プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「構造改革」と「旧い自民党」  新自由主義改革の日本的特徴

2007-10-05 17:04:43 | 政治経済
日本の新自由主義改革論者は、日本では構造改革が遅れているから不況の克服が進まないのだと主張した。「旧い自民党」政治は、伝統的な支持基盤である農村部や都市の自営業者を保護し、バラマキ政治で固めているために低効率、高コストが温存され、改革が進まないと批判した。また官僚が、弱小企業を保護し、横並びで成長を目指して、くだらないさまざまな規制をやっていることが、企業の活力を奪っているので、規制緩和をしろと叫んだ。
欧米で始まった新自由主義とは、企業にかけられているさまざまな公的負担や規制を取り払い、「企業の資本蓄積活動の自由」を取り戻そうということである。福祉国家のもとで労働者階級との階級的妥協を強いられたが、グローバル資本主義の進展にあわせ、企業側に階級的主導権を奪還する試みである。

「旧い自民党」は、日本型開発主義国家のもとで大企業、財界を一つの基盤とし、企業の資本蓄積を広く支え、企業社会統合を誘導してきた。同時に「旧い自民党」は、農村部住民や都市零細企業者などをもう一つの支持基盤として長期政権を維持してきた。しかし、大企業、財界の主流が多国籍大企業となるとともに、国内の低効率部門の高コスト体質を競争によって打破することが必須となった。「ケイレツ」再編成も大胆に行われた。多国籍大企業にとって、国民経済のバランス維持は関心の外であり、資本蓄積活動にとって、邪魔な規制はすべて撤廃の対象であった。こうして「旧い自民党」は、股裂き状態に陥った。日本型開発主義国家にとって重要な役割を果たした郵政も、日米金融資本の利潤追求の要求の前に解体された。小泉元首相が、「旧い自民党」をぶっ壊すと叫んだとき、農村部住民や都市零細企業者へのバラマキも消滅する運命にあった。

日本型開発主義国家のもと労働者を資本主義の社会秩序に「同意」させるシステムを直接的に担ったのは、企業であった(企業社会統合)。日本の大企業は、高度成長期にかけて、きわめて強い労働者管理の構造をつくった。それは一言でいうと、労働者を入社から定年まで長期雇用することと引換えに、昇進・昇格をめぐって激しく競争させる構造であった。労働者は企業間競争で自社が勝つ競争と企業内での相互の競争という二重の競争にさらされ、「サービス残業」を強制され、「過労死」を生む構造ができ上がった。初任給と若い頃の低賃金を前提とした年功処遇は、企業に忠誠を誓ってますます企業のために働くことを強制した高度経済成長時代、日本の大企業は「最後まで勤めれば」、男性労働者が一人働いてなんとか家族を養える賃金を保証した(その後、共働きでないと生活を維持できなくなるが)。企業社会統合が形成されるにつれ、労働組合や労働者の意識が変容しはじめる。自分の生涯にとって、企業の繁栄がなによりも重要なこととなり、企業の繁栄を支える自民党の経済成長優先の政治を暗黙で支持するようになったのである。大企業の管理者層には、とりわけその意識が強い。この思考パターンが、暗黙のうちに小泉「構造改革」を支持することになった。企業の収益力を回復させる「構造改革」は、自分たちの生活向上につながるはずだと。しかし、高コスト体質の打破は、リストラの嵐となり、労働法制の規制緩和は劣悪条件の低賃金労働者という強力な競争相手を大量に生みだした。

小泉政権時代には、多国籍大企業側に階級的主導権を奪還されたように思われたが、安倍政権を退陣に追い込んだように、最近、労働者階級が少し押し戻した。新しい政治、新しい階級的妥協点をめざした闘いがまさにはじまった。

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