米軍は、ニミッツ級の原子力空母「ジョージ・ワシントン」(97、000トン)を来年8月19日に横須賀基地に配備することを決めた。日本が米空母の母港化を認めていること自体世界のどこにもなく、異常そのものである。この異常な事態をあらためるどころか、アメリカいいなりに今度は、唯々諾々と原子力空母を受け入れるなどとは尋常ではない。横須賀42万市民をはじめ首都圏3千万人にたいして責任をもつ政府とはとても思えない。
原子力空母の母港になるということは、核事故の脅威と常に共生しなければならないということだ。ニミッツ級の原子力空母は二基の原子炉をもち、その熱出力は120万キロワットといわれている。標準的な原発の熱出力は300万キロワットであるから、相当な規模である。核事故をおこせば被害が甚大となるのは必至である。新潟県中越沖地震での原発のように、商業用ですら安全性は保障されていない。ましてや原発よりも危険だといわれているにもかかわらず、日本人にとってアウト・オブ・コントロールである原子力艦船の核事故の危険性はなおさらだ(「しんぶん赤旗」10月14日)。
現在、日本政府は同空母受け入れのために、海洋汚染もおかまいなしに横須賀基地の12号バースの浚渫工事を進めている。これに対しては、7月3日に 636 人が原告となって横浜地裁横須賀支部に「浚渫工事の差し止め訴訟」が提訴された。さらに、9月13日には、浚渫工事が来年5月に終了する予定であり、遅々とした裁判を待ってはおれないと判決が出るまで暫定的に同工事を中止することを求める仮処分の申し立てが行なわれた。この浚渫工事は、12号バース周辺海域約30㌶を平均約2㍍掘り下げ、約60万立方㍍の土砂を房総半島沖約100㎞地点に海洋投棄するというものである。工事区域の土砂からは、有害物質が検出されており、堆積したヘドロ等を浚渫した場合、ヘドロに含まれる汚染物質が撹拌され東京湾の漁場や海が汚染されることが懸念される。さらに、有害物質を含む土砂を大量に海洋投棄することは、海洋生物や海洋環境におおきな影響を与えないか専門家も危惧している(「しんぶん赤旗」10月9日)。
米海軍の原子力空母はこれまで、「ジョージ・ワシントン」と同型の「ニミッツ」が一次冷却水漏れ事故、「ステニス」もサンディエゴ港内で座礁し冷却水取水口が目詰まりして原子炉を緊急停止するという重大事故をおこしている。核事故がないというアメリカ政府の説明は自分流の基準で事故がないといっているだけで、事実ではない。
そもそも日本には放射能を測定することすら制約が課されている。昨年の原潜「ホノルル」の放射能漏れ事故について放射性物質漏れは「いっさい生じなかった」と言い張るアメリカの前に調査は中止された。国際問題研究者の新原昭治氏は、米原子力艦が寄港を繰り返している沖縄県の港湾が放射能で汚染されていた問題で、米政府が日本政府に圧力をかけて「汚染ではない」と国会答弁を変えさせていたことを自身が入手した米政府の解禁文書をもとに明らかにしている(「しんぶん赤旗」10月12日)。
横須賀に母港化されようとしている空母ジョージ・ワシントンは、この15年間で最大の戦争出撃回数を誇り、最近では、南米のベネズエラ民主政権を威嚇するためにも出動した。米政府は、原子力空母は通常型空母の二倍の戦闘能力をもっていると豪語している。
戦後62年もたつというのに、いまだに首都圏を取り囲んで外国軍の基地があること自体、世界に類例のない異常である。首都圏を「日本防衛」と無関係のアメリカの地球的規模の戦争の足場にさせてはならない。いまこそ、基地機能の強化、基地の恒久化 ノーの声をあげる時だ。
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