プロメテウスの政治経済コラム

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台湾海峡への中国軍機大量出動  余裕しゃくしゃくの中国 内心びくびくの台湾

2021-10-08 22:41:34 | 政治経済

 10月1日(中国国慶節当日)から10月4日まで、合計150機(4日は過去最多の56機)の人民解放軍の空海軍機が台湾南西防空識別圏に進入した(https://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2021/1400.html)。これに対し、日本のマスメディアの主流(米国戦略追随勢力)は台湾情勢が緊迫、米中対決による「台湾有事」が心配だという声が圧倒的である。
 しかし、私は、米欧豪日など世界の主要国が「一つの中国」原則=中国と台湾という2つの国、2つの中国があるという立場を決して取らず、中国(中華人民共和国、共産党政権)か台湾(中華民国、国民党もしくは民進党などの政権)かは、どちらか内戦で勝った方(もしはく中台の協議で作られる統一中国)だけを中国として認めます、という立場=を堅持するかぎり「台湾有事」は中国国内の紛争にすぎないのだからどうぞご勝手にということで余り心配していない。現実は、米欧豪日のすべてが中国(中華人民共和国、共産党政権)とだけ国交を持ち、台湾(中華民国)とだけ国交を持つ国は一部の途上諸国だけで(中華民国を正式に国家として承認している国は15ヶ国)、しかもしだいに減っている(https://tanakanews.com/211008taiwan.htm)。

 確かに、米国は最近でも豪州と英国を誘って中国包囲網のための新たな軍事同盟AUKUSを結成したり、日本の自衛隊も動員して10月2日から3日間、米空母レーガン号、カール・ビンセン号及び英空母エリザベス号とともに沖縄西南海域で合同演習を行い、中国包囲網を見せつけた(訓練には、オランダ、カナダ、ニュージーランドも参加した)。こうして米国が同盟国諸国を従えて、中国―台湾問題に介入するのは、19世紀から20世紀前半にかけて欧米帝国主義諸国が清国中に租界を設置し、脱亜入欧のこま生意気な大日本帝国が侵略戦争まで仕掛けた「残忍貪欲な獣」の振る舞いが今も続いているということである。しかし現在の中国は、当時の清国ではない。米空母がバシー海峡(台湾の東南方)を通過して南海(南シナ海)に進入して挑発を行うとき、人民解放軍機が大規模に出動して「熱烈歓迎」を行っている。「目には目を、歯には歯を」であり、アメリカ等の軍事エスカレーションで中国が怖じ気づくことはあり得ず、「とことんお付き合いします」ということである。のさばっているかに見える「残忍貪欲な獣」の内実は「見かけ倒し」にすぎないということを中国はよく知っている。

 中国と台湾との対立は、要するに、1946年からの第二次国共内戦の決着が未だついていないということである。1949年、毛沢東は台湾に逃げた蒋介石を一気に制圧する予定であった。ところが、1950年朝鮮戦争が勃発し、その後の冷戦体制下で米国の台湾支援もあって国共内戦の決着をつけないまま今日に至ったのである。中国からすれば、これは国共内戦なのだからどのように決着をつけるかは、外部勢力がとやかく干渉すべき問題ではないということだ。

 「一つの中国」原則にたち、国共内戦の道理を認める限り、後ろ盾としての米国がいくら中国包囲網を煽っても、相対的に強くなった中国が台湾を武力統一するようなことになっても、欧米諸国や日本は傍観し、結果を容認するほかない。台湾を支援したいなら、武器輸出や議員団派遣でなく国交を樹立すれば良いのだが(中国とは断交)、そんな展開にはならない。なれない。この論理を理解している習近平は、余裕しゃくしゃく、戦闘機をどんどん台湾の近くに飛ばしている。日本も豪州も、欧州も米国の中国敵視政策に乗せられ台湾支援の干渉を続けているが、内心びくびくしているのは台湾である。日本も豪州も、欧州も米国も、だれも台湾を助けない。中国敵視政策は、欧米諸国や日本の軍産複合体の儲けを保証するだけである。


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