プロメテウスの政治経済コラム

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最低賃金2ケタアップ  情勢にあわせた労働組合の力量アップを!

2007-10-07 20:33:59 | 政治経済
今年の最低賃金改定の審議は、貧困と格差をなくせと求める世論と運動が広がるなか、政府からも「従来の延長線上ではない底上げ」をいうなかで行われた。しかし、政府主導だから、自ずから限界がある。安倍前首相は、口では「40年ぶりの改正」や「生活保護水準との整合性」には言及するものの、抜本的引き上げの要求にはまったくこたえようとしなかった(「しんぶん赤旗」2007年2月16日)。
世界で広く採用されている国際基準では、平均的所得の五割以下を貧困世帯とし、欧州諸国では最低賃金は労働者の平均的所得の四割台、五割台が普通で、これをさらに引き上げ、六割をめざしている。日本の改訂前現行の最低賃金は、労働者の平均的所得の32%に過ぎない。時給にしてわずか平均673円。フルタイムで働いても月12万円程度にしかならない。こんな低い賃金では一人前の生活は到底不可能であり、多くの労働者は掛け持ち労働を強いられる状況である(「しんぶん赤旗」同上)。

年金問題の混乱で継続審議になっている最低賃金法改正案が、臨時国会で審議さる。改正案では、罰則強化などと併せて、地域別最賃の決定にあたって「生活保護との整合性に配慮する」ことが予定されている。生活保護自体が、憲法二五条の生存権を保障する制度として確立していないなかでの「整合性」であるから、まことに心許ない。「生計費」=ナショナルミニマムを原則とし、全国一律の制度にするなど抜本改正が必要であるが、政府案はほど遠い内容である。日本共産党は、労働者が求める時給千円以上(労働者の平均的所得のおおむね50%)への引き上げを打ち出すとともに、生計費を決定基準とし、どこでもだれもが適用される全国一律の制度や同時に中小企業への助成措置を提案している。民主党も時給千円を掲げて、生計費を基準にすえることや、「全国最低賃金」を設け、それを超える額の「各地域最低賃金」を導入することなどを掲げている。生計費を基準とし、全国的な最低賃金の土台を築き、大幅引き上げを行うなどの点で、労働組合や各政党の間で共通の方向性が見いだせる条件が生まれつつある。参院選結果がつくりだした国会情勢を生かして最低賃金法案を抜本改正できるかどうかは、今後の労働者・国民のたたかいにかかっている(「しんぶん赤旗」10月4日)。

財界、大企業の「構造改革」攻撃に立ち向かうためには、本来、労働組合が労働者・国民のたたかいの先頭に立たなければならない。しかし、日本の労働組合は依然として、互いに競争関係にある個別の資本・企業を単位とした企業(会社)別組合が主要な部分を占めている。このような組織形態は、もともと労働者間の競争を排除し、団結を目的とする労働組合のあり方と基本的に相容れないのではないか。国際労働問題研究者の宮前忠夫さんは、企業別組合は、マルクスやエンゲルスの「想定外」あるいは「論外」の組織形態であり、知る由もなかった組織形態であるという。それだけに、当時の職別組合(運動)を踏まえて構築されたマルクスとエンゲルスの「労働組合論」が企業別組合を主流としてきた日本の労働組合論にそのまま適用できるのかどうか改めて検討が必要だという(宮前忠夫『新訳・新解説 マルクス・エンゲルスの労働組合論』共同企画ヴォーロ2007)。

グローバル化資本主義のもと、搾取と収奪を強化する多国籍資本・企業に立ち向かうためには、労働者は企業を超えて、国境を越えて団結しなければならない。企業別労働組合は、企業間競争にもろに巻き込まれて、企業の維持・存続と発展のために、労働強化を受け入れ、変形労働、裁量労働制も認め、サービス残業も黙認し、非正規労働者やパートタイム労働者への置き換えや低賃金を黙認する結果になりがちである。労働者・労働組合はグローバル化の速度と規模に見合った形でその「社会的力」つまり「団結した多数」を強化する組織形態をつくりださなければならないのだ。 「万国の労働者、団結せよ!」のスローガンは、まさに資本主義の今日的段階にふさわしい言葉である。

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