3月3日。ひな祭り。
昼間は気持ちよい陽射し。
植物たちを日光浴させる。
ついでに自分も日光浴。
近くのヨークマートが特別ご奉仕セールってことで
時間限定で「生卵Lサイズ10個で98円」
…だから16時に主婦に混じって列に並ぶ。
老若男女血相かえて店内ごった返す。
オイルショックのトイレットペーパーみたい。
●
昨日は近くのプールへ。
牡蠣にあたって以来行ってなかった水泳を10日ぶりに。
内蔵が本調子ではないので、だましだまし2キロ泳ぐ。
2キロを何とか泳ぎ切り、充実した面持ちでプールサイドを見上げると、
なにやら寺島進似の地元のオッサンがこちらを凝視している。
下町のオッサン、めぢから強し。
一瞬ひるんで視線を外す。
…と、天からの声。…「もっと伸びなきゃダメだなあ」
心の声か…と、ふたたびプールサイドに目を転じると、
先ほどの寺島進氏が、
ボクに向かって言葉を発していた。
…「ん?」という顔で反応すると、
「いやね、タフな泳ぎしてんだけどさ、伸びが足りないんだよ」
…「はぁ」
すかさずクロールの姿勢をとり、腕を大きくスクロールさせ、話を続ける。
「だからさ、掻こうと思っちゃダメなのよ。伸びようと思えば、自然と手が後ろを掻くから」
…「はぁ、はい」
「大きな動きをしてみればいいの。早く進もうって思わない。前に伸びようとすれば、前に進むから」
…「はぁ、なるほど」
「あの女の子見てごらん。大きな動きしてるでしょ。だけど、早いでしょ。あの伸びがないんだよ、お宅」
…(オタク?)
「あの女の子は、子供の頃から泳いでるね、じゃないと、ああいうゆったりした動きはできないね」
…「そうですか」
「とにかく、今度は腕を前に伸ばすようにして泳いでみな。あとは問題ないよ」
…「ありがとうございます」
「お宅、いくつ?」
…「はぁ、40になります」
「ははぁん、40ね。じゃ、大丈夫。まだまだうまくなれるよ。あきらめなさんな」
…「はぁ、ありがとうございます」
「素直な気持ちでな、伸びだけ考えてりゃ、タフなんだから、大丈夫だよ、うまくなれるって。ガンバんな」
●
それだけ言い残して寺島進似のオッサンは、プールサイドからジャグジーへ移った。
きっと、ボクが水面から顔をあげるのを、ずっとサイドから見下ろしてタイミングを見計らっていたのだろう。
ありがたい。
伸びが足りないことをしっかり伝えたかった。
気になって仕方なかったんだな。
更衣室でふたたび寺島進氏に鉢合ったのだが、
シャワールームで再度「伸びが足りない」ことを説かれ、
寺島氏自身、遅くから水泳を始めたようで、
今は53歳で長距離泳ぐことを念頭に置いてる…と身の上話を一方的にされ、
だから「40だったら、まだ間に合う」と締めくくって去った。
東京下町、いいところだ。
昼間は気持ちよい陽射し。
植物たちを日光浴させる。
ついでに自分も日光浴。
近くのヨークマートが特別ご奉仕セールってことで
時間限定で「生卵Lサイズ10個で98円」
…だから16時に主婦に混じって列に並ぶ。
老若男女血相かえて店内ごった返す。
オイルショックのトイレットペーパーみたい。
●
昨日は近くのプールへ。
牡蠣にあたって以来行ってなかった水泳を10日ぶりに。
内蔵が本調子ではないので、だましだまし2キロ泳ぐ。
2キロを何とか泳ぎ切り、充実した面持ちでプールサイドを見上げると、
なにやら寺島進似の地元のオッサンがこちらを凝視している。
下町のオッサン、めぢから強し。
一瞬ひるんで視線を外す。
…と、天からの声。…「もっと伸びなきゃダメだなあ」
心の声か…と、ふたたびプールサイドに目を転じると、
先ほどの寺島進氏が、
ボクに向かって言葉を発していた。
…「ん?」という顔で反応すると、
「いやね、タフな泳ぎしてんだけどさ、伸びが足りないんだよ」
…「はぁ」
すかさずクロールの姿勢をとり、腕を大きくスクロールさせ、話を続ける。
「だからさ、掻こうと思っちゃダメなのよ。伸びようと思えば、自然と手が後ろを掻くから」
…「はぁ、はい」
「大きな動きをしてみればいいの。早く進もうって思わない。前に伸びようとすれば、前に進むから」
…「はぁ、なるほど」
「あの女の子見てごらん。大きな動きしてるでしょ。だけど、早いでしょ。あの伸びがないんだよ、お宅」
…(オタク?)
「あの女の子は、子供の頃から泳いでるね、じゃないと、ああいうゆったりした動きはできないね」
…「そうですか」
「とにかく、今度は腕を前に伸ばすようにして泳いでみな。あとは問題ないよ」
…「ありがとうございます」
「お宅、いくつ?」
…「はぁ、40になります」
「ははぁん、40ね。じゃ、大丈夫。まだまだうまくなれるよ。あきらめなさんな」
…「はぁ、ありがとうございます」
「素直な気持ちでな、伸びだけ考えてりゃ、タフなんだから、大丈夫だよ、うまくなれるって。ガンバんな」
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それだけ言い残して寺島進似のオッサンは、プールサイドからジャグジーへ移った。
きっと、ボクが水面から顔をあげるのを、ずっとサイドから見下ろしてタイミングを見計らっていたのだろう。
ありがたい。
伸びが足りないことをしっかり伝えたかった。
気になって仕方なかったんだな。
更衣室でふたたび寺島進氏に鉢合ったのだが、
シャワールームで再度「伸びが足りない」ことを説かれ、
寺島氏自身、遅くから水泳を始めたようで、
今は53歳で長距離泳ぐことを念頭に置いてる…と身の上話を一方的にされ、
だから「40だったら、まだ間に合う」と締めくくって去った。
東京下町、いいところだ。