元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

音楽に全く関心の無い人々。

2016-06-10 06:21:55 | 音楽ネタ
 日本レコード協会が今年(2016年)3月に発表した“音楽メディアユーザー実態調査”の最新版となる2015年度版において、10代から60代までの約2千人の調査対象の中で、無料でも音楽を聴かない“完全な無関心層”が34.6%を占めたことが明らかになった。つまり、今や我が国ではおよそ3人に1人が“無料でも音楽を聴かない完全な無関心層”であるらしいのだ。

 これに対してネット上やマスコミでは“(AKB商法などをやり玉に挙げて)最近のJ-POPの製作サイドのいい加減さ”を指摘したり、“良い楽曲が少なくなった”ということを嘆いてみたりと、いろいろな意見が飛び交っているようだが、それらはすべてピント外れである。なぜなら、もしも作り手の怠慢や目立つ楽曲の不在などが“音楽離れ”の原因であるならば、提供側の努力によって何とかなりそうなものだが、今回の調査における“無料でも音楽を聴かない完全な無関心層”は、それでも動かないからだ。

 最初から全く関心の無い層に対して、いくら良質のコンテンツを提示しても無駄である。例えれば、ゴルフに興味の無い者に安くて良いクラブを奨めたり、近場にある環境の良いゴルフ場を紹介するようなものだ。言うまでもなく、そんな行為は徒労に終わる。

 私はこの結果に対して、(調査方法の内容は別にしても)少しも驚きはしなかった。その理由は(以前も書いたとおり)日本人は元々あまり音楽が好きではないからだ。諸外国の状況はどうか知らないが、少なくとも日本に西洋音楽が入ってきてから百数十年しか経っていないのは事実。音楽を鑑賞するという行為は根付いていないと考えるのが自然だろう。

 では、なぜ90年代半ばまではミリオンセラーが頻出したのか。それは今ほど景気が悪くなく、庶民には自由に使える金がまだまだあったからだ。そして“みんなが聴くから自分も聴く”というような、日本人らしい横並び的な発想があったことも見逃せない。

 で、景気が後退して将来の展望も見えない現在は、音楽という“元々好きではないもの”に対してカネやヒマを注ぎ込むことが無くなったと・・・・つまりはこういうことだ。実に単純な話である。さらに巷では“若者が音楽を聴かなくなった”ということがクローズアップされるが、調査結果で目立っているのは40歳以上の年配層の“音楽離れ”の方だ。これも単に“若い頃は付和雷同的にハヤリの音楽に耳を傾けていたが、トシを取って世のトレンドに無頓着になった結果、音楽自体に興味が持てなくなった”という筋書きでしかない。

 しかしまあ“3人に1人が音楽について完全な無関心”であることは、言い換えれば“3人に2人は、今でも音楽に何らかの関心がある”ということでもある。オーディオの潜在市場も決して小さくないとも言えるわけで、業界は“音楽離れ”を言い訳にせずに、市場の拡大に精進してもらいたいものだ。
コメント (2)
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