プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

9・29沖縄県民大会  私たち「日本人」は22万の瞳にどうこたえるのか

2007-09-30 18:32:50 | 政治経済
私たちの歴史は変えさせない。29日、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が開かれた宜野湾海浜公園には、主催者の予想をはるかに上回る十一万人が集まった。県民の10人に1人近くが参加し、復帰後最大の規模に膨れ上がった(東京で言えば百万人の集会に相当)。「たとえ醜くても、真実を伝えたい」。沖縄戦で体験した地獄を語る勇気と、受け継ぐ覚悟。静かな会場に、世代を超えた県民の決意が満ちた。検定の標的にされた「集団自決(強制集団死)」の体験者は、失った家族に向けて涙ながらに成功を報告した。宮古、八重山の会場にも合わせて6千人が結集した。すべての視線が、文部科学省に向けられた(「沖縄タイムス」9月30日) 。 私は、22万の瞳は、文科省だけでなく、私たち「日本人」、「本土の人」にも向けられていると思う。会場近くに住む高校3年の女子生徒(18)は、「本土の人は、沖縄は海がきれいで空が青いとしか思っていないかもしれない。沖縄戦があり戦後も問題がある。戦争は二度としてほしくない」と真剣なまなざしで訴えた(時事通信9月29日19時1分配信)。大江氏が『沖縄ノート』で訴えた「倫理的想像力」がいま改めて問われている。 . . . 本文を読む

「政治とカネ」 福田首相の不明朗な会計処理 領収書を公開したがらないわけ

2007-09-29 19:13:47 | 政治経済
福田康夫首相は新内閣の発足にあたる記者会見で、年金問題とともに「政治とカネ」が「国民の不信を買った大きな問題」と認め、「政治不信の解消に全力を傾ける」とのべた。ところが首相自身に、さっそく政治資金疑惑が持ち上がった。自らが代表を務める資金管理団体や支部が1000万円分に上る領収書を改ざんしていたのだ。福田内閣の組閣人事そのものも、好いかげんである。疑惑が次々噴出した前安倍改造内閣の大臣たちを、ことごとく再任させたのだ。これではこの内閣が「信頼」を回復することなど到底できない。「最高責任者としては、汗顔の至りだと思っている」という程度で済ませるわけにはいかない。 . . . 本文を読む

6カ国協議開幕  簡単でない「無能力化」と「完全な申告」

2007-09-28 18:01:28 | 政治経済
北朝鮮の核問題をめぐる第6回6カ国協議が27日午後、北京の釣魚台迎賓館で半年ぶりに再開し、30日までの4日間の日程で、北朝鮮の核放棄に向けた「次の段階」措置についての討議に入った。北朝鮮の核施設の「無能力化」や核計画の「完全申告」を履行するためのロードマップ(行程表)についてどこまで合意できるかが焦点である(「しんぶん赤旗」9月28日)。「無能力化」は、核施設の廃棄ではない。廃棄にいたるまでのさまざまな程度の差がある。「完全な申告」といってもそれをどのように検証するのか。相互信頼に基づく平和の秩序を確立するまで、先は簡単でない。 . . . 本文を読む

緊迫度増すミャンマー情勢  軍政への批判は当然だがブッシュ流介入にも警戒

2007-09-27 18:44:42 | 政治経済
ミャンマー治安当局は26日、軍事政権による燃料費の大幅値上げなどに抗議するため、旧首都ヤンゴンの仏塔シュエダゴン・パゴダ周辺に集まった僧侶や市民を警棒で殴打、70人以上が負傷した。AFP通信によると、僧侶3人以上が死亡。治安部隊は、僧侶ら約200人を拘束した。軍政が実力行使に出たことで、同国情勢は重大な局面を迎えた(「しんぶん赤旗」9月27日)。国連安全保障理事会は26日午後(日本時間27日未明)、緊迫度を増すミャンマー情勢について協議するため、緊急会合を開いた。議長国フランスのリペール国連大使は情勢を「懸念」し、ミャンマー政府に自制を求めるとともに、同国問題を担当する国連のガンバリ特別顧問の入国を即座に認めるよう求める声明を発表した(「中日新聞」9月27日 11時24分)。ブッシュ大統領は、24日から始まった国連総会の一般討論演説でミャンマーの軍政を批判しながら、米国として軍政当局への経済制裁の強化策を打ち出したことをあげた。これに対しては、米国がイラク侵略など自らの人権侵害に口をつぐんでいることや、単独行動主義を批判する声が各国首脳から上がり、26日のミャンマー情勢についての緊急会合でも中国などの反対で、国連安全保障理事会は明確な対応を決めることができなかった(「毎日」9月27日11時46分配信)。 . . . 本文を読む

福田「背水の陣内閣」発足 自公政権合意  審判を受けた基本路線に反省・変更なし

2007-09-26 18:45:43 | 政治経済
福田内閣は26日午前、皇居での首相任命式と閣僚の認証式を済ませ、正式に発足した。「閣僚の顔ぶれは横すべり、再任がほとんどで『新内閣』の名に値しない」もので、「安倍お下がり内閣」と揶揄されている。臨時国会の開会中に、二週間も国会を空転させておいて、「臨時国会の開会中だから、あまり大幅な内閣の入れかえはしなかった」というのは、理由にならない。首相自ら「背水の陣内閣」といいながら、新内閣の布陣や首相指名に先立ち署名した自公連立政権の合意をみる限り、これまでの政権の基本路線を一歩も出ようとしない、無反省で緊張感に欠ける内閣である。安倍政権が破たんしたことへの反省を福田政権に求めても多国籍大企業が主導権を握る支配階級そのものが政策的自由度を失っているもとでは、無理な注文である。総選挙による階級闘争を通じて新しい次元での階級妥協を目指すほかない。 . . . 本文を読む

「自立と共生」  小沢氏と福田氏 なぜ理念が一致するのか

2007-09-25 19:32:11 | 政治経済
自民党総裁選で福田康夫元官房長官が掲げた政権公約の基本理念「自立と共生」について、民主党の小沢代表が9月18日の記者会見で、「ずっと昔から僕が使っていた言葉を何かおっしゃっているみたいに感じた」と皮肉った。小沢氏が1993年、自民党を離党して結成した新生党の理念が「自立と共生」だった(「朝日」09月19日01時28分)。首相就任が決まった福田氏と、政権奪取をうかがう小沢氏の奇妙な一致は、何を意味するのか。「自立と共生」イデオロギーは、現代先進資本主義国を広く席捲している反福祉国家イデオロギーとしての新自由主義と固く結びついたスローガンである。小沢氏は記者団から、福田氏の基本理念と重なっている理由を聞かれると、「わからないね。どうしたんでしょうかって本人に聞いてみて」と答えた。 これはウソである。小沢氏は新自由主義構造改革の草分け的存在なのだから、その意味を十分承知している。 . . . 本文を読む

自民党福田新総裁  個性の違いはあっても路線転換は不可能  解散・総選挙を!

2007-09-24 19:20:47 | 政治経済
自民党の総裁選は事前の予想通り、福田康夫氏の勝利に終わった。かつて自民党には、岸信介首相が「六〇年安保」で倒れたあとの池田勇人首相、田中角栄首相が金権で倒れたあとの三木武夫首相というふうに、政権延命のために多少の路線の見直しがあった。しかし、グローバル市場で資本の蓄積に狂奔する多国籍企業には、自国の国民経済の維持に対する関心はまったくない。日米支配層の政治的代理人である自民党は、「構造改革」と「軍事大国化」という二大課題の推進を止めることはできない。福田は、小泉、安倍とは多少個性の違いがあるかもしれないが、基本的に小泉―安倍の「構造改革」路線、「軍事大国化」路線を「継続」せざるをえない。これらの路線は、貧困と格差を拡大し、平和を願う国民との間で階級的利害の対立を激化させるから、福田政権もやがて行き詰まるのは必至である。衆院の解散・総選挙に追い込み、自公政治に代わる新しい政治を探求していくことがますます求められることになる。 . . . 本文を読む

改憲促進へ税金6億円  改憲反対の国民運動を緩めることはできない

2007-09-23 18:48:02 | 政治経済
参院選の敗北、安倍首相の突然の退陣表明で改憲派陣営は、相当落ち込んでいるものと思っていた。しかし、改憲派がこれであきらめたわけでは決してない。自民党新憲法草案(改憲案)の起草責任者の一人である舛添要一厚労相は18日夜の自民党衆院議員のパーティーの席上で改憲への決意をあらためて示した。「参院選に負け、内閣改造、そして総理退陣という政局になったが、憲法改正するという熱意は忘れていない。憲法改正という大きな目標に向かって努力したい」。自民党の改憲派議員は「改憲手続き法はいわば安倍首相の置き土産。安倍内閣が退陣しても改憲作業を進める法的根拠は残した。ここを足場に巻き直しですよ」となお意気軒昂である(「しんぶん赤旗」9月22日)。今朝(9月23日)の「しんぶん赤旗」によれば、改憲手続き法(国民投票法)を国民に周知徹底するために、政府が約6億円を投じて新聞全面広告などを使った広報計画を準備しているとのことである。改憲世論を盛り上げることを意図したものだろうが、税金6億円をかけたこんな策謀を許すわけにはいかない。財界、アメリカの民主党にたいする圧力が強まることも間違いない。 . . . 本文を読む

自民党総裁選  提供すべき情報は皆無 なぜ大騒ぎするテレビ報道

2007-09-22 16:56:34 | 政治経済
記者会見、街頭演説、支持者回りと、連日うんざりするほどの自民党総裁選の報道。福田優勢が決まっているなかで、テレビは朝から晩まで自民党総裁選の話題ばかりだ。「米大統領選よろしく両候補も地方都市を回り、投票権もない人々に愛嬌を振りまいている。テレビを含めて大マスコミは、茶番劇を承知の上で自民党を大宣伝することに手を貸しているとしか思えない。大新聞も『安倍』が自滅したのに、今度は『福田だ』『麻生だ』と書き立てる魂胆は何なのか」(Today’s Gendai メール 2007年9月21日)。安倍はなぜ自滅したのか、いま日本の政治はどのような状況にあり、これからの政治にはなにが求められるのか。国民に必要な情報はなにも提供されない。国会の空転だけで、何十億円の税金の無駄使いだという。批判精神を失ったジャーナリズムに踊らされてはいけない。自公政治に代わる新たな政治はいかにあるべきかについて大いに議論し、早期の解散・総選挙を要求しょうではないか。 . . . 本文を読む

国連「謝意」決議と海自の給油活動継続  自衛隊の海外派兵はいつから当たり前となってしまったのか

2007-09-21 18:58:38 | 政治経済
国連安全保障理事会は19日、アフガニスタンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)の任期を今年10月から一年間延長する決議を賛成十四、棄権一で採択した。同決議には、日本政府の働きかけで、米軍主導の「不朽の自由作戦」(OEF)の一環として海上自衛隊が参加している「海上阻止行動」への「謝意」が、法的拘束力のない前文に初めて盛り込まれた。民主党が国連決議に基づかない給油活動の根拠となっているテロ対策特別措置法延長に反対していることを念頭においた日米合作の姑息な国連安保理利用であることは明らかだ。米国のハリルザド国連大使はこの日、「我々は日本国内で議論が起きていることを踏まえ、海上阻止活動に言及した」と正直に語っている。日本の自衛隊は、90年代に入るまでの45年以上のあいだ、一度も海外に出たこともなければ、他国との戦闘に参加したこともない「特異の軍隊」であり続け、国連もそれを当然のことと考えていた。現代帝国主義同盟のなかで、自衛隊の海外派兵がなし崩し的に進む背景には、冷戦後のグローバル資本主義のもとでの国連の主導権の変質という問題も微妙に影響している。 . . . 本文を読む

日本経団連「税制改正に関する提言」  税制に国民の声がなぜ反映しないか

2007-09-20 18:53:53 | 政治経済
日本経団連(会長・御手洗冨士夫キヤノン会長)は9月18日、消費税増税の一方、法人実効税率の減税などを求める「今後のわが国税制のあり方と平成20年度税制改正に関する提言」を発表した。日本の税に関する制度体系、税率の変更などはすべて政府税制調査会、与党税制調査会の2つの調査会の決定・答申の形を経て財務省官僚(地方税は総務省)により具体化される。租税制度は、精緻な体系を成しているので、思いつき的スローガンだけでは、専門スタッフの集団的検討を経た「提言」に対抗できない。民主的な租税研究所や税理士集団も存在するが、その声は圧倒的に小さい。支配階級が専門スタッフを駆使して作成した、自己に都合の良い「提言」は体系的であり、租税法の言葉で語られているので具体的で、税制調査会の議論に大きな影響を与える。税制に国民の声が反映しない理由である。 . . . 本文を読む

韓国民主化運動と小林多喜二  20年前に刊行されていたハングル版『蟹工船』

2007-09-19 19:07:18 | 政治経済
87年6月の韓国民主化運動は、今年で20周年を迎えた。韓国は、朝鮮半島の南北分断状況のもとで、「反共」が長い間の「国是」であった。87年の民主化抗争を経て外国の共産党に門戸を開いたものの、共産主義は「危険思想」とされ、軍政下で左翼や民主化勢力弾圧に使われた国家保安法はいまも残っている。私は先日(9月13日)、初めてソウル西大門刑務所を訪問し、戦前の日朝人民の友好・連帯について思いをめぐらす機会をもったが、このたび茶谷十六さんの「赤旗」記事で、87年民主化闘争の最中に小林多喜二が読まれ、密かにハングルに翻訳されていたことを知った。どんな反共の嵐のなかでも生き続ける日朝人民の友好・連帯に深い感銘を受けたものである。 . . . 本文を読む

安倍首相辞任と財界戦略   問われる民主党の出方

2007-09-18 19:22:33 | 政治経済
安倍政権の突然の崩壊は政財界に衝撃をもたらした。とりわけ、安倍政権に小泉「構造改革」がもたらした社会統合の亀裂の糊塗とさらなる「構造改革」の推進、グロバール市場秩序維持をアメリカとともに担う軍事大国化の完成を期待した財界にとっては、戦略の練り直しを迫られる事態となった。財界は危機の時代が到来することを見越して、保守二大政党制の実現に向けた策動を強めてきた。保守二大政党制の下では、基本政策で違いがない二大政党が交替で政権を担うため、政権がどちらに転んでも、財界の政治支配は「安定」する。また、労働者・国民に「政権交代」の幻想を与えることで、大衆行動を抑え込める。こうした経験は、米欧諸国で見られる通りである。政治的衰退がきわまった自民党の末期的な姿をみれば、財界が今後、民主党への働きを強めることは容易に想像がつく。ただ、日本では、財界支配の力が強い分だけ、国民との矛盾も深刻である。国民世論による縛り如何では、民主党の出方が大きく変わる可能性もある。財界主導の保守二大政党づくりもジグザグに進むことになろう。 . . . 本文を読む

アメリカは「対テロ戦争」で何をめざしたか  対テロ戦争は第2冷戦

2007-09-17 18:26:06 | 政治経済
アメリカにたいする「同時多発テロ」(2001年9月11日)から6年が過ぎた。「同時多発テロ」直後、ブッシュ政権は自衛権の行使と称してアフガニスタンへの「報復戦争」を開始し、集団的自衛権の行使を決めたNATO(北大西洋条約機構)をまきこんで、攻撃作戦を拡大・強化して来た。9・11によって始まった「対テロ戦争」は、その後のアメリカの世界戦略の根幹をなしている。フリーの国際情勢解説者の田中宇さんが、「対テロ戦争」でアメリカは何をめざしたかについて興味深い分析を行っている(田中 宇「テロ戦争の意図と現実」2007年9月11日)。海上自衛隊による補給活動継続のためのテロ特措法の延長問題が焦点となるなか、改めてアメリカの「対テロ戦争」の目的はなにか。それによって、アメリカの支配階級はなにをめざしたのかを検討してみよう。有効期間が11月1日に切れる特措法の延長も新法の制定も許さない世論がいかに重要であるかが、自ずから理解されるであろう。 . . . 本文を読む

福田VS.麻生  アメリカ、財界という支配階級のための政治路線に違いなし

2007-09-16 18:53:29 | 政治経済
福田康夫元官房長官と麻生太郎幹事長による一騎打ちとなった自民党総裁選。どこが、どう違うのか。安倍首相が退陣に追い込まれた背景には、自公政治の転換を望む国民の審判があることは言うまでもない。しかし、一騎打ちとなった福田、麻生の両候補は、自民党の「路線転換」を明確に打ち出せないばかりか、お互いの主張も「大同小異」。がけっぷちに立つ自民党の再生をかけた政策論争とはとても思えない、低調なスタートを切った(「朝日」2007年09月16日00時00分)。アメリカいいなり、多国籍大企業中心という自民党政治の基本路線のなかでは、いかに総理・総裁の顔を変えても、とりえる政策の選択の幅は、限られている。日本国民の犠牲のもとに自己の繁栄と生き残りをかける支配階級のための政治を転換できるかどうかは、与野党の議席数が逆転した参院での野党の一致したがんばり、それを後押しする国民世論にかかっている。 . . . 本文を読む