英国ロイヤル・バレエ団 『不思議の国のアリス』(7月5日)


  今さっき帰ってきたばかりです。簡単に。

  すごく楽しかったです!!!英国ロイヤル・バレエ団が日本に持ってきた演目としては、久々のヒットなのでは?

  完璧にすばらしい作品、とまではいえません。率直に言うと、肝心のクリストファー・ウィールドンによる振付、とりわけアリスのソロ、そして最も重要なアリスとハートの騎士とのパ・ド・ドゥは魅力に欠けているところがあります。

  しかし、この作品はいかにもイギリスらしい「総合芸術」的なバレエで、舞台全体にイギリス的要素がまんべんなくつめ込まれています。イギリスの演劇、ミュージカル、バレエなどの舞台文化が好きな方には、この上なく楽しめる作品だと思います。

  あらすじはほぼ原作どおりです。でも、原作のこれを一体どーすんのか、と思っていた場面では、「おお、そうきたかー!」と思わず唸る秀逸な演出や振付が施されていました。第一幕冒頭と第三幕ラストでは演出を新しく加えています。ラストの演出はとても粋でした。

  また、第一~三幕の本編だけでなく、休憩時間への入り方やカーテン・コールに至るまで、徹底して観客を楽しませるように綿密に作ってあります。

  クリストファー・ウィールドンの振付に魅力が足りない、などと書いてしまいましたが、ウィールドンでなければ、このような作品を創り出すことはできなかったでしょう。今までウィールドンが小品の中で試みてきた手法がいかんなく発揮されています。

  また、舞台技術の進歩した現代だからこそ、この作品をこうして舞台化できたのだろうと思います。同時に、最先端の技術を用いながらも、昔ながらのアナログ技術も効果的に、しかも肯定的な意味を込めて使っているところが心憎いですね。

  振付や脚本・構成だけでなく、音楽、装置、小道具、衣裳、照明、音響、映像などのすべてが結合したこういうバレエ作品を観ると、イギリスの舞台文化のレベルの凄さを今さらながらに思い知らされます。

  アリス役は出ずっぱりのタフな役です。こういうタフなパフォーマンスをバレリーナに課す作品も今どき珍しいと思います。アリス役のサラ・ラムは、第二幕では少しペースを落として、うまく体力を配分していました。

  そのキャラクターの雰囲気を作り出すサラ・ラムの能力は、本当に見事なものです。ラムは役によって完全に別人になってしまいます。踊りも言うことなしのすばらしさでした。

  観る前は、アリス役以外ではスティーヴン・マックレーのマッド・ハッターを楽しみにしていました。しかし、それをはるかに凌駕していたのが、エドワード・ワトソンの白うさぎと、ゼナイダ・ヤノウスキーのハートの女王でした。特に白うさぎ役のエドワード・ワトソンは、アリス役のサラ・ラムと同じくほぼ出ずっぱりでした。

  ゼナイダ・ヤノウスキーのハートの女王は大爆笑の演技と踊りでした。でも、コミカルな動きの中にも分かるんですよ、ヤノウスキーは恵まれた身体能力と高度な技術を持つ、超優秀なバレリーナだということが。

  やっぱりロイヤルのダンサーたちは、こういう作品だと最大限に魅力を発揮しますね。みな生き生きと踊り演じていました。

  『不思議の国のアリス』のチケットはほぼ完売状態で、追加公演のチケットがまだ僅かに残っているだけのようです。『白鳥の湖』は観ないで、今日と同じキャストで上演される『不思議の国のアリス』のチケットをもう1枚買えばよかった、とちょっと後悔しました。

  で、未練なあまりに映像版を買ってしまった(笑)。


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