英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

電王戦……スポーツマンシップ、棋士のプライド……ルール内であれば“正々堂々”と言えるのか? 【3】

2015-04-18 23:40:03 | 将棋
「Ⅰ.“ルール内”ということ」
「Ⅱ.反則周辺のテクニック」の続きです。

 「その1」で、ルール内で勝利を優先させる事例を挙げ、考察した。「その2」では、ルール外(反則)の周辺について考察した。
 将棋については、「その1」では糸谷竜王の離席を例に挙げて考えているが、反則や不正行為やマナー違反(盤外戦術)については触れていない。そこで、今回はそれがテーマです。

Ⅲ.将棋における反則など
(「その1」「その2」の流れから言うと、まず「ルール内」(マナー・盤外戦術)から言及すべきですが、もともと「その1」の動機が大きく、実際にいろいろなケースが考えられるので、後回しにします)
①反則…………
 「その2」で“バイオレーション”と“ファウル”に区別したが、将棋は長時間、近距離で相対するにも拘らず、接触することはないので、肉体的ダメージを与えるような“ファウル”は存在しない。
 拡大解釈すれば、「煙草を吸わない相手に煙草の煙を吹き付ける」だが、これは、マナーの範疇に入るし、将棋に限ったマナーではない。
 “バイオレーション”に当たる反則は「二歩」「打ち歩詰め」「王手放置」「駒の移動間違い(行き場のない駒を打つことも含む)」「二手差し」「連続王手の千日手」が挙げられ、公式戦では負けとなる。
 将棋の指し手以外には、「時間切れ」「待った」があり、これも負けとなる。
 反則の判定はかなり明確なので問題が起きることは稀である。ただ、最後に挙げた「待った」は、“着手”は駒から手が離れた瞬間に“完了”と見なされるので、「離れた」「離れない」で揉めることがある。
 いくら優勢でも、反則を犯したら負けになるので、子どもの大会を手伝っている時は、≪反則しないか≫いつもドキドキである。


②不正行為…………
 不正行為で考えられるのは、電子機器や棋書を使用してのカンニング行為である。
 以前は、棋書や実戦譜を用いたカンニング、あるいは、外部と連絡したり、他の棋士と相談するぐらいだったが(これでも重大な不正行為)、最近はPCやモバイル機器の発達により、より容易に強力な助力を得ることが可能となっている。
 この辺りの事情を、「『週刊将棋』 驚きの記事」で述べているが、この記事を書いたのが2009年。既に、丸5年経っているが、現在、電子機器の持ち込みの規制はされていない。
 現状では、相当徹底した規制をしないと、防止は難しい。なので、規制するよりは、棋士のプライドを信用し無規制にして、気持ちよく対局をするというのもありかもしれないが、完全防止は不可能でも、規制を設けて、カンニング行為を犯すハードルを高くすること、また、それによって、カンニング行為がいけない事を再認識することが肝要なのではないだろうか。


③マナー・盤外戦術…………
離席問題
 これについては「その1」で触れたので、ここでは言及しないつもりだった。
 しかし、岡本哲さんから
【大山15世名人の晩年に、森鶏二九段や田中寅彦八段が大山15世名人は相手を催眠術にかける、と警戒して一手さすごとに外にでていたことがあります。威圧感がある場合に離席するのは戦術としてむしろ当然とおもっています。いい棋譜をつくろうとしている行動ですし。気合い負けをみずからみとめるようですが、そんな行動もとれないようでは、それだと年長者有利になりがちミスだらけの棋譜になることでしょう。参考 河口俊彦「大山康晴の晩節」】
 というコメントをいただきました。
 これに対し、
「一理ある考え方ですが、相手の威圧感に抗することができず、手が乱れるようなら、棋士はやめた方が良いです。
 棋士は、盤面で価値を発揮しますが、盤に向かって勝負するのが棋士で、それができないのなら棋士ではありません。
 アマチュアなら盤に向かうのはマナーですが、プロ棋士は仕事(命)だと考えます。
 糸谷竜王も(体重などで)長時間正座するのがマイナスになるのなら、節制するなど努力すべきです。最高位につく者の使命です」

 と答えました。
 「その1」で離席問題について言及しましたが、何かモヤモヤしたモノが残りました。でも、このコメントをいただいたおかげで、考えがまとまりました。興奮して語調が強くなってしまいました。岡本さん、了承を得ずに引用したことと合わせて、お許しください。

口三味線
 プロ棋士でこれを盤外戦術で使う人は、いないと思うが、アマチュアではけっこういるかもしれない。言い切れないのは、私が長らく大会に参加していないからであるが、私が大会に出没していた時には存在した。
 「あっ、しまった」とつぶやくが本心ではなく、誘いの隙や、惑わせて時間を使わせる為の罠だった。その他としては、口三味線で思考を誘導したり、やたら話しかけて、思考を妨げるなど。
 縁台将棋で「それは桑名の(喰わない)焼き蛤」「だんだん良くなる法華の太鼓」などの囃子言葉?は嫌いじゃないが。

駒台から駒が落ちている
 「こんなところに駒が落ちていた」と言って駒台にその駒を置き、その数手後に急所に打つ。
 “持駒は駒台にきちんと置く”のがルールだが、落ちてしまうということは責めることはできない……

切れ負け将棋における時間攻め
 敗色濃厚だが相手の残り時間が1分弱。有りとあらゆる王手を掛け続け時間を消費させ、「時間切れ負け」に持ち込む。
 思い出すのは、相手玉が2手スキで風前の灯、相手の攻めは薄い状態。私が振り飛車で美濃囲いだが、相手の歩が端に垂れている嫌味がある。ここで相手が△1七歩成と成捨て、私が小考し▲同玉(▲同桂もあった)。すると、相手は△1六歩。▲2八玉に△1七歩成……。この成捨てを3回繰り返し、私の時間切れを狙った。
 この相手が小学6年生だった。駒もきちんと並べず乱雑。親や指導者の顔を見たくなった。

挑発・威嚇
 名人戦は棋士が特別な思いを持って戦うので、意図的、あるいは、無意識に盤外戦が生じる。長時間、至近距離で向き合うというのも一因。
・ゴミハエ問答(木村名人VS升田挑戦者)
升田「名人など所詮はゴミのようなもの」
木村「名人がゴミなら、じゃあ君は一体なんだ?」
升田「ゴミにたかるハエだな」

・「暗くしなさんな」(大山王将VS山田道美)
 名人戦ではなく王将戦が舞台だが、「打倒大山」を掲げ闘志むき出しの山田挑戦者が3勝1敗と大山王将を追い詰めた第4局の終盤、読みに没頭するあまり、前傾姿勢で盤に覆いかぶさった挑戦者に対し、大山王将が「暗くしなさんな!」と一喝。
 のめり込み過ぎて我を忘れていた対局姿を恥じたのか、以降、挑戦者の手が伸びず、敗局。結局、3勝4敗で敗退。

・場や対局相手を支配(大山名人)
 タイトル戦前夜、麻雀に興じるなど場を支配した。第1日目を切りのいいところで対局を切り上げ夕食(麻雀)を始め、対局相手も自分のペースに引き込んだこともあった(切り上げた分の時間は折半して消費時間とした)。
 また、普段から「○○▲段の将棋は大したことない」などサラッと述べて、劣等感を植えつけたと言われている。
 食事もかなりの分量を平らげるところを見せつけ、≪自分には余裕があるぞ≫と思わせたとも言われている。

・剃髪の挑戦者(中原名人VS森挑戦者)
 「中原名人は強くない」と言い切り、第1局開始直前に剃髪で現れた。この剃髪に動揺した中原名人はこの将棋を落としたが、立ち直り4勝2敗で防衛している。
 「森さんの剃髪は不気味だった」と語ったという記憶があるが、『将棋の館-盤上のドラマ-/盤上シアター81』の「剃髪の挑戦者-中原VS森」によると、≪森挑戦者のパフォーマンスによって神聖な名人戦の舞台を汚された≫と中原名人は不愉快に感じていたとのこと。

・「扇子の音が」(森内名人VS郷田挑戦者)
 郷田九段が鳴らす扇子の音が気になり、「自分の手番の時は控えてほしい」と申し入れ、郷田挑戦者も受け入れたが、≪耳障りになるほどの音ではない≫と思い直し、立会人を交えて協議し、「森内名人の手番の時は、扇子を鳴らすのは控える」で決着した(二日目、郷田の手には扇子がなかった)。
 
その他
・タイトル戦以外では、暖房や冷房の強さで、互いの主張が対立することがよくあるらしい
・加藤一二三九段が対局相手の後ろから盤面を覗き込むのは有名
・田中寅彦八段は、谷川名人を「あの程度で名人」と評し、皆の顰蹙(ひんしゅく)を買った


④助言(アマチュアの大会)………… 
 プロでは考えられないが、乱雑な会場のアマチュア大会では事故(助言)が起こる。
・感想戦をしていると勘違いして、口を挟んでしまう。
・ポカや反則に観戦者が先に気づき、「あっ」と声を上げてしまう。

 こういった助言は、対局者が関与しない事項だけに、運営側も対処が難しい。
 ただ、反則に関しては、第三者が指摘しても良いらしい(将棋連盟サイト)。
 しかし、この規定は定着しておらず、騒動になるケースも多いようだ。
【続く】
コメント (2)
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