プロメテウスの政治経済コラム

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新テロ特措法案  アメリカの報復戦争支援の核心は変わらず

2007-10-09 18:55:14 | 政治経済
政府が5日の与野党国対委員長会談で野党側に提示した新テロ特措法骨子案は、活動を給油・給水に限定することを目玉の一つにしている。しかし、どんなに限定しても、米軍主導の「対テロ報復戦争」(米軍の作戦名は「不朽の自由作戦」)支援のための給油・給水活動の継続が、兵站業務の一環である本質は変わらない。民主党の小沢一郎代表がアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)への参加を口にしているので、民主党対策として、給油・給水活動だけでなく、復興支援も新法に織り込んでくる可能性もある。「今の法律は米国の戦争支援法という性格が強い。9・11テロの直後にみんなワーッとなってつくったもので、大規模戦闘が終結した後につくられたイラク特措法のように復興支援という要素は入っていない」、ある防衛庁長官経験者はこう語り「新法では、戦時法、戦争支援法という法律の性格を変える必要がある。給水・給油への活動内容の限定や復興支援という要素を入れることで民主の理解も得られるのではないか」と期待を述べている(「しんぶん赤旗」10月8日)。

アメリカが「9・11」同時多発テロ(2001年)から一カ月後の10月8日未明(日本時間)、テロ勢力をかくまっているという理由でアフガニスタンのタリバン政権への武力攻撃を開始してから6年が経った。戦争でなく、法の裁きでテロ勢力を処断する道を示した国連安保理決議1368を無視して、自衛権を理由に始めたアメリカの「報復戦争」であった。国連は「報復戦争」を認めていない。70年の「国際連合憲章に従った諸問題の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言」では、「国は、武力の行使を伴う復仇(ふっきゅう)行為を慎む義務を有する」と規定して、武力報復を禁止している。「復仇」とは「仕返し」のこと。相手国の攻撃は終了しているのに報復のために武力行使することは、これまでも慣習国際法上で禁止されているとみなされてきたが、この宣言によって明文で禁止された

政府が、 国連に強く働きかけ、海上阻止活動への貢献に「謝意」を示す文言を今年9月の安保理決議1776に盛り込ませるなど、問題を「国際信用」にかかわる事柄として描き出そうとしているのも世論対策の一環である。伊吹文明自民党幹事長は、「民主党がどう対応するかは、国民の気持ちが一番大きな変数になる」(「毎日」9月28日付)とのべ、90年代はじめの湾岸戦争のときのような「国際責任」「国際貢献」論の再現で世論を獲得することを狙っている。NATOなど他国が軍隊を出して頑張っているのに、日本は「人的貢献」をしなくて「一国平和主義」で済ましてよいのかという主張は一見もっともらしく聞こえる。しかし、「人的貢献」がなぜすなわち「軍隊」の派遣となるのか、われわれは慎重に吟味しなければならない。

日本共産党は、6年前の9月11日におこった同時多発テロにさいして、国連と世界各国政府に書簡を送り、この憎むべき犯罪行為を糾弾しつつ、テロ根絶のためには、国際社会が協力して、テロリストを国際的にも国内的にも孤立させ追い詰めて、“法にもとづく裁き”にかけることこそ必要であること、そうした努力をつくさないまま報復戦争に訴えることは、テロと軍事報復の悪循環をつくりだし、無数の新たな犠牲者を生み、事態を泥沼に導く危険があると訴えた。いまアフガンやイラクの現実は、まさに危惧の通りの事態となっている。

そもそも、9・11事件そのものが、戦争を欲したアメリカの謀略ではないかと疑われている。とりわけ、ペンタゴンへの航空機攻撃は、自衛権の発動を合理化するための謀略の臭いが極めて濃い。フセインの大量破壊兵器保有やアルカイダとの関係もすべてデッチあげであった米軍などによる報復戦争がもたらしたものは、テロの温床の拡大であり、アルカイダのネットワークが世界60カ国に広がったと報じられているように、テロの世界への拡散であった。 憲法9条に基づく「国際貢献」こそ、日本に求められているいま日本がなすべきことは、アメリカの「報復戦争」支援ではなく、テロ根絶の方途を政治解決を中心にした道に切り替えるための外交努力をおこなうこと、テロの温床になっている貧困・飢餓をなくすなどの民生援助を強めて、テロが生まれる根源を除去することである

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