元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ラッキー・ユー」

2007-07-03 06:48:41 | 映画の感想(ら行)

 (原題:Lucky You )カーティス・ハンソン監督の旧作「8 mile」とほとんど同じプロットであるのには面食らった。ラップ大会がポーカー大会に変わっただけである。正直“自己二番煎じ(?)”と言っていい。もうちょっと別のネタで勝負すべきではなかったか。

 もっとも、本作単体で見ればけっこうウェルメイドではある。舞台はラスベガス。プロのポーカープレーヤーである主人公は、対戦時の“読み”は深いが、肝心なときに感情的になり損ばかりしている。何しろ大会の参加費でさえつまらぬ賭でスッてしまうほど。だから見かけとは裏腹に困窮状態から抜け出せない。

 堪え性がないのは名プレーヤーである父親への反発からきていると本人は思っているが、実は単に未熟なだけである。物語は定石通り、彼がそのことを自覚し、大会で活躍するまでを描くが、名人芸的な演出および二枚目だけど頼りない感じが良く出ているエリック・バナをはじめ、父親役のロバート・デュバル、恋人に扮するドリュー・バリモアなど、キャストの頑張りで説得力のある展開になっている。

 観客が“これで上手くいくだろう”と思っても(例:ゴルフの賭の場面など)なかなかそうならない山あり谷ありの筋書きが見事だ。そして主人公にとっての亡き母、父親にとっては亡き妻の指輪を効果的な小道具として使っているあたりも見逃せない。もちろん、ラスベガスの観光映画として見ても十分楽しめるだろう。

 だが、かえすがえすも残念だったのはポーカーのルールが観客にとって分かりにくいこと。基本的な“役”のランキングぐらいは誰でも知っていると思うが、これがディーラーが加わっての多人数参加の対戦となると、途端に段取りが複雑になる。一応ルールの説明らしき物も挿入されるが、短い上に門外漢にとってはチンプンカンプンである。この題材で思い出すのが、スティーヴ・マックイーン主演の「シンシナティ・キッド」だ。たぶん対戦の段取りは本作と一緒ながら、あっちの方が数段スリリングだったし、痛切なラストも効果的だった。つまりこの映画の対戦場面は、ルール説明の不足が指摘されるような作劇では、とても合格点はあげられないということだ。

 そして、超ポーカーフェイスの不気味な男が大会に参加するが、この扱いも中途半端。私としてはこの男の意外な内面がどうのこうの・・・・という展開を期待していたが、引き際があっさりしすぎていたのは不満だ。まあ、その分“ネット専門で対人の試合は初めて”というオタク野郎のキャラクターが引き立っていたからヨシとしよう。まあまあ観て損はない映画だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする