元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「きっと地上には満天の星」

2022-08-27 06:22:46 | 映画の感想(か行)
 (原題:TOPSIDE )題材は面白そうなのだが、筋書きはイマイチだ。また、感情移入できる(大人の)キャラクターが見当たらないのも辛い。演出にも殊更才気走った部分は感じられず、90分という短い尺ながら、とても長く感じられる。ロマンティックな雰囲気もある邦題とは裏腹に、愛想の無い出来に終わってしまったのは残念である。

 シングルマザーのニッキーは、5歳の娘リトルと共にニューヨーク地下鉄の下に広がる廃トンネルでひっそりと暮らしていた。そこの住民は彼らだけではなく、社会からドロップアウトした連中が寝起きを共にしていた。ところがある日、廃トンネルで不法居住者の摘発が行われ、母娘は地上への逃亡を余儀なくされる。昔の知り合いをアテにして街をさまようニッキーだったが、生まれて初めて外の世界に出ることになるリトルは戸惑うばかり。そして、地下鉄の駅でリトルは母親と逸れてしまう。



 実在した地下コミュニティへの潜入記であるジェニファー・トスのノンフィクション「モグラびと ニューヨーク地下生活者たち」を原案にしたドラマだ。リトルの父親が誰なのかは最後まで明かされない。それどころか、この2人が本当の親子なのかどうかも判然としない。ニッキーはかなり身持ちの悪い女で、地下に潜る前にはロクな生活を送っていなかったことが暗示される。こんな母親に引っ張り回されるリトルにとっては、まったくもって良い迷惑だ。しかも、ニッキーが地下生活に追いやられた背景も説明されていない。

 リトルが見る外の世界は、“満天の星”どころか目眩を起こしそうになるほど情報過多でストレスフルな環境だ。映画はそれを表現するためか、手持ちカメラの接写を中心としたブレの激しい映像を連発させる。しかし、結果的にこれは観る者の目を疲れさせるだけだ。そんなことより、もっとニッキーの人物像を掘り下げることに注力すべきだった。また、ニッキー以外の地下生活者のプロフィールにもほとんど言及されていないのも不満である。

 ラストは一応の決着は付くのだが、彼女の無責任ぶりがクローズアップされるばかりで、結局は誰も救われない。監督はセリーヌ・ヘルドとローガン・ジョージの共同で、ヘルドはニッキー役で出演もしている。だが、展開は平板で評価出来るものではない。リトルに扮するザイラ・ファーマーは子供らしい可愛さを醸し出しているが、他のキャストについてはコメントする気にもなれない。デイヴィッド・バロシュによる音楽も印象に残らず。

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