[用例研究 189] 〈關係代名詞+插入節②〉
(BLONDIE By Dean Young & Stan Drake © 2000 King Features Syndicate Inc.)
1 You don’t pay me what I think I’m worth.
2 You’re lucky I don’t pay you what I think you’re worth!
3 Did you get the raise?
3 Are you kidding? I’m already way ahead of the game!
[解説]
1
・You don’t pay~: 第四文型(SVOO)の文構造です。關係代名詞節 what I think I’m worth が例文189.1の 50 dollars に該當します。「私が値ひすると(私が)思ふもの」乃至は「自分が思ふ自分の値打分」ほど(の給料)を支拂つてゐない、もつと給料を上げるべきだと抗議してゐるのでせう。
□參考例文
189.1 I paid her 50 dollars for the shoes.
私は彼女に靴の代金として50ドル支拂ひました。
・what I think~: 關係代名詞 what の後に I think が插入されてゐます。
□參考例文: [用例研究 176]の再掲です。
176.1 The woman who I thought was her sister was actually her mother.
私が彼女の姉だと思つたその女性は、實は彼女の母親でした。
・worth~: 「~の値打がある」。ここでは~部分に關係代名詞 what が置かれてゐます。what I think I’m worth として、「私が値すると私が考へるもの(/給料)」或は「私が考へる私の値打分」といふことになります。
worth は、辭書によつて扱ひが「目的語をとる形容詞」「前置詞」と分かれますが、例文により解し方・使ひ方を習得すればいいでせう。
□參考例文: ~部分が金額で示される例です。
189.2 This book is worth twenty dollars.
この本は20ドルの値打があります。
□參考例文: 下の例文で it は形式主語、while は「時間」といふ意味の名詞です。
189.3 The ruins are worth visiting.
= It is worth while visiting the ruins.
= It is worth while to visit the ruins.
その遺蹟は訪れてみる價値があります。
2
・You’re lucky (that) ~: ~部分にthat節を置き、それが You’re lucky と判斷する理由・根據の説明になつてゐます。
社長としては、ダメ社員の Dagwood の給料はもつと低くていいと思つてゐるわけです。現在の給料額はそれよりは多い、だから「運がいい」「ついてるな」と斷じました。
□參考例文: that が省略されてゐない例です。
189.4 He is lucky that he could pass the examination.
彼がその試驗に合格できたとはついてますね(/幸運です)。
3
・Are you kidding?: 「冗談でせう」。kid は「かつぐ」「からかふ」の意味。
・raise [reiz]: 「昇給」
・way ahead: 「うんと優勢な」。way は「ずつと」「はるかに」「うんと」といつた意味の副詞で ahead を強調してゐます。
・ahead of the game: 「有利に」「他より優つて」。ここでの game は「勝負」「驅引き」といつた意味でせう。
[意味把握チェック]
1 「社長は私が考へる値打ほどの給料を私に拂つてはゐません」
2 「ワシの考へるおまへの値打の額をワシが拂つてなくてお前は運がいいな!」
3 「給料、上つたかい」
3 「冗談だろ(/冗談言ふなよ)。(この驅引で)ぼくはすでにうんと優勢なんだぞ!」
[笑ひのポイント]
・ことばの一部を變へての社長の切りかへしの見事さに笑ひを誘はれます。また、切りかへしの内容が Dagwoodにわかつたのかどうか、わからずに you’re lucky が頭に殘つてゐるだけなのではないか…そこにも笑ひが生ずる契機があるやうに思はれます。