倉敷藤花戦は第2局、第3局を里見倉敷藤花が連勝して防衛を果たしました。
第1局は岩根女流二段が里見倉敷藤花の動き過ぎをうまく逆用し局面をリードしたが、里見倉敷藤花も角銀を巧みに屈伸し逆転。飛車を成り込んでそのまま寄せ切るかと思われたが、その寄せが変調。岩根女流二段もうまく凌ぎ、反撃、流れを引き寄せ、里見玉を追い詰め、仕留めた。(147手)
これで岩根女流二段は初タイトルまであと1勝。対戦成績も岩根女流の7勝4敗となった。
この対戦成績は、両者の実績から見ると、意外な感じ。戦型はすべて相振り飛車で、原因はその辺にあるのかもしれない。里見倉敷藤花は相振り飛車は得意じゃないような気がする。ネット中継などで彼女の将棋を目にすると、序中盤は誰と指しても互角以下のような気がする。
飛車先交換を早めにし、飛車が動き回るという印象がある。私見であるが、この2点はやや損な気がする。
第2局と第3局は、『囲碁・将棋ジャーナル』で遠山四段が解説していた。
彼の解説は聞きやすく、わかりやすい。しかし、二つの点で疑問を感じた。
第1図は先手の里見倉敷藤花が▲6五歩と角交換を挑んだところ。
遠山四段は
「機敏な動きで、主導権を握って、差し手争いに成功した感じ。
▲6五歩に△7七角成▲同桂でお互いに角を持ち合うと、先手陣に有効な角の打ち込み場所がない(7九に銀がいて8八に角を打てない)のに対して、後手陣には2二に角の打ち込みがあって角交換はしづらい。それで△4四角と角交換を避けたが、これでは気合負け」
しかし、▲6五歩△7七角成▲同桂のあと、△3二金と隙を埋めておくと、逆に7九の銀の扱いが難しい。不用意に動くと△8八角と打たれてしまう。『週刊将棋』の有吉九段の解説も同様だった。
ちなみに、ネット中継の解説の青野九段は
「▲6五歩は角交換を挑む、序盤の勝負手、交換した形はどちらが模様がよくなるかは非常に難しいところである。後手は角交換が、悪いと見れば角道を止めることになるが、それだとたぶん気合負けになる可能性がある」
だった。
第2図は里見倉敷藤花独特の飛車回り。第1局、第3局でも登場しているがうまくいったとは思えない。単純に考えれば手損。一応、2三への成り込みの先手であるが、普通に△2四歩と受けられ、後に△2五歩で▲6六飛(第3図)と追われるのでは、2手掛けて7六→6六と移動しただけになっている。
倉敷藤花も当然その点は承知してるはず。第1、第3局でもそれなりの狙いがあったようだ。
ただ、この第2局に限っては、すごく巧妙だったのかもしれない。
『週刊将棋』の解説によると、「6六の地点は通常では後手の角筋であるため、この位置に飛車を安定させることが難しい。しかし、岩根陣は2五歩-4四歩-3三桂を決めてしまったっために、6六の飛を追う手段がない。先手はこの後、左銀を繰り出し、金無双の弱点とされるコビンに狙いを定める」とある。
そう▲2六飛はこの後手の陣形を誘導したのではないだろうか。(2四の歩を突くには3三に桂をはねる必要があり、角は1三に上がることになる)
2点目の疑問は第4図。
この△5七銀成(第4図)を遠山四段は問題視していた。
「この5七の銀が成りか成らずで明暗が分かれた」と。
その訳は、
「第4図以下▲7四歩△同歩▲同銀△7三歩▲6三歩成△同金左▲同銀成△同金▲6四歩△6二金▲6三金と進んだが、この時△同金と取ると▲同歩成△同玉に▲6六飛(変化1図)がぴったりで後手陣が持たない。
もし△5七銀成(第4図)ではなく、△5七銀不成だったら変化1図の▲6六飛はなかった」
しかし、たとえ△5七銀不成として変化1図のように進んだとしても、▲6五桂(変化2図)で後手玉は寄っている。
以下△6四歩としても▲5三金△7二玉▲6四角で支えきれない……と締めようと思ったが、変化2図で単に△7二玉がなかなかしぶとい(手順に▲5三金を与えないだけ得なので当然と言えば当然)。
しかし、単に△7二玉でも、ちょっと乱暴かもしれないが▲6三金△同玉▲5三角成△7二玉▲7一馬△同玉▲7三桂成で先手が勝っているようだ。(以下△7三同桂▲同飛成△7二歩▲6三桂△6一玉▲6二歩△5二玉▲5一桂成△4二玉▲4三銀△3一玉▲3四銀成△7三歩▲3三成銀。この時、後手から△2八銀~△3六桂~△5五角と成銀を抜く手はあるが先手が残っている)
確かに△5七銀成りよりは不成の方が優っているが、それが明暗を分けた一着とまでは言い難いのではないだろうか。
それと、遠山四段は
「5七に銀が成ったため、第4図以下▲7四歩△同歩▲同銀△7三歩▲6三歩成△同金左▲同銀成△同金▲6四歩△6二金▲6三金に△同金と取れずに△8二玉とかわさなければならなかった(その後は順当に寄せられたというニュアンス)」
しかし、△8二玉の方が普通の感覚だし、難解のように思える。実際、△8二玉▲6五桂の時△8五銀
いう手があり難解だった。
ネット解説の青野九段も
「△8五銀と飛車を取りに行っては勝てなかったのでしょうか。先手は桂を跳ねる前に▲4六歩が落ち着いた好手のように見えました。とはいえ本譜でもまだまだ先手が勝ちきるまでは容易ではありません」
と述べている。
実戦では、最終的に▲6六飛が決め手になり、△5七銀成が悔やまれる一着となった。
第1局は岩根女流二段が里見倉敷藤花の動き過ぎをうまく逆用し局面をリードしたが、里見倉敷藤花も角銀を巧みに屈伸し逆転。飛車を成り込んでそのまま寄せ切るかと思われたが、その寄せが変調。岩根女流二段もうまく凌ぎ、反撃、流れを引き寄せ、里見玉を追い詰め、仕留めた。(147手)
これで岩根女流二段は初タイトルまであと1勝。対戦成績も岩根女流の7勝4敗となった。
この対戦成績は、両者の実績から見ると、意外な感じ。戦型はすべて相振り飛車で、原因はその辺にあるのかもしれない。里見倉敷藤花は相振り飛車は得意じゃないような気がする。ネット中継などで彼女の将棋を目にすると、序中盤は誰と指しても互角以下のような気がする。
飛車先交換を早めにし、飛車が動き回るという印象がある。私見であるが、この2点はやや損な気がする。
第2局と第3局は、『囲碁・将棋ジャーナル』で遠山四段が解説していた。
彼の解説は聞きやすく、わかりやすい。しかし、二つの点で疑問を感じた。
第1図は先手の里見倉敷藤花が▲6五歩と角交換を挑んだところ。
遠山四段は
「機敏な動きで、主導権を握って、差し手争いに成功した感じ。
▲6五歩に△7七角成▲同桂でお互いに角を持ち合うと、先手陣に有効な角の打ち込み場所がない(7九に銀がいて8八に角を打てない)のに対して、後手陣には2二に角の打ち込みがあって角交換はしづらい。それで△4四角と角交換を避けたが、これでは気合負け」
しかし、▲6五歩△7七角成▲同桂のあと、△3二金と隙を埋めておくと、逆に7九の銀の扱いが難しい。不用意に動くと△8八角と打たれてしまう。『週刊将棋』の有吉九段の解説も同様だった。
ちなみに、ネット中継の解説の青野九段は
「▲6五歩は角交換を挑む、序盤の勝負手、交換した形はどちらが模様がよくなるかは非常に難しいところである。後手は角交換が、悪いと見れば角道を止めることになるが、それだとたぶん気合負けになる可能性がある」
だった。
第2図は里見倉敷藤花独特の飛車回り。第1局、第3局でも登場しているがうまくいったとは思えない。単純に考えれば手損。一応、2三への成り込みの先手であるが、普通に△2四歩と受けられ、後に△2五歩で▲6六飛(第3図)と追われるのでは、2手掛けて7六→6六と移動しただけになっている。
倉敷藤花も当然その点は承知してるはず。第1、第3局でもそれなりの狙いがあったようだ。
ただ、この第2局に限っては、すごく巧妙だったのかもしれない。
『週刊将棋』の解説によると、「6六の地点は通常では後手の角筋であるため、この位置に飛車を安定させることが難しい。しかし、岩根陣は2五歩-4四歩-3三桂を決めてしまったっために、6六の飛を追う手段がない。先手はこの後、左銀を繰り出し、金無双の弱点とされるコビンに狙いを定める」とある。
そう▲2六飛はこの後手の陣形を誘導したのではないだろうか。(2四の歩を突くには3三に桂をはねる必要があり、角は1三に上がることになる)
2点目の疑問は第4図。
この△5七銀成(第4図)を遠山四段は問題視していた。
「この5七の銀が成りか成らずで明暗が分かれた」と。
その訳は、
「第4図以下▲7四歩△同歩▲同銀△7三歩▲6三歩成△同金左▲同銀成△同金▲6四歩△6二金▲6三金と進んだが、この時△同金と取ると▲同歩成△同玉に▲6六飛(変化1図)がぴったりで後手陣が持たない。
もし△5七銀成(第4図)ではなく、△5七銀不成だったら変化1図の▲6六飛はなかった」
しかし、たとえ△5七銀不成として変化1図のように進んだとしても、▲6五桂(変化2図)で後手玉は寄っている。
以下△6四歩としても▲5三金△7二玉▲6四角で支えきれない……と締めようと思ったが、変化2図で単に△7二玉がなかなかしぶとい(手順に▲5三金を与えないだけ得なので当然と言えば当然)。
しかし、単に△7二玉でも、ちょっと乱暴かもしれないが▲6三金△同玉▲5三角成△7二玉▲7一馬△同玉▲7三桂成で先手が勝っているようだ。(以下△7三同桂▲同飛成△7二歩▲6三桂△6一玉▲6二歩△5二玉▲5一桂成△4二玉▲4三銀△3一玉▲3四銀成△7三歩▲3三成銀。この時、後手から△2八銀~△3六桂~△5五角と成銀を抜く手はあるが先手が残っている)
確かに△5七銀成りよりは不成の方が優っているが、それが明暗を分けた一着とまでは言い難いのではないだろうか。
それと、遠山四段は
「5七に銀が成ったため、第4図以下▲7四歩△同歩▲同銀△7三歩▲6三歩成△同金左▲同銀成△同金▲6四歩△6二金▲6三金に△同金と取れずに△8二玉とかわさなければならなかった(その後は順当に寄せられたというニュアンス)」
しかし、△8二玉の方が普通の感覚だし、難解のように思える。実際、△8二玉▲6五桂の時△8五銀
いう手があり難解だった。
ネット解説の青野九段も
「△8五銀と飛車を取りに行っては勝てなかったのでしょうか。先手は桂を跳ねる前に▲4六歩が落ち着いた好手のように見えました。とはいえ本譜でもまだまだ先手が勝ちきるまでは容易ではありません」
と述べている。
実戦では、最終的に▲6六飛が決め手になり、△5七銀成が悔やまれる一着となった。