カンボジア経済

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カンボジア中央銀行 為替市場で連続してドル売り介入

2021年10月13日 | 経済
 本年9月以降、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、為替市場に介入する目的で、金融機関を対象とした入札でドル売り・リエル買いを行っています。NBCでは、今年の為替レート(リエル対ドル)の動き(リエル安ドル高)に懸念を示し、リエルの購買力を維持して、物価安定・マクロ経済安定に繋げたいとしています。9月の介入は合計7回、総額1億7000万ドルでした。入札結果による為替レートは、4114リエル/ドル~4123リエル/ドルでした(9月6日2000万ドル:4122リエル・ドル、9月8日2000万ドル:4118、9月10日30000万ドル:4117、9月20日2000万ドル:4117、9月23日4000万ドル:4114、9月28日4121、9月30日2000万ドル:4123)。また、9月30日に、10月には総額2億ドル規模の入札を行うと発表しています。
 NBCが為替市場に介入するのは、昨年に引き続き2年連続です。しかし、2019年以前となると、9年ほどは実績がなく、2009年、2010年にリエルの対ドルレートが4200リエル/ドルを超えるリエル安となったところで介入していました。介入規模は、2009年29回で合計5400万ドル、2010年48回で合計4800万ドルとなっています。 昨年・今年は4100リエル/ドルを超えたところで介入を決定しており、若干早く感じますが、NBCでは、新型コロナの影響やドル金利の上昇もあって、新興国や周辺諸国の為替が不安定になる可能性が高まっていることに懸念を有しているものと見られます。
 日本が為替市場に介入したのは、カンボジアとは逆で円高を防ぐためでした。ドル買い介入は東日本大震災があった2011年が最後ですが、この年は合計で14兆2971億円をつぎ込んでいます。しかし、市場の力には抗しきれず、2011年9月には74円台まで円高が進みました。カンボジアの場合、高度にドル化されており、リエルの発行額も限定されているため、これまでは少額の介入で為替レートを適正化できています。しかし今年は、繰り返し介入しているにも関わらず、市場レートは4100リエル/ドル前後で大きく動いていません。今年の介入金額(3億7000万ドル)は、これまでで最大規模と見られますが、カンボジアは潤沢な外貨準備を保有(207億ドル)しており、介入のためのドルが不足するといった可能性は相当に低いものと見られます。
 NBCは、中央銀行デジタル通貨バコンを導入する等して、高度にドル化したカンボジアで自国通貨リエルの使用を促進しています。ドル建て取引が8割以上というドル化の中で、リエルの使用を促進するためにはリエル・ドルの為替レートの安定は欠くことのできないものであり、NBCの今後の動きを注視する必要があるものと見られます。
(写真は、プノンペン市内のガソリンスタンド。全量輸入に頼るガソリンは、リエル安になると値上がりすることとなる。10月4日撮影)


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