プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

異常な生活保護バッシング  生活保護以外まともな生活保障がない日本の社会保障制度

2012-05-29 21:17:23 | 政治経済

お笑いタレントの実家の母親が生活保護を受給していたことを一部メディアや自民党世耕弘成議員、片山さつき議員らが問題視したことをきっかけに、異常な生活保護制度と利用者に対するバッシングが起きている。そして、かねてから生活保護制度の大幅改悪を狙っていた政府・与党と自民党は、この機に乗じて生活保護費の大幅削減を進めようとしている。日本の社会保障の法律体系のなかで、最低生活を保障するという言葉がはっきり入っているのは生活保護法だけである。国民の最低生活を保障する「最後の砦」である生活保護制度を破壊するということは、もはや、日本にはまともな社会保障がひとつも存在しないということを意味する。

 

人気お笑いタレントの母親が生活保護を受給していることを女性週刊誌が報じたことを契機に生活保護に対する異常なバッシングが続いている。マスコミは、大騒ぎをして便乗報道合戦を繰り広げている。「不正受給が横行している」、「働くより生活保護をもらった方が楽で得」「不良外国人が日本の制度を壊す」、果ては視聴者から自分の知っている生活保護受給者の行状についての「通報」を募る番組まである。

一連の報道の特徴は、なぜ扶養が生活保護制度上保護の要件とされていないのかという点についての正確な理解を欠いたまま、たまたま現在、高額所得者となった息子のケースをあげつらい、あたかも制度全般や制度利用者全般に問題があるかのごとき報道を繰り返していることである

 

今回のタレントバッシングの中心となった世耕弘成議員と片山さつき議員は、自民党の「生活保護に関するプロジェクトチーム」の座長とメンバーである。同党が2012年4月9日に発表した生活保護制度に関する政策は、①生活保護給付水準の10%引き下げ、②自治体による医療機関の指定、重複処方の厳格なチェック、ジェネリック薬の使用義務の法制化などによる医療費の抑制、③食費や被服費などの生活扶助、住宅扶助、教育扶助等の現物給付化、④稼働層を対象とした生活保護期間「有期制」の導入などが並び、憲法25条に基づき、住民の生存権を保障する最後のセイフティーネットとしての生活保護制度を大幅改悪するものである

 


日本の社会保障の法律体系のなかで、最低生活を保障するという言葉がはっきり入っているのは生活保護法だけである。年金制度にも入っておらず、失業保険、雇用保険にもなく、傷病手当の目的にもそうはかかれていない。これらは「所得保障」であって「生活保障」ではないといわれる。つまり、手に入らなくなった従来の所得の何割かを補填するだけで、その人の最低生活を保障するというものではない。だから、普段低い賃金の人は、その何割かを限られた期間もらっても、それでとても暮らしていけない

生活保護だけが「保障する」制度なのだが、そのかわり「受けさせまい」とさまざまな圧力が加えられる。
そして、その「最後の砦」である生活保護制度も今、まさに掘り崩されようとしているのである。

 

いま生活保護制度で最大の問題は、必要な人に手が届いていないことである。全国各地で実際に起きていることは、生活が困窮している人に対して「まだ働けるでしょう」などと申請すら受け付けない事態となっていることだ。

今年1月、札幌・白石区のマンションで姉妹が遺体で発見された。亡くなっていたのは42歳の姉と、知的障害のある40歳の妹だった。姉さんが働いていた滝川のデパートが数年前に倒産。滝川では暮らしていけなくなった姉は札幌に出て働き始め、それから数年後の今年、遺体で発見されたのである。発表された姉の死因は病死。突然の脳内出血らしい。この背景には、食料にも事欠くほどの生活状況があったのだろう。一方、妹は凍死。二人の住んでいた部屋の電気・ガスは止められ、暖房器具のガスストーブが使えなかったことからの凍死のようだ。マイナス10度を平気で下回る冬の北海道で暖房がないということは、即「凍死」を意味する。発見された遺体は、服をたくさん着込んだ状態だったという。知的障害の妹を支えながら働いてきた姉さんが亡くなり、あとを追うように妹も力尽きてしまった。どれほど寒く、心細かったか。 

二人は主に妹さんの障害年金を頼りに暮らしていたようだが、とても最低生活を保障するような額ではない。日本の社会保障制度の最低生活の「保障」は、大変狭苦しく押し込められた生活保護しかなく、それ以外のところは「自分でがんばりなさい、困ったときにある程度補填しますよ」のレベルなのだ。姉妹に対して、3度も相談を受けた白石区は、二人が住んでいたマンションの家賃は、生活保護で定められた住宅扶助の額より高い、もっと頑張って仕事を探さないと生活保護は受けられないと、姉に対して「私は生活保護を受けられないのだ」と思わせた。

 

生活保護を受ける資格のある生活水準の人びとが実際に受給している割合は、欧州諸国7―8割に比べ日本はわずか1―2割である。日本はいま病気や失業すれば誰もが一気に無収入になりかねない「滑り台」社会である。憲法25条で保障された生存権を破壊する改悪は、相次ぐ餓死・孤立死(今年に入って表面化しただけで23人が亡くなっている)を生むだけだ。




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1 コメント

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マスゴミは報道しない真実 (先進国ならあり得ない!!)
2014-11-07 20:38:26
こういう真実をマスゴミは報道しない。
日本の司法、福祉は中世レベル!
生活保護バッシングしてるのは情報弱者だけだ。
まともな先進国なら若者だって堂々と生活保護申請する。
バッシングされるべきは生活保護受給者ではなく
受給しなきゃならない国民産み出した国だ!!
生活保護受給者が自殺するしかないなんてゴミ国家日本だけだ。
最低最悪の人権後進国だ!
消費税あんだけとっても福祉に全く回らない!
消費税高い国は成人するまで教育も生活も保障されている!
スクールバスから病院、子どもの食事すら無料だよ?
最下層の子どもでも腹一杯食べられるし、虐待されたら助けてくれる。
好きな大学だって行ける。
失業しても最先端の技術無料で会得出来る。
消費税高い国は国民が自分の税金どう使われるかパソコンでチェック出来る。
ちなみにアメリカには消費税ない。
アメリカの悪い所ばかりマネしてる日本が
税金だけヨーロッパのマネする事がおかしい!!
マネするならちゃんと社会保障に回せ!!
日本経済回らないのは
やり直し効かない日本の制度と最下層から抜け出せない構造と搾取階級崇めたてる異常拝金主義が問題でしょ?
日本は中世のレベルで止まったまま!!
ケースワーカーが生活保護受給者に暴言吐くなんて先進国じゃ人権問題だ。
本当に衰退するだけのゴミ国家日本!!

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