作家の小田実さんが30日、逝去された。少し古い世代には、「ベトナムに平和を!市民連合」(ベ平連)の小田さんの活動を忘れられない。小田さんはその後も、阪神大震災の被災者救援や最近では、憲法を守る「九条の会」などで、いつも市民ととともに先頭に立ち、社会にかかわっていくという姿勢を貫いてきた。ベ平連以来42年、歩みをともにしてきた哲学者の鶴見俊輔(「9条の会」でも小田さんとともに共同呼びかけ人の一人)さんは、「彼と旅をしたことは私の光栄である。これからも共同の旅はつづく」と追悼の言葉を述べている(「朝日新聞」7月31日)。小田さんは、上田耕一郎さんとの対談で「大阪で大空襲を体験したことが私の原点です」と語っている(上田耕一郎『人生の同行者』新日本出版社2006)。
. . . 本文を読む
大方の予想通り、昨日の参院選で自民党は歴史的大敗をした。しかし、安倍首相は「私の国づくりはスタートしたばかり。これからも首相として責任を果たしたい」と述べ、いち早く、政権にとどまる意向を表明した。ここまでは、7月26日のブログ(http://blog.goo.ne.jp/e-hori/e/98002a4287de8c7af62a2a2343e7377b)で指摘した通りである(もちろん政局は、一寸先は闇といわれるように今後の展開は予想できないが・・・)。安倍政権は、支配階級の15年に及ぶ軍事大国化への試行錯誤と実践の上に最後のバッターとして、改憲オタクの特性を買われて登場した。簡単に辞めないし、辞めさせられないのだ。 . . . 本文を読む
日本では、立候補の届出をして選挙管理委員会から「選挙の七つ道具」をもらい、これを掲げないと選挙運動ができない。日本の公職選挙法は、俗に「べからず選挙法」といわれるように、諸外国に例をみない、こと細かな規制をしている。本来、原則として自由であるはずの選挙運動をまずもって包括的に禁止し、特定の選挙運動方法について限定的に解除する方式をとっているからである。天皇制国家のもとでの選挙法が、基本的にそのまま踏襲されているのだ。企業や団体のぐるみ選挙を許し、一般の人たちの政治・選挙への主体的参加を妨げる要因となっていることは間違いない(小沢隆一・小松 浩他『ここがヘンだよ 日本の選挙』学習の友社2007)。
. . . 本文を読む
明日は、参院選の投票日である。暮らしの問題、平和の問題で安倍政権の暴走に歯止めをかけることが出来るかどうか重要な選挙だと思う。官邸や自民党筋は、「参院選は基本的には政権選択の選挙ではない」などと今度の選挙の重みを殊更、低めようと躍起になっている。しかし、安倍政権の国会運営の暴走を見れば明らかなように、小泉政権が郵政民営化選挙で圧勝した“遺産”に乗っかっているだけで、教基法改悪にしても、国民投票法案にしても、与野党議席がもう少し伯仲しておれば、安倍の強行突破は、こんなに容易ではなかったと思う。国民世論と国会議席のあり方があまりにもかけ離れているのだ。3年に一度の定期的な参院選であるが、今度は衆院解散に追い込めるかどうか、まさしく政権選択の選挙である。 . . . 本文を読む
マスメディアによってもたらされる情報が世間の常識、世論形成に大きな影響力を持つことは言うまでもない。とりわけ選挙のときのマスコミの報道は直ちに投票行動に大きな影響を与える。そして、現段階での世論に最も大きな影響力をもつのはテレビである。元朝日新聞編集委員・本多勝一さんの『NHK受信料を拒否して40年 貧困なる精神U集』(金曜日2007)が最近出版された。少し古い世代の人びとは、本多さんの『NHK受信料拒否の論理』(現在は絶版になっているとのこと)を懐かしく思い出すことだろう。本多さんは、40年たってもNHKの性格は、そのニュース報道に端的に現れているように少しも変わっていないという。現政権の広報機関でしかない性格は、NHKの戦前からの伝統である。 . . . 本文を読む
マスコミの見通しでは、参院選は29日に投開票を迎えるが、与党への逆風は収まらず、与党過半数割れが現実味を帯びてきたようだ。改憲問題は、参院選の争点としては、安倍首相の当初の意気込みにかかわらず、回避されたまま終わりそうである。しかし、改憲問題は今後数年にわたって、日本政治の最大の焦点であり、参院選の結果は、改憲問題の今後のスケジュールに決定的な影響を及ぼすことは間違いない。私たちは、安倍政権が支配階級が切望する9条改憲を真正面から掲げて登場した最初で、おそらくは当分はでない政権であることを忘れてはならない(渡辺 治『安倍政権論』旬報社2007)。 . . . 本文を読む
日本農業の衰退と荒廃が続いている。農村部では、民主党のマニフェスト「戸別所得補償制度」が人気らしい。財界と自民党はこれをバラまきと攻撃している。確かに、農産物の全面自由化を前提にした民主党の「戸別所得補償制度」では、際限のない所得保障に陥るだけだろう。「日本の農業 自民党なら大丈夫」と宣伝する自民党はどうか。WTO(世界貿易機関)農業協定やFTA(自由貿易協定)交渉を当然の前提とする自民党農政では、やはり日本農業の衰退と荒廃に歯止めをかけることが難しい。07参院選を機会に日本農業をこのまま衰退にまかせていいのかどうか国民的議論が是非とも必要だと考える。WTO協定、メキシコ、フィリピンFTAに日本共産党以外のすべての党が賛成した。 . . . 本文を読む
柴田昌平 監督の長編ドキュメンタリー映画「ひめゆり」を観た。舞台演出家の宮本亜門さんは、次のような感想を寄せている。「私の一生のお願いです。『ひめゆり』を観てください。出来れば世界中の人に観てほしいのです。次の世代に伝えてほしい、現実を感じてほしい。心がここに詰まっているからです」。ひめゆり学徒生存者で映画にも出演した本村つるさんは、「戦後、ひめゆりを題材に小説や映画が数多く世の中に出ましたが、それらのほとんどがフィクションです。実は、私たちはそれらが出るたびに、落胆し、憤慨していました。今回の映画ではひめゆり学徒生存者が生の声で当時の様子を鮮明に語っています。この映画は、生き残った者の真実の叫びであり、亡くなった友への心の奥底からの鎮魂の思いを綴ったものです」とのメッセージを寄せている。22人の生存者が自分自身の言葉でそれぞれの体験を淡々と語る。そこから、なにを汲みとるか。私が何よりも思ったのは、「集団自決」への軍の関与をいとも簡単に削除されたときの沖縄の人々の怒りを通り越した情けなさ、哀しみであった。 . . . 本文を読む
「生活保護」が機能していないのは、「闇の北九州方式」(“ヤミ北”)で有名な北九州市だけではなさそうだ。厚労省の直近の調査で、2005年には82人(男性70人、女性12人)が餓死した。04年は、71人(男性五17人、女性14人)、03年には97人(男性77人、女性20人)が餓死した。調査は死亡診断書に「餓死」と記されたものを集計したものであり、餓死状態で発見されたさい、死亡診断者に別の病名がつけられた場合もあり、実態はさらに多いとみられ、「厚労省調査の数字は氷山の一角」と研究者は指摘している(「しんぶん赤旗」7月23日)。安倍首相は、街頭演説で「改革か逆行か。成長か停滞か」などと呑気なことを叫んでいるが、日本共産党の「ストップ貧困」が今まさに切実である。
. . . 本文を読む
日本共産党の志位和夫委員長は20日、遊説先の仙台市内で記者会見し、住民税増税問題が参院選の重大争点に浮上するなか、19日の新聞各紙に折り込まれた政府広報「あしたのニッポン」第二号が、「税源移譲・定率減税について」と題して、増税への批判に対する言い訳を掲載していることについて、「ウソだらけだ」ときびしく批判し、「五つの大ウソ」を指摘した(「しんぶん赤旗」7月21日)。参院選の投票を控えて言い訳をしたようだが、与党にとっては、今回の「税源移譲・定率減税廃止」は2003年12月の「平成16年度税制改正大綱」で既に決めていたことを実行したまでである。小泉政権後に消費税を増税することも既定路線なのだ。民主党も消費税増税について基本的に容認の立場である。庶民増税を阻止したければ、国会の勢力図がひっくり返るぐらいに共産党が伸びないとまず無理だろう。
. . . 本文を読む
「塩崎官房長官の政党支部と後援会が松山市の同じ場所に事務所を置き、05年の計約2100万円の事務所費のうち約1330万円の使途がわからないと、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が22日付の日曜版で報じることが分かった」(asahi.com 2007年7月21日00:04 )。「安倍政権ナンバー2の塩崎官房長官(56)にも事務所費疑惑が浮上した。塩崎長官の政治団体は地元・松山にあるビルのワンフロアを所在地としているが、その事務所費が6年間で1億3470万円に及ぶ。そこの家賃は6年で1440万円で、残りはどこに消えたのか、と疑われている。相次ぐ閣僚の事務所費疑惑にもどこ吹く風だった官邸のスポークスマン、果たして涼しい顔でいられるか」(gendai. net 2007年07月20日)。キヤノンのワーキングプアや松下の偽装請負、トヨタ車のリコール、国会議員の事務所費問題やゼネコンの談合問題など、『しんぶん赤旗』の記事から火がつき社会問題化した事件は近年数多い。その強みはどこにあるのか(My News Japan 00:04 07/20 2007)。 . . . 本文を読む
安倍流「教育改革」のモデルはイギリスの「サッチャー教育改革」である。サッチャー首相は、統一学力テストの成績で学校をランク付けするという市場原理を教育に持ち込んだ。市場の競争は、勝者とともに敗者をつくる。教育の目的が、「勝ち組」「負け組」をつくることでないのは明らかだ。この改革がイギリスの公教育にもたらした負の側面が深刻さを増し、本国では見直しがはじまっている(阿部菜穂子「イギリス『教育改革』の教訓」岩波ブックレット)。ところが、日本では過去に全国学力テストの弊害を経験済みであるにもかかわらず、この4月から統一学力テストがはじまり、学校を外部機関が評価する査察制度の導入も検討されている。安倍流「教育改革」が着々と進んでいるのだ。しかし、早くも安倍流「教育改革」の失敗の未来を先取りする事件が起きた。足立区の学力テストでの不正発覚である。足立区の教育改革は学力テストの結果で学校予算に差をつけるなど国の方針を先取するものであった。 . . . 本文を読む
日本共産党元名誉議長の宮本顕治氏が18日午後2時33分、老衰のため、東京都内の病院で死去した。98歳だった。「だいぶ具合が悪いという話はここ数年、折に触れて聞いていましたが、亡くなったという知らせはショックです。大きな欠落感を覚えます」(辻井喬さん=堤 清二「しんぶん赤旗」7月19日)。まったく同感である。ソ連・東欧の共産主義政権崩壊の際、ヨーロッパの共産党が存立の危機を迎える中で、なぜ日本共産党が新しい綱領にまで発展することができたのか。党分裂といういわゆる50年問題を身をもって克服してきた宮本顕治氏の確固とした「自主独立」路線の歴史があったことを何人も否定できないであろう。日本人民を愛し、よりよい日本社会の建設のために頑なまでに原則的であった指導者があったからこそ、今日世界第一級の共産党が日本に存在することを私たちは、忘れてはならない。
. . . 本文を読む
新潟県中越沖地震で、東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の耐震設計の甘さ・非科学性が白日の下に晒されることになった。事故隠し、不正検査、データ改竄等の不祥事が跡を絶たない電力会社と「日本では苛酷事故は起こりえない」という「安全神話」にしがみつく国の無責任な姿勢が改めて問われなければならない。国の原子力安全委員会が定めた耐震基準は、05年の宮城県沖地震が東北電力の女川原発で想定されていた「設計用限界地震」の揺れを超えたことや、06年3月の金沢地裁判決が耐震指針の合理性に疑問があるとし、北陸電力の志賀原発2号機の運転差し止めを命じたことなどから旧指針の妥当性が失われ、昨年9月に改定された。しかし、地震研究の最新成果を正面から議論することを避け、問題を残したまま新指針の決定を強行した。耐震対策のコスト負担を下げるために活断層の存在を値切ろうとする電力会社の思惑に追随するものであった。「しんぶん赤旗」(2006年9月24日)が「安全確保にふさわしい科学的で厳格な指針にするために、活断層研究の最新の到達をふまえた再検討を行うべきだ」と批判したことが、今回的中することになった。
. . . 本文を読む
参院選前の自民党の広報戦略は、安倍首相を「党の顔」に押し立てて、今回の参院選を乗り切り、次期総選挙で絶対多数を維持し、宿願の九条改憲へ王手をかける戦略であった。ところが、安倍首相を「党の顔」にすえて盤石の態勢を構えたはずの政権戦略は、その前提が崩れた格好である。朝日新聞社が14、15の両日実施した参院選の第10回連続世論調査(電話)によると、「最近の発言や行動をみて安倍首相の印象がよくなったか」どうかを聞いたところ、「よくなった」が6%にとどまるのに対し、「悪くなった」が45%にのぼった。「朝日」は「参院選では安倍首相を『選挙の顔』と押し立てる自民だが、有権者の首相を見る目は厳しいようだ」と書いている(「朝日」07月16日)。ある政治学者は、安倍首相のことを「劣等感や自信欠如で右往左往している意固地で小心な過激派」と酷評した( Gendai net2007年7月17日)。 . . . 本文を読む