新国立劇場バレエ団「ドン・キホーテ」

  観てきました。センスの良いデザインと色彩の衣装、整然とした美しいコール・ド、日本人バレエ・ダンサー(特に女性)のプロポーションと身体能力と技術のすばらしさを堪能しました。

  キトリはスヴェトラーナ・ザハロワ(ボリショイ・バレエ団)でした。やはりザハロワの踊りは他のダンサーたちとは一線を画するようです。信じられないほどの身体の柔らかさや、極めてなめらかで美しい手足の動き、魅力的でかわいい演技など、うっとりと見とれてしまいました。

  バジルはアンドレイ・ウヴァーロフ(ボリショイ・バレエ団)でした。背が非常に高くて、190センチ近くも(以上も?)あるのではないでしょうか。これまたすばらしい技術を持ったダンサーでした。

  ただ、演技力や場を盛り上げる力では、デニス・マトヴィエンコ(29日、7月1日のバジル役)のほうが見ごたえがあると思います。マトヴィエンコ演ずるバジルの狂言自殺シーンはちょう爆笑モノですし、踊りにも華があって、観ている側が興奮してしまいます。その点、今日のウヴァーロフはザハロワの陰に隠れちゃったかな?という感じでした。

  エスパーダは市川透が踊りました。今日は少し硬くなってたようです。明後日(30日)はもっと自信をもって踊ってくれるといいですね。第三幕で「ボレロ」を踊ったマイレン・トレウバエフは堂々としていてカッコよかったです。29日と7月1日にはエスパーダを踊るそうですが、さぞ似合うだろうと思います。

  第二幕「ギターの踊り」では大森結城がソロを踊りました。長いドレスの裾を、脚を高く上げて美しく翻し、個人的には、メルセデスを踊った湯川麻美子よりもすばらしかったと思いました。

  あとは、キューピッドを踊ったさいとう美帆がよかったです。複雑で細かい足さばきで踊りとおしました。また、ヅラがピンクというのはロック魂を感じさせました。

  第三幕のグラン・パ・ド・ドゥで、第1ヴァリエーションを踊った寺島まゆみは、ジャンプだらけの踊りを最後までパワーを落とさずに踊っていました。今回じっくり見てみて、「ドン・キホーテ」という作品が、ダンサーにとってどんなにタフな作品であるのかを実感しました。ソロを踊るダンサーたちは、踊りの最後にはどうしても力が落ちてしまうのが分かりました。ザハロワでさえも時おり辛そうでした。

  新国立劇場バレエ団が上演する「ドン・キホーテ」の改訂振付はアレクセイ・ファジェーチェフだというので、ボリショイ・バレエ団が上演していたのと同じかと思いましたが違いました。プログラムによると、ファジェーチェフが「新国立版」として改訂振付したものだそうです。主な違いは、やはりボリショイ版にはある踊りがいくつか削除されていたことです。

  ですから、印象としては「すっきりした簡潔な『ドン・キホーテ』」といったところでしょうか。

  ただ、私は今日の公演を観て、新国立劇場バレエ団なら、ヌレエフ版「ドン・キホーテ」も踊れるのではないかと思いました。少なくとも、ミラノ・スカラ座バレエ団よりはきちんと踊れると思います。

  ヌレエフ版「ドン・キホーテ」はよくできている改訂版だと思いましたので、欲を言えば、新国立劇場バレエ団にもいつか上演してほしいです。

  あと、演奏は東京フィルハーモニー交響楽団でしたが、今日の演奏は「それで東京フィルハーモニー交響楽団といえますか」という感じでした。もっとも、これは指揮者に問題があったのかもしれません。 
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )