プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

構造改革の矛先  社会保障予算の抑制と財源問題  

2007-10-16 18:53:47 | 政治経済
小泉政権後の約5年にわたる構造改革ビジョンは、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」で示されている。二宮厚美・神戸大学発達科学部教授は、「経済・財政一体改革」に続いて提示される「歳出・歳入一体改革」は、ギリシャ神話の「プロクルステスの寝台」だという。盗賊プロクルステスは、旅人を寝台に横たえて、その寸法より短ければ、その身丈を引き伸ばし、そこから足や頭がはみだせば、これを切り落としたという。この寝台の長さは、「骨太06」が最優先課題とした「経済・財政一体改革」すなわち多国籍大企業の成長・競争力の強化によって決められる。まず最初に「歳出」がベッドに横たえられる。ベッドの寸法から大きくはみでたのは、社会保障と自治体向け歳出である。さしずめ社会保障はベッドからはみ出した頭の部分であり、足の部分が自治体向け歳出である。頭と足は、プロクルステスのやり方と同じように、切り落とされる運命にある。国民からみれば、歳出で社会保障や自治体財政を削減されることは、自らの生存・生活のために生き血を流すことであり、歳入で消費税が増税されることは、生き血を吸い取られことである(二宮厚美「ポスト小泉構造改革と改憲志向のシナリオ」『ポリティーク12号』20061225)。 . . . 本文を読む

米原子力空母の母港化は世界の異常!  ブラックボックスの危険鮮明

2007-10-15 18:54:06 | 政治経済
来年8月に予定されている米原子力空母の横須賀母港化反対の運動が広がっている。10月8日に横浜市内で開かれた「ストップ!原子力空母 首都圏シンポジウム」には、首都圏を中心に1200人が集まった。横浜防衛施設局は、来年の入港に間に合わせるために8月10日、12号バース周辺を掘り下げる浚渫工事を強行着工した。浚渫工事の環境への影響はほとんど考慮されることなく、ただスケジュール優先で進められている。原子力空母の母港になるということは、原子炉が一年の半分首都圏の入り口である横須賀に停泊するということだ。大地震が起きて津波発生前の引き潮による原子力空母の座礁や、原子炉を冷却・管理するための海水や電力を供給できなくなる事態を想像しただけで空恐ろしい。発電用の原子炉なら曲がりなりにも、日本の行政の管轄下にある。しかし、アメリカの原子力船は、治外法権、まったくのブラックボックスのなかである。通常の放射能測定もままならないのだ。 . . . 本文を読む

「集団自決」の強制削除 安倍政権下の文科省役人の自作自演だった 審議会はフリーパス

2007-10-14 18:54:54 | 政治経済
検定意見の撤回と記述の見直し、回復を求める沖縄県民の声に対し、「皆さん方の思いをこれからも重く受けとめてまいりたい」という福田首相は狸爺か!首相が検討を指示したという渡海文科相は、「教科書の検定制度というのは、厳正また中立公平な立場で専門家に意見をお聞きするという制度でございまして、・・・」「例えば、この意見を撤回せよというふうに私が申し上げるということは、これはまさに政治的介入であります。」要するに「検定意見の撤回」はしないと言っている。これで、どうして沖縄の「皆さん方の思いを重くうけとめ」たことになるのか。私は、「集団自決」の強制削除の検定は、「厳正、中立公平」(?)な審議会がやったものとばかり思っていた。ところが、今回の事件は、文科省の常勤職員と初等中等教育局の自作自演であったことが、11日の衆院予算委員会での日本共産党の赤嶺政賢議員が行った質問で明らかになった。文科省役人=官僚は政府そのものである。政府が検定に介入しておいて、「私が申し上げるということは、これはまさに政治的介入であります」とは、よくも言えたものだ。政府が検定の誤りを認め、撤回しない限り沖縄県民もわれわれも絶対に納得できない(「しんぶん赤旗」10月13日)。 . . . 本文を読む

給油転用問題  「無料ガソリンスタンド」で給油した艦艇の行き先は自由

2007-10-13 18:39:39 | 政治経済
衆院予算委員会で、海上自衛隊の給油活動をめぐる本格論戦が始まった。議論の焦点のひとつが、いわゆる給油転用問題である。インド洋での自衛艦による給油活動は戦争ではない、アフガニスタン国内での武力行使とは違う、日本の石油確保のため必要だというのが、政府・与党の主張のようだ。そのために、海自による給油の行き先は、テロリストの捕捉や麻薬の押収を目的とする「海上阻止行動」で、アフガン国内の戦争にもイラクの戦争にも使われてない――転用はないという主張に一生懸命である。しかし、これほど滑稽な話はない。アフガニスタンは、地図でみればわかるように内陸国である。イランかパキスタンを横切らないとアラビア海にでることができない。そもそもテロリストの捕捉や麻薬の押収のために、なんで空母が必要なのか。アメリカ軍は、中東地域の戦争のために艦隊をインド洋・アラビア海、ペルシャ湾に派遣しているのだ。つまり、イラク作戦、アフガン作戦、海上阻止活動、この三つの活動は一体の任務で、どれかの作戦中に給油を使い切ったから他の活動と無関係というような話ではない。「無料ガソリンスタンド」で給油した艦艇の行き先は自由なのだ。 . . . 本文を読む

立川ビラ弾圧事件  自衛隊・情報保全隊と警察の共謀によるフレームアップ

2007-10-12 19:25:45 | 政治経済
自衛隊立川宿舎に「自衛隊のイラク派兵反対!」などと題したビラを投かんした市民団体メンバー3人が04年2月、住居侵入容疑で警視庁立川署に逮捕されたいわゆる「立川ビラ弾圧事件」。一審の無罪判決が二審の東京高裁判決で罰金10万―20万円の逆転有罪判決となった。それもその筈。本件は、自衛隊・情報保全隊と警察が、事件の2ヶ月前から共謀して、市民団体メンバーの逮捕を仕組んでいた国家権力によるフレームアップであったのだ。東京高裁は、司法の側から、国家権力に加担した。「しんぶん赤旗」が、10月12日付で自衛隊・東部方面情報保全隊の内部文書をもとに同隊が警察と共謀して、自衛隊宿舎にビラを投かんした市民団体メンバーの逮捕を仕組んでいたことを明らかにした。 . . . 本文を読む

自民幹部相次ぎ消費税増に言及  注目される民主党の動向 二つの聖域にメスを

2007-10-11 17:35:43 | 政治経済
自民党の谷垣禎一政調会長は9日午前の衆院予算委員会の質問の中で、09年度に実施する基礎年金の国庫負担引き上げの財源について「個人的には安定した財源である消費税でやるしかないと思う。その場合は社会保障目的税であるということを明確にしてやるべきだ」と述べた。伊吹文明幹事長も3日の衆院代表質問で「消費税で賄うのが穏当な方法ではないか」と発言。10日には、自民党・財政改革研究会(財革研)を約1年4カ月ぶりに再開した。会長に就任した与謝野馨前官房長官はあいさつで「税制改革や社会保障の給付と負担の問題について、財政の避けがたい現実を直視しながら取り組む必要がある」と述べ、消費税率引き上げを視野に入れた議論を進める考えを示した。このように自民党幹部が相次いで消費税引き上げに言及している(「毎日」10月10日19時15分配信 )。一方民主党は、いまのところ与党との税制改革協議を拒否し、消費税は衆院選までは5%で据え置くとのことである。衆院選後は、どうなるのか。民主党の反構造改革路線は、いつまで持ちこたえられるのか。 . . . 本文を読む

民主党 NHK経営委員長の発言でヒアリング 安倍「お友達」は不適格人事

2007-10-10 19:00:08 | 政治経済
民主党は10日、同党会議にNHKの古森重隆・経営委員長らを呼び、ヒアリングを行った。古森委員長が9月の経営委で選挙期間中の番組に注意するようNHK執行部に求めたことが取り上げられ、同党議員から「経営委には番組内容まで踏み込む権限はないのでは」「社会の公器に対する認識が足りない」と批判が噴出した(「毎日」10月10日12時26分配信 )。9月25日のNHK経営委員会で、古森委員長がNHK執行部がまとめた5ヵ年計画を却下したときには、「朝日」は社説(9月27日付)で、「NHKの経営委員会もなかなかやるじゃないか」と新自由主義改革をなんでももてはやす同社らしく、古森氏の決定を快挙といわんばかりに称えた。しかし、その「朝日」も古森氏の「剛腕」ぶりを警戒する声も出始めた、といわざるをえなくなった(「朝日」10月10日)。典型的な安倍「お友達」人事で、公共放送の使命の何たるかも理解できない古森氏は、NHK経営委員長不適格者であることは明らかだ。 . . . 本文を読む

新テロ特措法案  アメリカの報復戦争支援の核心は変わらず

2007-10-09 18:55:14 | 政治経済
政府・与党は現行のテロ特措法(11月1日失効)の延長をあきらめ、「新テロ特措法」案を国会に提出しようとしている。政府・与党が、テロ特措法の「改正」ではなく新法案で派兵を継続しようとするのは、テロ特措法の期限である11月1日を過ぎると、同法そのものが失効してしまい、その「改正」案の審議もできなくなるからである。新法であれば、参院で否決されても、衆院で再議決も可能である。民主党などを取り込むために、与党が力を注いでいるのが世論対策である。90年代はじめの「国際責任」「国際貢献」論がまたぞろ持ち出されようとしているが、「人的貢献」を軍事に結びつける発想そのものの妥当性が問われている。 . . . 本文を読む

「兄の分も生きる」   しめやかにベトさんの葬儀

2007-10-08 18:48:06 | トピックス
ベトナム戦争中に米軍がまいた枯れ葉剤の影響とみられる結合双生児の兄として生まれたグエン・ベトさんの葬儀が7日、ベトさんが生前、寝たきりの生活を続けていたホーチミン市のツズー病院でしめやかに営まれた。葬儀には弟ドクさん夫妻や分離手術の執刀医、病院の患者が参列。ドクさんは葬儀が始まると、ベトさんの遺影を見つめて涙を流し、「兄の分も頑張って生きたい」と気丈に話した(「しんぶん赤旗」10月8日)。ベトさんは、枯葉剤の被害の『生き証人』として、分離手術をしてから来年で20年になるのを前についに力尽きた。ベトナム反戦運動を知る世代にとって深い悲しみの気持ちは、みな共通だろう。そして、あらためて枯れ葉剤という幾世代にもわたって災厄をもたらす非人道兵器を大量にもちいたアメリカへの強い憤りの気持ちを感じていることだろう。 . . . 本文を読む

最低賃金2ケタアップ  情勢にあわせた労働組合の力量アップを!

2007-10-07 20:33:59 | 政治経済
新しい地域別最低賃金額が決まった。まじめに働いても生活保護水準の収入さえ得られないワーキングプア(働く貧困層)が広がるなか、主要国で最低水準となっている「最低賃金」の引き上げが焦眉の課題となっていた。貧困と格差拡大に反対する国民・労働者のたたかいがたかまるなかで、今年は従来とは違う引き上げが期待された。今年の地域別最低賃金は、東京の時間額20円アップをはじめ、30都道府県で10円以上の引き上げなど平均14円、2ケタアップが実現した。ここ近年は最高でも6円程度だったのと比べると、二ケタの大台に乗せたことは一つの前進にちがいない(「しんぶん赤旗」10月4日)。しかし、全労連や連合が一致して要求した、時給千円以上の引き上げには、はるかに及ばない。日本の労働者階級と資本家階級の力関係は、いまのところ残念ながらその程度なのだ。ここ何年来、日本にはまともなストライキの実施件数の統計すら存在しない。 . . . 本文を読む

「政権とればISAF参加」 小沢代表独特の解釈改憲をそのまま認めるわけにはいかない

2007-10-06 20:11:17 | 政治経済
民主党の小沢一郎代表は党機関紙「プレス民主」5日付で、アフガニスタンで治安活動をする国際治安支援部隊(ISAF)に関し、「ISAFは憲法に抵触しないので、政権を担い、外交・安保政策を決定する立場になれば、参加を実現したいと考えています」と語った(「しんぶん赤旗」10月6日)。ISAFは「国連の決議によってオーソライズ(承認)されたもの」であり、「国連の平和活動に積極的に参加することは、たとえ結果的に武力の行使を含むものであっても憲法に抵触しない、むしろ憲法の理念に合致する」と小沢氏独特の憲法解釈を披瀝している。この論議自体は、90年代改憲論の蒸し返しであるが、改憲派のまきかえしの一変種であることに変わりはない。小沢氏独特の解釈改憲をそのまま認めるわけにはいかないのだ。 . . . 本文を読む

「構造改革」と「旧い自民党」  新自由主義改革の日本的特徴

2007-10-05 17:04:43 | 政治経済
福田内閣発足後、初めてとなる経済財政諮問会議(議長・福田康夫首相)が4日に開かれ、御手洗冨士夫キヤノン会長(日本経団連会長)らの四人の民間議員は「改革の継続と安定した成長のために」とした提言を提出した。小泉政権以来、経済財政諮問会議の民間議員が財界の階級的利益をストレートに政府の「構造改革」政策へ反映させる仕組みがつくられた。福田政権でもこの仕組みに変更はない。日本では長い間、戦後高度成長政策のもと、政財官一体となって国家が経済成長のために、長期的・系統的な市場介入と指導を行い、国家財政をつぎ込むとともに、大企業周辺の中小企業や地方の零細企業、農村への利益誘導を行う日本型開発主義国家が形成された。欧米の新自由主義改革の敵が、福祉国家であったのに対し、日本の「構造改革」=「新自由主義改革」の敵は政財官癒着の既得権益=日本型開発主義国家であった。政財官癒着の既得権益に閉塞感をもった国民は、まんまと小泉「構造改革」の罠にはまった。しかし、小泉「構造改革」によって、日本型開発主義国家の中心的要素であった企業社会統合や自民党型公共事業や補助金のバラマキ政治も破壊された。貧困と格差が拡大し、地方は疲弊した。 . . . 本文を読む

6カ国協議合意文書   問題を抱えながらもまた一歩前進

2007-10-04 18:29:40 | 政治経済
北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の議長、武大偉・中国外務次官は10月3日、先に北京で行われた協議での合意文書を発表した。北朝鮮の三つの核施設の無能力化と核計画の申告を12月31日までに行うことなど、非核化に向けた「次の段階」(第2段階)の措置の具体的な内容が書かれている。ただ、各国間の合意づくりを優先したため、不明確な点が残ったことも確かである。申告対象となる核計画では、核兵器や抽出済みプルトニウム、ウラン濃縮への言及はなく、「すべての核計画の完全かつ正確な申告」という表現にとどまった。とは言え、北朝鮮の核施設の無能力化と核計画の申告が合意どおりに年内に履行されれば、朝鮮半島非核化の流れに大きなはずみがつく重要な一歩となることは、間違いない。一方で6カ国協議のなかで、北朝鮮の非核化や米朝関係正常化などが徐々に履行されているのに比べて、日朝関係が立ち遅れていることは否めない(「しんぶん赤旗」10月4日)。 . . . 本文を読む

高齢者医療  資本主義経済に役立たない老人を「改革」の名で切り捨てる「朝日」社説

2007-10-03 19:13:05 | 政治経済
福田康夫首相は10月1日、衆参両院の本会議で、就任後初の所信表明演説をおこなった。参院選でのきびしい審判を反映し、内閣の基本方針として、「自立と共生」をかかげる一方、「希望と安心の国づくり」の推進を強調。高齢者医療制度の検討、格差への対応や若者の雇用対策、子育て支援などを列挙した。「若者に希望、お年寄りに安心を」というなら、若者から希望を奪い、お年寄りから安心を奪ったのは何だったのか具体的な検証と処方箋が必要だが、具体的中身はなにもなかった。しかし、言葉の上に過ぎないとしても、「生活者の視点」「国民の信頼」などをくり返さざるを得なかったのは、参院選の結果が政治を動かしはじめたということだろう。ところが、本日(10月3日)付「朝日」社説は、自民党・公明党間で政権合意した高齢者医療の負担増凍結について、「負担凍結は目くらましだ」、「新しい制度(高齢者医療制度)と負担増は、少子高齢化が進めば、若い世代の負担が重くなり、制度が立ちゆかなくなるとして設けられた」。「一律に弱者とは言えない高齢者の負担増の凍結は、育児や住宅ローンに苦しむ若い世代の反発を招くだろう」と批判。「高齢者が安心して暮らせる仕組み」がほしいなら、「例えば、福祉目的の消費税など新たな財源に正面から取り組む」のが「政権与党の責任である」と異論を唱えている。「朝日新聞」の「構造改革」信奉の行き着く先が、いかに財界主流(多国籍大企業)の階級的利益を代弁する ものとならざるをえないかこれほどわかりやすく示すものはない。 . . . 本文を読む

「集団自決」検定見直し 検定意見の撤回だけでなく検定制度の民主化を要求する

2007-10-02 19:00:45 | 政治経済
沖縄戦で日本軍が住民に「集団自決」を強制したとの記述が教科書検定で削除された問題で、文部科学省は、記述の修正が可能か、検討を始めた。検定意見の撤回を求めて9月29日に開かれた沖縄県民大会に11万人が参加したことから、町村官房長官が1日、渡海文科相に対応を指示。渡海氏も、検定制度の枠内で可能な対応を検討するよう省内に指示した(「朝日」10月01日)。実教出版の高校日本史を執筆した一人で、歴史教育者協議会委員長の石山久男さんは「合理的な根拠のない検定意見だったので、見直しは当然だと思う。今後、教科書会社も訂正申請を出すと思う」と話した(「毎日」10月2日 12時28分)。しかし、今回の問題の本質は、安倍前首相の意向を受けて「(検定に)政治的介入」があり、沖縄戦における「集団自決」への日本軍の関与を教科書から削除させたことである。すなわち、検定意見そのものに問題があったわけであるから、審議のやり直し、検定意見の撤回が筋である。明らかな誤りや新たな社会情勢の変化などを受けて、科書会社が記述内容を改めるために自主的に訂正申請をするという話ではない。問題の根本原因が検定制度の構造的欠陥、特にきわめて非民主的な強権性と密室性にあることを改めて問題にしなければならない。 . . . 本文を読む