英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

羽生九段将棋事情 その2「勝てなくなった理由」

2022-11-27 20:19:22 | 将棋
 私ごときが《羽生九段の勝てなくなった理由》をあれこれ言うのは、おこがましいが……

1.内的要因(本人に起因する要素)
①棋力の衰え
 ここでの“棋力”というのは、正味の将棋の実力のこと。つまり、読みの精度(読みの量、深さ、大局観などに基づいて最善手を指す頻度の高さ)とスピード。“能力”とか"脳力”と言うべきか…。
②体力や持久力の減退
 「将棋は体力」と故・板谷進九段が言ったように、長時間させるだけの体力が必要。病気や怪我など健康状態も大きな要素。
③モチベーション・気力(集中力)の低下
 《将棋が好き……将棋を指したいという気持ち》も肝心。そういう純粋な気持ちの他に、名誉欲・金欲もモチベーションに繋がる。
 また、心配事などの精神的要因も集中力・気力に影響する。集中力は、➀や②から影響を受けることもありそうだ。
 要因①の「棋力の衰え」も、健康状態に左右されそうだ。まあ、厳密に考えず、本人に起因する要素、つまり、よく言われる心・技・体」が肝心ということを、もっともらしく言っただけ。

 これらは、個人差はあるが、40歳過ぎてから、下り坂の勾配が強くなり始める(②の根本である健康状態は個人差が大きい)。当然、羽生九段も年齢による衰えを掛けることはできない。とは言え、羽生九段の場合は、その降下の具合が少し違う気がする
 「その1」で書いたように、《年度別成績が2016年に5割台に落ち、2018年12月に広瀬八段に敗れて竜王位失冠し、無冠に。2020年に豊島竜王に挑戦するも、1勝4敗で奪取ならなかった》という状況は、ずっとタイトルを保持してきて、タイトル挑戦もしてきた実績、そのイメージが強いだけに、成績の落差が大きく感じてしまう。が、そうではない実績もある。詳しくは、「その3」で。
 それはともかく、昨年度は14勝24敗、勝率.368。7月から9月にかけて6連敗。NHK杯で準決勝進出して、希望を感じたが、準決勝の敗戦を含め年度末7連敗(今年度初戦敗局を含めると8連敗)し、順位戦A級陥落……年によって出来不出来はあるにしても、つらい一年だった。
 通常の下降曲線を大きく下回った原因は、内的要因だけではなく、外的要因が働いた為と考える。

2.外的要因
④棋界全体のレベルアップ
a.AIによる詳細に及ぶ定跡研究
b.実戦の敗因究明とそれによる更なる定跡の上乗せ
c.対戦相手に対する研究が深くなり、局面を想定して対策が練れるようになった
d.今までの常識を超える大局観や新たなる手筋の開発

 これらにより、棋界全体の棋力が上がり、羽生九段が勝つのが大変になった。
⑤羽生九段への畏れや信用の低下
 前項目(項目④)の要素cにより、羽生九段に対する事前対策が深くなった。
 それに付随して、羽生九段が最善手を続けているわけではない……《けっこう、間違えている》ことが分かった。これにより、羽生九段の指し手を《羽生九段の指した手だから、良い手なのだろう》という先入観がなくなった。さらに言うと、予想外の手を指された時、《そうか、そんな手があったのか!》と少なからず動揺してしまうことがあったが、羽生九段への恐れが低下したことにより、《もしかしたら、悪手かも?》と冷静に分析されている。
⑥羽生九段本人の読み筋への自信の揺らぎ、迷い、大局観の狂いが生じている
(“内的要因”に入れた方がいいかもしれないが、項目④の二次的現象なので、敢えて「外的要因」に入れることにする)
 長い項目題名と括弧内の説明により、記述することがなくなってしまった(笑)。
 自身の読み筋や大局観への自信が揺らいでいるため、入念に読むようになり、時間とエネルギーを消費して終盤のミスが増えた。

 要約すると、年齢的衰えと、対局相手の棋力向上と羽生九段への畏れ低下による“羽生マジック的効果”が薄れ、羽生九段の迷いなどによるエネルギーのロスによるミスの増加が相まって、勝ちにくくなった……

 その3「棋戦による相性」に続く

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王将戦が心配です (zoran)
2022-12-05 14:45:14
英さん、こんにちは。

先日の近藤七段との順位戦を見ていて、終盤の長考中に「やばいな」と思ったら、せっかく"有利"な状況だったのに、やはり疑問手が出て負けてしまいました。もう残留の心配をしなければなりません。正直に書いて「もう順位戦や竜王戦などの長い将棋は無理かな」と思っています。某棋士のように、A級から落ちた時点で「フリー宣言」するのも"あり"だったかも、と考えてしまいます。

そこでタイトルの"王将戦"ですが、本線リーグは持ち時間4時間で、何かがうまくかみ合って6戦全勝で挑戦権を得ましたが、挑戦手合いの7番勝負は8時間で2日制。1日目は18時封じ手だし、2日目も夜戦にはなりにくいとはいえ、2日がかりの体力勝負です。相手は藤井五冠。若いし読みは深いし、4-0かつ内容も完敗、なんて結果を心配しています。素人の私には2日制の大変さは全く想像すらできませんが、1晩眠れるので持ち時間4時間の将棋を2日続けて指す(それも大変そうですが)ようなものなら大丈夫?でも1日目で少しでも形勢が不利になれば、ただでさえ封じ手の先を考えて眠れなそうなのに、もっと眠れなくなりそう。とにかく1日目は、形勢を損ねない様に、また体力を温存するためにそこそこの消費時間で、長考も将棋を考えず頭を休める時間くらいに考えてやり過ごして、2日目勝負。

羽生九段がタイトルに挑戦することは嬉しいことですが、棋王戦で挑戦者になってほしい。佐藤天彦九段に決勝で負けてしまい、敗者復活戦に回ってしまって、しかも相手はやはり藤井五冠で、勝って、そのあと再び佐藤九段との2番勝負に2連勝しないとダメなので、そうとう厳しい。でも挑戦者になることができれば、相手は渡辺棋王だし、持ち時間は4時間の1日制だし、5番勝負だし、タイトル奪取の可能性はある。

名人10期は諦めました。何とかタイトル100期は達成してほしい。

素人ファンの戯言ですが、羽生さんにとにかく勝ってほしい気持ちで応援しているファンの本音と、お許しください。

おまけ:里見女流の棋士編入試験は大変残念でしたが、続けて小山怜央アマの編入試験です。とりあえず1勝してあと2勝。小山さんのことは全く知りませんが、奨励会出身ではないとのこと、ぜひ頑張って合格してほしいと思っています。里見さんも、次のチャンスを掴んでほしい。中三段も今期は好調のようなので、初の女性棋士を目指して頑張ってほしい。
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困りました ()
2022-12-05 17:30:54
zoranさん、こんにちは(こんばんは)。

 困りました…
 何に困っているかと言うと、zoranのコメント内容が、「羽生九段将棋事情 その3」とほとんど一致していることです。
 先日の順位戦・対近藤七段戦の分析、棋戦による持ち時間による得手不得手(向き不向き)、王将戦の危惧……どれもほぼ同じです。

 「その3」で《棋戦による持ち時間による得手不得手(向き不向き)》について書くとして(内容が一致してしまうと思いますが、ご容赦を)、先日の対近藤戦について、少し(これもzoranさんとほぼ同じです)。

 最後の長考で▲6一金(最善手)を着手しましたが、この手でほぼ持ち時間を使い果たしてしまいました。▲6一金の局面は先手(羽生九段)がやや優勢とは言え、勝ち切るのは難易度が高い終盤でした。
 運の悪いことに、6二の金で、角を取るか、銀を取るかの二択で、角を取って▲6一銀と迫る手が好手順のように見えます。実戦もこう進み、直後に近藤七段の△6三銀の只捨ての妙手がでて、一気に敗勢になってしまいました。
 銀を取る手が正解で、それで優勢でしたが、それは最善手を続けられればの話で、なかなか難易度の高い手順でした。
 とにかく、秒読み寸前まで時間を消費しては勝てないと思います(羽生九段はこういう展開が多いです)

 直接の敗着は角を取った手で、持ち時間的敗因は▲6一金での長考だと思いますが、一番の敗因は、▲6一金の少し前の▲2九飛と飛車を転回した手だと思います。
 とにかく、後手からの6七への打ち込みを防いでおかないと、先手が勝つのが難しかったです。
 正道ではありませんが、自玉の安全度を優先する度合いを少し高め、お互い最善手を指し続けることは難しいと割り切って、最終盤に思考力と持ち時間を残しておくべきだと思います。
 正道ではありませんが、勝利を積み重ねていけば、正道に戻ることも可能だと思います。

 王将戦七番勝負の見解もほぼ同じです。
 まあ、この際、羽生九段が疑問に思っている局面を藤井五冠にぶつけるのも面白いと思います。

 私も、棋王戦に期待していましたが、仰る通り、かなり苦しい状況になってしまいました。でも、一発勝負なら分かりませんし、その後、佐藤天九段に連勝するのもなかなか大変ですが、自分の第一感を軸に指してほしいです。
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