元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「CLOSE/クロース」

2023-08-13 06:45:51 | 映画の感想(英数)
 (原題:CLOSE )まるでピンと来ない映画である。少なくとも個人的には共感する部分がまったく無かった。かなり世評は高いようだが、それらは作品の中身ではなく“別の要素”に対する興味によると思われる。何度も言うようで恐縮だが、最近の映画界は“内容よりも取り上げられた題材が重要視される”という傾向があるが、この作品もその流れにある一本だ。

 ベルギーとの国境に近いオランダ南部の田舎町に暮らす12歳のレオとレミは、学校でも地域でもいつも一緒の親友同士。ところが、中学校に進学すると2人の親密すぎる間柄を周りの生徒たちにからかわれたことで、レオはレミと距離を置こうとする。2人の関係は次第に気まずいものになり、ケンカもするようになる。そしてある日、突然レミは自ら命を絶ってしまう。ショック受けたレオはどうしていいか分からず、ただ悩むばかりだった。



 ハッキリ言って、レミがどうして自決したのか、その理由がまるで見えなかった。子供時代には、どんなに仲の良かった友人でも環境が変われば疎遠になっていくことは珍しくもない。言い換えれば、そんな経験の無い者はあまりいないのだ。だからこそ、紆余曲折があっても末永く良好な仲を維持出来た者が“親友”と呼ばれるのである。

 友人と距離が出来たぐらいで命を絶つというのは、レミがレオに対して同性愛的な想いを抱いていたからというのが一番しっくりくる事情だろうが、あいにく本作にはそういう描写は希薄だ。また、レオがレミにとっての唯一の理解者だったという筋立ても見出せない。ところが脚本も担当した監督のルーカス・ドンは、同性愛ネタが大々的に挿入されたかのような素振りを見せて話を進めてしまうのだ。

 その最たるものが、主人公たちを演じる子役2人が美少年であること。これが普通のルックスの子供たちならば映画自体が成立していたかどうかも怪しい。このあたりは先日観た是枝裕和監督の「怪物」にも通じるところがあるが、いくらかでも事の真相に言及しようとしていたあの映画よりも、本作はかなり後れを取っているように思う(注:何も「怪物」を評価しているわけではない。あの作品は他に欠点が多すぎる)。

 あと、カメラワークに登場人物に対する接写が目立つのも鬱陶しい。子供相手にクローズアップを多用する映画といえばジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の諸作を思い出すが、本作にはダルデンヌ作品における切迫感などがあまりなく、単に少年たちの姿形を強調するだけに終わっている。

 エデン・ダンブリンとグスタフ・ドゥ・ワエルの子役2人は良く演じていたと思うし、エミリー・ドゥケンヌにレア・ドリュッケール、イゴール・ファン・デッセル、ケヴィン・ヤンセンスといった他のキャストも悪くはないのだが、作品コンセプト自体が面白いと思えないので評価は差し控える。
コメント
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