元・副会長のCinema Days

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「ダーティ・ダンシング」

2021-01-16 06:29:58 | 映画の感想(た行)
 (原題:Dirty Dancing )87年作品。日本では封切り時にはほとんど話題にならず、短期間でほぼ忘れ去られた映画だが、アメリカでは大ヒットして、その時代を代表する青春映画の快作という評価が確定している。まあ、そんなタイプのシャシンもあることは認識してはいるが、本作ほど(少なくとも公開時において)本国と他国との受け取られ方の差が大きかった映画はないのではと思う。

 1963年の夏、ニューヨークに住む17歳のフランシスは、夏休みに州の中部にあるキャッツキル山地のリゾート地にやってくる。彼女は“いいとこのお嬢さん”であり、高校卒業後は大学で開発途上国の経済学を学び、いずれは国際ボランティアに励む予定だった。フランシスはリゾートでダンスのインストラクターを務めるのだが、ふとしたことで労働者階級のジョニーと知り合う。



 ジョニーとその仲間たちと仲良くなったフランシスは、彼らのシークレット・パーティーに誘われる。すると彼らが踊る“ダーティ・ダンシング”と呼ばれる扇情的なダンスを目の当たりにして衝撃を受ける。このダンスに興味を持ったフランシスはジョニーに踊り方を教わることになるが、やがて2人は恋仲になる。

 ストーリーとしては身分違いの2人の恋路とか、ジョニーの仲間であるペニーの妊娠騒動とか、フランシスの父親が娘とジョニーとの関係を許さなかったりとか、いろいろとエピソードが積み上げられていて飽きさせない。しかし、それほどの盛り上がりは感じさせず、全体的に安全運転でまったりと進んでいくという案配だ。

 言い換えれば、過度に刺激的なモチーフを織り込まなかったことが、当時の本国の観客に幅広く支持されたということなのだろう。ただ、この映画のセールスポイントであるダンスシーンはなかなか良く描けている。ヒロインならずとも、このダンスを見ればびっくりして心が高揚するだろう。その影響力は今でも持続しているらしく、2009年からノースカロライナ州ではダーティ・ダンシング・フェスティバルが開催されているという。

 エミール・アルドリーノの演出は特に目立った仕事をしているわけではないが、その分キャストの存在感がカバーしている。主演のジェニファー・グレイとパトリック・スウェイジは適役で、まさに青春スターといった感じだ。ジェリー・オーバックやシンシア・ローズといった脇の面子も良い。なお、続編が作られる予定だったが、いつの間にか立ち消えになったという。興行側としては残念なハナシだろう。
コメント
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