[用例研究 179] 〈whatever①〉
(BLONDIE By Dean Young & Stan Drake)
1 But all the kids are going!
1 I know one who isn’t.
2 Mothers are impossible!
2 We have to be, it’s one of our job requirements.
3 Daddy, could I ...
3 Whatever your mother says goes.
4 You’re just playing it safe!
4 That’s one of a father’s job requirements.
[解説]
1
・I know one who isn’t: one は不定代名詞で、前出の名詞の繰り返しを避けて使はれ、不特定の人・物などを指します。〈a+前出の名詞〉にあたり、ここでは a kid といふことになります。「行かない子がひとりゐることがわかつてゐる」、つまり「私はあなたが行くことを許さない」と解しました。
2
・impossible: ふつうは「(物・事が)不可能な/あり得ない」ことを意味しますが、話し言葉では人間や事情などを主語にして「我慢ならない」「耐へられない」「どうしやうもない」といつた意味で使ふことがあります。
・job requirement: 「仕事で求められる必要な資質、要件」といつた意味でせう。ここでは家族關係で用ゐられてゐますから「(役割上)義務として要求されること」と解しました。
3
・could I ...: Could I ~? と叮嚀な言ひ方で父親に許可を求めようと切出したものでせう。
・Whatever your mother says: 「何であれ母の言ふこと」「母の言葉は何でも」
whoever / whatever / wherever / whenever など、關係詞に ever がついて意味が「強調」されたところから(←私見です)、① any(~する人は誰でも/~するものは何でも/~はどこでも/~するときはいつでも、など)の意味を帶びたり、②さらにそこから「讓歩」の意味が生じて(誰が~しようとも/何を/が~しようとも/どこへ~しても/いつ~しても、など)、副詞節を形成することがあります。文法書では、「關係代名詞」「關係副詞」につづけて「複合關係代名詞」「複合關係副詞」といつた項目を設けて解説してゐます。
①〈any ~〉の意味で使はれる例文を紹介します。
□參考例文: 漫畫と同じく、主部に置かれた例です。
179.1 Whatever he tells us never fails to make us interested.
彼が話してくれることは何でも私たちにはおもしろい
= Anything which he tells us never fails to make us interested.
□參考例文: あとに名詞を續けて形容詞的に用ゐた例です。
179.2 Take whatever books you want to read.
讀みたい本はどれでも取つてよい。
□參考例文: whichever はいくつか選擇肢があつて、そのうちの「どれでも」と言ふ場合に用ゐられます。あとに名詞を續けて形容詞的に用ゐることもできます。whatever には選擇肢の前提がありません。
179.3 Choose whichever suit you like best.
どれでも一番好きな服を選びなさい。
= Choose any suit that you like best.
□參考例文: 疑問詞 what の強調のために whatever を用ゐることがあります。
179.4 Whatever will he say when he hears this?
このことを聞いたら彼はいつたい何と言ふだらうか。
②「讓歩」の意味に轉じた例については [用例研究 180] で扱ひます。
・go: 「(事・ことばが)決定的である/有效である」
□參考例文:
179.5 What the boss says goes.
ボスのことばが掟だ。
4
・just: 強調と口調を整へるはたらきをしてゐるやうに見えます。
・play it safe: (話し言葉で)「危險を冒さない」
[意味把握チェック]
1 「でもみんな行くのよ」
1 「行かない子がひとりゐることがわかつてゐるわ」
2 「母親つてどうにもならないわね/どうしやうもないわね」
2 「さうでなくちやならないの、それが(わたしたち)母親の役割(/義務)のひとつなんだから」
3 「お父さん、お願ひなんだけど...」
3 「何でもお母さんの言ふとほりで決まりだよ(/お母さんの言ふことが何でも通るんだよ)」
4 「安全策をとつてるだけなのね」
4 「それが父親の役割(/義務)のひとつなんだ」
[笑ひのポイント]
・娘の Cookie の求めに對して job requirement といふことばを揃へて應じてゐます。4コマめの job requirement の内容が、今どきの(奧さんに頭のあがらない)父親のイメーヂを表はしてゐて笑ひを誘ひます。