プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

6カ国協議合意文書   問題を抱えながらもまた一歩前進

2007-10-04 18:29:40 | 政治経済
今回の6カ国協議の合意は、「朝鮮半島非核化」という大枠を合意した2005年9月の共同声明履行のための第二段階の措置を具体化するものである。05年9月の共同声明の履行については、今年2月の合意文書にもとづく核施設の稼働停止が7月に実施され、初期段階の措置が完了した。今回の協議では、最終的な核放棄につなげるための核施設無能力化を、どのように具体化するかが課題となっていた。合意は、無能力化の対象を寧辺にある五メガワット原子炉、核燃料再処理施設である「放射化学研究所」、核燃料加工施設の3カ所としている。これをさらに核兵器と核計画の完全な放棄に結びつけるためには、他の核施設、製造された核物質を廃棄する問題など、新たな段階の措置が必要である。核計画の申告についても「完全かつ正確な申告をおこなう」ということだが、米国が疑惑を指摘し北朝鮮側が否定しているウラン濃縮問題について、北朝鮮がどのように対応するかが注目される(「しんぶん赤旗」同上)。

今回の合意を推進したのは、米朝間の直接対話であった。今年1月のベルリンでの両国首席代表による対話をはじめ、6カ国協議の場だけでなく、米朝作業部会などを通じて、2国間の密度の濃い対話が、目立った。3つの核施設の無能力化については、米国の主導で2週間以内に専門家チームが訪朝、「当初の費用」を米国が提供し、3施設の無能力化に着手する。2日から行われていた韓国の盧武鉉大統領と北朝鮮の金正日総書記による第2回南北首脳会談の共同宣言で、「南北は現在の休戦状態を終わらせ、恒久的な平和体制を構築しなければならないとの見解を共有した」と述べていることを見ても、北朝鮮問題にケリをつけたいというブッシュ政権の意向は相当なものである。合意文書は、米国と北朝鮮が国交正常化に向けて「交流を増加し、相互の信頼を強化する」と明記した。朝鮮戦争(1950―53年)で戦火を交えた米朝両国が、昨年末からの活発な二国間協議の積み重ねをへて、相互不信と敵対の関係から転換する可能性を示したといえる(「しんぶん赤旗」同上)。

北朝鮮が求めてきたテロ支援国家指定と対敵国通商法の制裁の解除については時期を具体的に示さないまま「米国は米朝国交正常化作業部会の合意を基礎に、北朝鮮の行動と並行して約束を履行する」と明記した。注目されるのは、北朝鮮が核施設の無能力化と核計画の申告で年内という明確な期限を受け入れた一方で、これに相応する米国の措置であるテロ支援国家指定の解除などについては期限を明示しなかったことである。見返りの確実な保証を求めてきた北朝鮮が、不明確な表現に応じたことは、米国との間で一定の信頼を置ける暗黙の了解があると推察できる。合意文書の発表を受け、6カ国協議米首席代表のヒル国務次官補は3日、指定解除の問題について「(北朝鮮と)今後の進め方で合意が出来ている」と記者団に語り、年内の解除を強く示唆した。この問題を「米国の問題」と繰り返し、最終的には米国の判断次第との考えもにじませた(朝日10月04日00時41分)。

日本と北朝鮮は、今回の合意文書で、「平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として早期に国交を正常化する」ことを再確認した。平壌宣言は、核問題、日本人拉致問題、植民地支配の清算問題を包括的に解決するための文書。日朝両国はこれまで、どれだけ相手国に不信感を示しても、平壌宣言を維持する姿勢は守ってきた。9月6日の日朝国交正常化作業部会で「誠意を持って協議していく」と合意した両国政府は、早期に協議を再開する必要がある(「しんぶん赤旗」同上)。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。