プロメテウスの政治経済コラム

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「集団自決」の強制削除 安倍政権下の文科省役人の自作自演だった 審議会はフリーパス

2007-10-14 18:54:54 | 政治経済
高校日本史の教科書検定で、沖縄戦での「集団自決」に日本軍の強制があったとする記述を削除する発端となった「調査意見書」は、文科省ぐるみで作成され、専門家によるまともなチェックさえなかったことが、11日の衆院予算委員会で、日本共産党の赤嶺議員の質問で明らかになった。赤嶺氏は「文科省が勝手につくった検定意見に固執することこそ『政治介入』だ」と批判し、検定意見の撤回と記述の回復を要求。気迫の追及に、第一委員室は静まり返った(「しんぶん赤旗」10月12日)。

教科書検定では、発行者の申請を受け、文科省職員の教科書調査官が「調査意見書」を作成。教科用図書検定調査審議会で審議し、検定意見がつくられることになっている。赤嶺氏は、これまで20年間、意見がついたことのなかった「集団自決」の強制に関する記述を削除した発端は、この調査意見書にあると指摘。同意見書には、「集団自決」が軍の強制であった記述について「誤解するおそれのある表現」と意見をつけ、担当局長ら7人が決裁していた文科省の金森越哉初等中等教育局長は「(同意見書は)検定意見の原案」と述べ、発端であることを認めた(「しんぶん赤旗」同上)。

赤嶺氏が、同意見書の作成にあたり、審議することになっている教科用図書検定調査審議会の委員から「集団自決」に関する意見はあったのかとただしたのに対し、金森局長は「意見は出されていない」と答弁。渡海紀三朗文科相は同意見書について審議会でも「意見はそれほどなかった」と認めた。さらに、審議会メンバーに沖縄戦の専門家がいなかったことも認めた今回の検定意見は結局、審議会はフリーパスで文科省のいう「専門的、学術的観点」からの検討はまったく行われず、「文科省の教科書調査官の意見書」をそのまま採用し、発行者に訂正を指示したものであった。これを文科省の自作自演といわずして何というか(「しんぶん赤旗」同上)。

なぜこんなことが起こったのか。教科書調査官は、文科省の常勤職員でありながら、その採用ルートが闇の中であるからだ。一般の国家公務員のような採用試験がなく、文科相が任免する。学術専門家というだけで、文科省をとりまく連中の口利き、いわゆるコネで採用が決まるというわけだ
今回の問題の発端の「調査意見書」の原案を作った調査官は、日本史担当の村瀬信一、主任調査官は照沼康孝である。いずれも伊藤隆東大名誉教授の門下生である。伊藤氏は扶桑社版『新しい歴史教科書』の執筆・監修者。現在は「新しい歴史教科書をつくる会」の理事を降り、安倍首相のブレーンだった八木秀次氏らの「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有志の会」に参加している(「しんぶん赤旗」10月14日)。

これで見えてきたではないか。今回の検定意見は安倍をとりまく「靖国派」人脈によって仕組まれた「政治介入」そのものであったのだ。明日15日は、教科書検定意見の撤回を求めて、沖縄県から大規模な要請団が上京する。教科書会社から記述を変更するための訂正申請が出された場合、「真摯(しんし)に対応したい」というようなことでは、沖縄の人びとは、絶対に納得しない。政府が「真実を歪めた」責任そのものを問うているのだ。

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