プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

構造改革の矛先  社会保障予算の抑制と財源問題  

2007-10-16 18:53:47 | 政治経済

「改革には痛みが伴う」と宣言して2001年4月に小泉内閣が発足して以降、政府は高齢化などにともなう社会保障予算の自然増さえ認めず、毎年、三千億円―二千二百億円の必要な予算増を圧縮してきた。この大規模な社会保障削減のために自民・公明政権が実行してきたのが、社会保障制度の連続改悪である。02年の医療改悪を皮切りに、年金、介護、障害者福祉、生活保護など、国民生活のあらゆる分野で、負担増と給付減を押し付ける大改悪を次々と強行した(「しんぶん赤旗」10月10日)。
医療では、患者の窓口負担が現役世代、高齢者ともに引き上げられた。その結果、具合が悪くても医療機関に行かなかった人の割合が低所得層(世帯年収三百万円未満など)で四割にのぼるなど、医療費が心配で受診を控える人が増えている。また、高すぎる国民健康保険料が払えずに国保証を取り上げられる世帯が35万世帯も生まれ(06年)、病院に行けずに病状が悪化する事態が全国で続発(「医療難民」)。
介護では、05年の改悪で「軽度」の人を対象に「介護予防の重視」を掲げ、サービス利用を抑制。ヘルパーの訪問削減や、28万人から介護ベッドや車いすの取り上げなどが行われ、多くの「介護難民」を生み出した
負担増は、障害者福祉への定率一割応益負担の導入など、弱いところにも容赦なく強行された。国民生活の最後の命綱である生活保護では、保護の打ち切りによって餓死、自殺に追い込まれるという事態まで起こっている。医療費抑制のための医師数・看護師数の抑制は、「出産難民」など地域医療の崩壊ともいうべき危機的状況を招いている(「しんぶん赤旗」同上)。

参院選での国民の厳しい審判を受けて、政府・与党は来年4月から実施予定の高齢者医療費負担増の一部凍結や、障害者自立支援法の見直し、児童扶養手当の削減凍結などを言い始めている。しかし、検討されているものは、負担増の一部実施を半年から一年程度「凍結」するという、一時しのぎのものにすぎない。福田首相は、大本にある「構造改革」路線について「改革の方向性は変えない」と継承を主張。2011年度まで毎年二千二百億円の社会保障予算削減を続けようとしている。「骨太06」の2011年度のプライマリーバランス達成の方針に変わりはない
「骨太06」は、11年度のプライマリーバランスに必要な要対応額16・5兆円のうち、血祭りにあげる歳出部分から11・4―14・3兆円を確保し、残りを国民の血税(消費税)からまかなう、とした(二宮厚美 同上)。

社会保障予算抑制の「構造改革」路線を転換しない限り、「一部負担増の凍結」は一時しのぎに終わるか、社会保障のほかの分野で新たな負担増を国民に強いることになるほかない。
社会保障抑制路線の転換をいうと財界からも政府・与党からも、すぐ消費税増税の話が出てくるしかし、いまの日本の財政破綻を招いたのは、社会保障費でない。日本の社会保障給付費は、国内総生産(GDP)比でみると、ヨーロッパ諸国と比べてまだまだ低い水準である。財政悪化は、1990年代に“国と地方で公共投資に五十兆円、社会保障費に二十兆円”といわれたような異常な景気テコ入れやアメリカの要求で軍事費を増大させてきたからである。
七兆円に上る大企業・大資産家へのゆきすぎた減税を改め、五兆円もの軍事費にメスを入れれば、福祉を壊す消費税に頼らずとも数兆円規模の大きな財源を生み出すことは可能である。財源と言えば消費税しかないかのような議論は、大企業の成長・競争力の強化という「構造改革の聖域」に触れさせないためのごまかしなのだ


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1 コメント

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Unknown (西川 均)
2007-11-07 23:43:30
マイケル・ムーア監督「シッコ」のような状況が、日本でも現実になりつつあることを感じます。
「企業が元気になれば財政も潤い、結果として社会保障も充実する。」という嘘っぱちには、もうだまされないようにしなくては。
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