辣。…これは本心なのだろうか?
・星まつりに向かう道中で、一郎が「しおりを愛することができた」と話し、しおりがそれに反応して“愛した”という言葉を確認しようとしたら、島民が彼女を見つけ「姫様だ、姫様だ」と大騒ぎになってしまい、「愛」の言葉の確認は有耶無耶に……この確認のやり取りは必要か?
・しおりは期待賞受賞、デジタル機器の扱いも進歩と漫画家として進歩していったが、一郎はどうなのか?
連載は、編集者のアドバイスを取り入れたにも拘らず、連載終了。しおりの心を動かした漫画なのに……扱いが低い。後に、反響が高まって、連載復活するのかと思っていた。童話の挿絵の仕事は得られたが、新たな連載も今のところはなし。
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