元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「太陽は夜も輝く」

2017-01-20 06:32:18 | 映画の感想(た行)
 (原題:IL SOLE ANCHE DI NOTTE)90年イタリア作品。監督はパオロ&ヴィットリオのタヴィアーニ兄弟だが、カンヌ国際映画祭で大賞を獲得した「父/パードレ・パドローネ」(77年)を撮った後は、彼らは長らくスランプに陥っていたと思う(巷の評判が良かった87年製作の「グッドモーニング・バビロン!」も個人的には評価しない)。本作もそれを示すかのような冴えない出来である。

 中世イタリア。ナポリの士官学校で優秀な成績を収めていたセルジョ・ジャラモンド男爵は国王シャルル三世の副官として仕えることになるが、田舎貴族の出身である彼は公爵の娘クリスティーナと結婚するように王に指示される。しかし彼女は王のかつての愛人だった。そのことを知ったセルジョはショックを受けて故郷に帰り、近くのペトラ山で世捨て人のような生活を送るようになる。



 ひたすら信仰にすがる彼は、近隣住民の悩みを聞いているうちに、いつしか奇跡を起こす聖者として知られることになる。ある日、ナポリの商人が多額の寄付と共に訪れ、闇の中でしか目を開くことのできない娘マティルダを助けて欲しいと頼む。しかし彼女はセルジョを慕うようになり、彼も思わずそれに応えてしまう。トルストイの中編「セルギイ神父」(私は未読)を、舞台を南イタリアに移して映画化したものだ。

 この主人公のスタンスがハッキリしていないので、観ていて不満が募るばかりだ。王家への士官を希望したということは世俗的な欲求があったのだろうが、クリスティーナとの一件があってから急に信仰に生きる人間に豹変してしまうのは解せない。

 しかも彼の聖人君子ぶりも腑に落ちるようなものではなく、行き当たりばったりに行動していたら何となくそういう評判が立ってしまったというレベルである。当方が宗教に疎いことを勘案しても、納得のいく作劇とは思えない。自己陶酔的な場面があるかと思えば、若い女の子と懇ろになってしまうくだりもあり、キャラクター設定に一本筋が通っていない。

 タヴィアーニ兄弟の演出は冗長で、余計なシーンも多い。主演のジュリアン・サンズをはじめ、ナスターシャ・キンスキーにシャルロット・ゲンズブールなど、この監督にしては場違いなほど豪華なキャストを擁しているのも違和感がある。タヴィアーニ兄弟の真骨頂であるドキュメンタリー・タッチが復活するのは2012年の「塀の中のジュリアス・シーザー」まで待たなくてはならないが、2014年にも一本撮っており、どういう出来映えになっているか興味のあるところである。
コメント
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