元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ノー・マンズ・ランド」

2015-07-12 06:20:02 | 映画の感想(な行)

 (原題:No Man's Land )2001年作品。舞台劇の雰囲気を持つ異色の戦争映画で、その年の米アカデミー賞外国語映画賞を獲得している。だが、3人の兵士が留まる塹壕を中心にしたキャラクター配置に幾分図式的なものを感じ、諸手を挙げては評価できない。

 93年6月、霧の中で道に迷ったボスニア軍兵士のチキは、ボスニアとセルビアの中間地帯(ノー・マンズ・ランド)に何とかたどり着く。そこへ偵察にやって来たのがセルビア軍兵士のニノ。たちまちバトルモードに突入する彼らだが、居合わせたツェラがジャンプ型地雷の上に載ってしまい、彼が動くと地雷が爆発してしまう。

 この苦境から抜け出すために、彼らは心ならずも協力するハメになる。やがて助けに来たマルシャン軍曹やマスコミ関係者の助けを得て、ついには国連軍まで出動することになるが、事態は一向に好転しない。

 あらずもがなの結末も作者のケレンが垣間見えて愉快になれず。ボスニア紛争の当事国による映画にもかかわらず意外にも切迫感が伝わらないのは、あの戦争自体がブラック・ユーモアで笑い飛ばすだけの価値しかなかったことの証明だろうか。ダニス・タノヴィッチの演出は冗長で、ブランコ・ジュリッチやレネ・ビトラヤツといった面々も馴染みが無いだけではなく、存在感も希薄だ。

 それにしても、国連軍が事なかれ主義の官僚組織として描かれている箇所は“国連至上主義”あるいは“アメリカに全て丸投げ主義”にかぶれた日本人にとっては衝撃的であろう。お為ごかしの“和平のスローガン”など、現場にいる者にとっては屁の役にも立たないのだ。我々も平和ボケから脱却して大局を見据えるように心掛けたいものである。
コメント
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