プロメテウスの政治経済コラム

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「集団自決」検定見直し 検定意見の撤回だけでなく検定制度の民主化を要求する

2007-10-02 19:00:45 | 政治経済
これまでも、日本の教科書検定制度は歴史教科書は言うに及ばず、自然科学の専門家からもさまざまの問題点を指摘されてきた家永教科書裁判は、高等学校日本史教科書『新日本史』(三省堂)の執筆者である家永三郎さんが、教科用図書検定(教科書検定)に関して国を相手に起こした一連の裁判である。1965年提訴の第一次訴訟から1997年、第三次訴訟の最高裁判所判決をもって終結するまで32年もかかった。訴訟における最大の争点が「教科書検定は憲法違反である」とする旨の家永氏側の主張であったが、最高裁は「一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、検閲にあたらない」とし、教科書検定制度は合憲とした。教科書検定制度は合憲としても検定内容の適否に問題がないというわけではない。

全国革新懇は10月1日、沖縄戦における「集団自決」への日本軍の関与を教科書から削除させた教科書検定の撤回を求めて文部科学省に申し入れをした芸能界、スポーツ界、作家、学者など幅広い分野の48人の検定撤回アピールを同省に手渡した「集団自決が、日本軍の関与抜きには起こらなかったことは20年来の通説。これを覆した教科書検定調査審議会がどういう審議をしたのか、沖縄戦の専門家や地元の体験者を交えて調査し直すことが、最低限必要」「審議し直すよう、文科省として指導性を発揮すべきだ。文科省の責任として、撤回してほしい」と求めた(「しんぶん赤旗」10月2日)。
文科省はあくまで「検定の撤回はできない」との立場である。「検定の手続きは間違っていない」(森山都留男・教科書検定調整専門官)という文科省に対し、革新懇の申し入れに一緒に参加した日本共産党の赤嶺政賢衆院議員は手続きに従って検定をした結果、教科書に歴史の事実と違うことが書かれる事態になったなら、それは検定の手続き、仕組みがおかしいということ。見直すべきではないか」と厳しく指摘した(「しんぶん赤旗」同上)。

行政が過ちを認めないとき、それをただすのは政治の役割である。政府は、検定は「教科用図書検定調査審議会」の検討を経たものだから、一度決まった検定意見を政治の意向で変えることについては「(政治)介入につながる」と詭弁を弄して、沖縄からの民意や反論に真剣に対応してこなかった。「『集団自決』で日本軍の強制があったことを否定されれば、ガマからの追い出し、食料の強奪、スパイ容疑での虐殺など、そのほかの沖縄戦の住民被害を否定されたのと同じになる」。平良長政・大会実行委員会幹事が29日の大会後に述べたように、県民は今回の教科書検定で、体験、記憶、学習を通じて共有してきた「沖縄戦の事実」が否定されたと感じたのだ。「集団自決」に対する日本軍の強制があったことを証明するこれまでの研究に、今回、体験者による新たな証言がいくつも加えられ、検定結果への反証として示された。「審議会による学術的な審議に基づく決定で覆せない」などと絶対にいえない(「沖縄タイムス」9月30日)。

20年来の通説が、安倍政権下でなぜ覆されたのか。削除を決めた審議会の人選はどのようになされたのか。非公開のなかで、どのような議論が行われたのか。野党各党は、「集団自決」の検定意見の撤回だけでなく、検定制度の構造的欠陥にまで踏み込んだ議論を国会で是非やるべきだ

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