カンボジア経済

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カンボジアにおけるベトナムへの籾流失の実態

2016年02月24日 | 経済
 大阪大学経済学部経済・経営学科中川功一ゼミの阿部ちひろ氏、西岡広大氏、西澤建輝氏による論文「カンボジアにおけるベトナムへの籾流失の実態」が発表されました。この論文では、「なぜカンボジアの農村部ではベトナムへの籾の密輸出が行なわれ続けているのか」を明らかにするために、ベトナムとの国境を有する農村地域を中心としてその原因分析を行なっています。その結果、(1)国内精米所よりも密輸仲買人のほうが、農家や仲買人にとっては魅力的な売り先であるため、密輸仲買人へと籾を販売してしまうこと、(2)密輸仲買人への籾販売を続けていった結果として、農村全体の籾の供給地としての魅力が低下していってしまっていること、の2 点によってベトナムへと密輸出を続ける以外の選択肢をとれなくなっていっていることが明らかになったとしています。
 これまでカンボジアでは、貧困削減の観点からコメ産業に焦点を当てた政策が行なわれてきました。その結果として、2014年度には約930万トンもの籾が生産されるまでとなっています。このうちカンボジア国内消費は、55%程度であり、残りは他国に流出しています。カンボジアの統計上の精米輸出量は約40万トンであり、これは籾ベースで約6%程度でしかありません。約41%の籾は精米加工が施されないまま、隣国のタイやベトナムへと密輸出されてしまっており、大きな付加価値のロスが発生してしまっています。
 籾の密輸出問題に正面から取り組んだ意欲的な研究の成果です。カンボジアのコメ・セクターの基本情報も取りまとめられており貴重な論文となっています。
(写真は、カンボジア―ベトナム国境の一つであるプレックチャーク。本文とは関係ありません)

大阪大学経済学部中川功一ゼミのサイト
http://koichinakagawa.web.fc2.com/studentessay/16-6.pdf


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