京料理 道楽のブログ

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【水無月の茶事・前】

2016-06-05 | Weblog
先達て、道楽 瑞相庵にて水無月の茶事がございました。

待合の掛物には、奥谷秋石の初夏の涼しげな軸。汲出は番浦史郎の伊賀焼にしました。本席には、元伯宗旦の夏山狂言。釜は時代桐紋尾垂釜。
懐石はまず、お向に魯山人の青織部長四方向附。淡路の活あこうです。針に打ったオクラと茗荷を添えてすり山葵です。この魯山人の器は小山冨士夫の箱書です。汁は袱紗仕立てで、翡翠茂木茄子と新小芋に落とし芥子。飯は蒸らし過程の一文字飯。四つ椀は時代輪島塗。
銀器の燗鍋に福井県の九頭龍というお酒。燗上がりで美味しい大吟醸です。そして飯器を持ち出して汁替。

煮物は時代輪島塗宝相華蒔絵煮物椀に、牡丹鱧 新蓴菜 ふり柚子。宝相華とは唐代によく用いられた意匠で、蓮華・石榴・牡丹・パルメットなどを組み合わせた空想上の花文。日本では奈良時代によく使われ、正倉院宝物の文様にも多くみられます。

燗鍋を預け、焼物は琵琶湖の天然活鮎に甘藷栂尾煮。鉢は須田菁華の倣仁清扇面鉢。

強肴は魯山人の赤絵兜鉢。この鉢は魯山人の共箱ですけど、矢口永寿との合作で永寿印もみられます。氈瓜を炊いたんに新生姜をすりおろして留めました。

次に預鉢として、大車海老・アボカド・水前寺海苔の黄身酢和え。清風与平の青磁鉢を用いて、和えたてを清々しく盛りました。

飯器に、じゅうぶんに蒸らされたご飯をつけます。

小吸物は地の紫蘇の花。ごく淡く僅に昆布と梅の風味をつけました。繪替游唐子蒔絵小吸物椀。

燗鍋と共に八寸を持ち出します。秋田杉木地筋目八寸盆に、海のもんは、日高の鱒に一休寺納豆を古酒でのばして挟んだもん、山のもんは紫小蕪をうちの糀に漬けたもんです。略千鳥としました。

湯斗と香の物。香の物は、沢庵・西瓜奈良漬・胡瓜浅漬を黒唐津の足付鉢に盛りました。

お箸を落とす音を聞き、折敷を引きに出て、懐石を終えました。

器・料理とも大変お喜びいただき、誠に光栄に思います。