プロメテウスの政治経済コラム

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高齢者医療  資本主義経済に役立たない老人を「改革」の名で切り捨てる「朝日」社説

2007-10-03 19:13:05 | 政治経済
資本主義社会の効率からいえば、労働力にもならず、消費購買力も高くない老人は、社会のお荷物であり、できれば放り出したい存在である「後期高齢者医療制度」は昨年(2006年6月)、政府・与党が強行した「医療改革法」(12本の法律)で導入された後期高齢者とよばれる75歳以上の人たち(約1200万)は、現在加入している国保(国民健康保険)や健保(政府管掌健康保険、組合健康保険など)を脱退させられ、後期高齢者だけの独立保険に組み入れられる。資本の蓄積には役立たず、金がかかる高齢者は一般の保険から放り出し、“姥捨て山”にプールしてしまおうというわけだ。年金から強制的に保険料を天引きし、保険料値上げをいやがるなら、それ相応の医療給付しか提供されない仕組みを考えている。特別の金持ちを除いて、一般の老人の終末期医療は、まず十分なケアを受けられないと思っておいたほうがよい。他の高齢者に迷惑をかけたくなかったら、金をかけずに早く死ねということだ。高齢者だけを別枠にして死ぬまで保険料を払わせるような制度は、あの無慈悲なアメリカにもない、世界のなかでもほかに例のない制度である。

後期高齢者医療制度」の保険料は2年ごとに改定され、国保料や介護保険料と同じく、医療費(給付費)の増加に応じて値上げされる。新制度は「後期高齢者の保険料=10%、他の医療保険からの支援金=40%、国または地方の公費=50%」という財源割合でスタートするが、後期高齢者の人口が増えるのに応じて、「後期高齢者の保険料」の割合を「11%、12%・・15%・・」と自動的に引き上げる仕組みとなっている。そして、「朝日」社説が「若い世代の反発を招く」と対立を煽っているように、「他の医療保険からの支援金」を世代間の分断に使い、老人にスティグマ(stigma)の圧力をかける。今回の制度改変により、現役労働者が払う保険料は、現役世代の医療費に使われる「一般保険料」と、高齢者医療の支援に使われる「特定保険料」に分けて明示されることが考えられている。高齢者医療に使われるお金を“目に見える”ようにして、高齢者はお荷物であり、高齢者の負担増や医療内容の劣悪化は当然と思わせようというわけだ「朝日」社説はすでにその立場に立っている。

財界・大企業にとって、人件費に含まれる社会保障負担(法定福利費)の引き下げは、長年の要求である。公的社会保障の枠組みを縮小し、国民に徹底した自助努力を求める提言・イデオロギー操作を連発する医療では、▽高齢者医療を現役世代の保険から切り離し、企業負担のない制度に変えること▽高齢者の窓口負担を抜本的に増やすこと▽診療報酬を「包括払い」(定額上限)とし、保険給付を制限すること▽公的医療保険の範囲を見直し、混合診療(保険内、保険外併用)を解禁すること――などの要求が、経団連や経済同友会からたびたび出されている。
日本経団連は、社会保障の公費部分は、大企業にとっては一銭の負担にもならない消費税でまかなうことを要求している。朝日」社説が「福祉目的の消費税」に取り組めというのは、この財界要求を代弁したものである。
財務省が9月27日に発表した法人企業統計調査によれば、「資本金十億円以上の大企業の経常利益はバブル時期と比べ一・七五倍に増えて三十二兆八千三百億円になっている。ところが法人税収は大企業減税を繰り返してきたため同期からマイナス一千億円になっている。利益が増えた分に応じて税金をまともに払うだけで、四兆円の財源が生まれる」(「しんぶん赤旗」9月30日)。
大企業の階級支配を当然として聖域にしている限り、老人の生存権は無慈悲に破壊されるほかない

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