セカンド・オピニオン

  母親が白内障の手術をするというので帰省していました。日帰り手術だということでしたが、感染を防ぐために術後しばらくは眼帯をしていなければならないそうなので、家事手伝い(&雪かき)に赴いたのです。それに、入院不要の手術といえど、手術は手術、身内が傍にいるほうがいいだろうと思いましたし、友人からもそう言われました。

  ところが、実家に着いてみたら、母親が相談してきました。母親の知人に、福祉施設でケア・マネージャーをしている人がいて、母がその人に白内障の手術をする予定であることを話したそうです。その人は母親が手術を受ける病院名を聞いたとたん、別の病院にすごく腕のいい眼科医がいるから、手術を受ける前に、その医者にも診察してもらったらどうか、と熱心に勧めてきたそうです。

  白内障は一般に年輩の人がかかりやすい病気です。ケア・マネージャーという職業柄、その人は年輩の人がかかりやすい病気に関して、どこの病院のどの医者がいい、といった情報に詳しいはずです。もちろん、どの病院のどの医者がよくない、といった情報にもです。その人ははっきりした理由は言わなかったそうですが、あまりに何度も何度も勧めるので、母親はその腕のいい眼科医の診察を受けてみようかと思っている、と私に言いました。

  母親もその腕のいい眼科医のことを知っていたのですが、予約待ちでなかなか診察を受けられないと聞き、それで別の病院に行って診察してもらったら、なるべく早く手術したほうがいい、と医者から言われて、なかば一方的に、急かされるように手術日を決められたということでした。

  手術となると当然、費用がどのくらいかかるかが気になるところです。でも、なぜかその病院は、なかなか具体的な手術費を教えてくれなかったそうです。母親がちょうどその病院に不審の念を抱き始めていたところに、ケア・マネージャーさんから、予約待ちの行列ができているという別の病院の医者の診察を受けるように勧められて、母親は気持ちが傾いているようでした。

  私も、セカンド・オピニオンとして別の医師の診察を受けるのはよいことだと言いました。それに、そのケア・マネージャーの人は、明言はしなかったけれども、母親が手術を受けようとしている病院やそこの医者についてのよくない噂や、その病院で起こったトラブルなどを具体的に知っているに違いない、と思いました。

  私が帰省した2日後の早朝、母親はケア・マネージャーさんから勧められた医者のいる病院に行きました。午後を過ぎてようやく帰ってきましたが、母親の顔は晴れ晴れとしていました。母親によると、母親の白内障はまだ手術が必要な状態には至っておらず、半年後にまた検診を受けに来ればよい、とその腕のいいという医者から言われたそうです。

  こうして、母親が最初にかかった医者の診察結果と、ケア・マネージャーさんから勧められた医者の診察結果は、まったく正反対のものとなりました。母親は結局、セカンド・オピニオンのほうを信用し、もやもやした不信感を抱いた病院で手術を受けることはやめることにしました。母親は手術を受けるはずだった病院に電話をかけて断りました。

  別の医者にかかったことは言わず、いろんな用事で忙しいから、という理由で断っていました。後で聞いたら、母親が手術をキャンセルする、と言ったとたん、先方はしつこく理由を問いただしてきて、いま手術しなければ後で大変なことになる、と言ったそうです。それがまるで脅しのような言い方だったそうで、母親はますます不信感が募ったみたいです。

  私は医者ではないので、どちらが正しいのかは分かりません。しかし、患者の恐怖心を煽るようなことを言う、患者を急かしてやたらと手術をしたがる、手術にかかる費用を事前にはっきりと説明しないなど、これらの点だけをとってみても、母親が最初にかかったその病院はヤバいんではないかと思います。母親には、後にかかった医者に言われたとおり、目の定期検診を欠かさないように言いました。

  慎重な言い回しながら、しかし断固として、母親に別の(しかも優れた)医者のセカンド・オピニオンを求めるよう助言してくれたケア・マネージャーさんに感謝です。

  頭でしか知らなかったセカンド・オピニオンの重要性を体感した出来事でした。  
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